109.さよなら
夢主名前設定
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「折角無事に江戸に辿り着いたってのに何でこんな所に来るんだよ、会いに行くなら俺じゃなくて斎藤だろうよ!」
「斎藤さんは待っていればいいんですよ、ねっ、夢主ちゃん」
「はっ……はい、あの……」
土方に会いに来たと告げようとするが、当の本人は斎藤の話を聞きに来たのだろうと話を進めた。
「斎藤のことは悪いが俺も分からねぇ。会津で別れて……会津は降伏した。斎藤は行方知れずだそうだ」
「行方知れず……」
「あぁ。だがあいつの事だ、どこかに潜んでいるか、偽名でも使っていけしゃあしゃあと過ごしているだろうよ」
「ふふっ、そうですね、私もそう思います」
「あぁ、そのうちひょっこり帰ってくるだろう」
斎藤のその後を知らない土方は自分の把握している情報を二人に伝えた。
夢主の笑顔に心が軽くなる土方だが、他の仲間の行方も伝えねばと思えば心が重くなった。
「……永倉の行方も分からねぇ。……原田は……死んだ」
突然の報せに夢主と沖田は冷たい海風を浴びて固まった。
「あ……原田さんが……」
「あぁ。彰義隊と共に戦っていたそうだ。何故か分からんが川の近くで手負いし、手当てを受けたが何日か経ってそのまま……」
「そんな……原田さん……」
夢主もその死は覚悟していた。
原田に言葉を送った時も、死を控えた原田に残される家族を想って言葉を伝えた。
とっくに覚悟していたのに、突きつけられると受け入れられない自分がいた。
「だって、原田さんは生き延びたって言い伝えがあって……」
「それはただの言い伝えだったんだろう」
戸惑い涙を浮かべる夢主に土方は冷たく現実を突きつけてしまった。
「もう、土方さん……夢主ちゃん、大丈夫」
沖田の問いかけに地面を見て小さく頷く夢主、その頭を見て、土方は言い過ぎたと頭を掻いて反省の色を浮かべた。
「土方さんにしてはらしくないですね、こんな風に女の子を泣かせちゃうなんて。土方さんが泣かせるのは色恋でだけだと思いましたよ」
「こいつっ……いやっ、悪かったな夢主……総司は変わらねぇな、憎たらしくて何時だってどつきたくなる野郎だ」
「ははっ、ありがとうございます。僕は何と言われようが土方さんが大好きですよ、怒りん坊で乱暴で我が儘な土方さんが!!」
「言ってくれるじゃねぇか」
ニヤリ……出航前に久しぶりに手合わせでもするか、そんな喧嘩染みた視線を土方は送るが、沖田は爽やかに笑い受け流した。
「どうか……生きてくださいね、僕の道場を見に来てください……」
「……そうだな、そうだ。お前の道場か……当ては出来たのか」
「えぇ」
「そうか……良かったな」
夢主は二人の会話を聞きながら涙をおさめ、こんな他愛の無いやり取りももう見られないのだろうと二人の絆を目に焼き付けた。
「夢主、泣き止んだか……すまねぇな、こんな所まで来てくれたってのによ、きつく言っちまった。悪かったな……俺も驚いたんだ、原田が死ぬとは思わなくてな。あいつは殺しても死なねぇ顔してただたろ?」
「ふふっ……そうです……原田さん、いつも優しくて強くて……頼もしかったです……沢山励ましてもらいました……」
「おいおい……」
話しながら再び涙を溢れさせる夢主に土方は困り、その頭に軽くぽんぽんと触れて励ました。
「原田さんも……よくしてくれました……頭……ぽんぽんって」
「そうか……」
「あったかくて……大きな手で……お日様みたいな……原田さんっ」
真っ赤な目で笑顔を取り繕う夢主を見るうち、土方は居た堪れなくなり顔を逸らしてしまった。
「ここで……お前がここまで来てくれるってことは、俺もここまでなんだな……」
「そんなっ」
ポツリと漏らした言葉は冗談のつもりだった。
しかし半分は薄っすらと勘付いている本音でもあった。
「斎藤さんは待っていればいいんですよ、ねっ、夢主ちゃん」
「はっ……はい、あの……」
土方に会いに来たと告げようとするが、当の本人は斎藤の話を聞きに来たのだろうと話を進めた。
「斎藤のことは悪いが俺も分からねぇ。会津で別れて……会津は降伏した。斎藤は行方知れずだそうだ」
「行方知れず……」
「あぁ。だがあいつの事だ、どこかに潜んでいるか、偽名でも使っていけしゃあしゃあと過ごしているだろうよ」
「ふふっ、そうですね、私もそう思います」
「あぁ、そのうちひょっこり帰ってくるだろう」
斎藤のその後を知らない土方は自分の把握している情報を二人に伝えた。
夢主の笑顔に心が軽くなる土方だが、他の仲間の行方も伝えねばと思えば心が重くなった。
「……永倉の行方も分からねぇ。……原田は……死んだ」
突然の報せに夢主と沖田は冷たい海風を浴びて固まった。
「あ……原田さんが……」
「あぁ。彰義隊と共に戦っていたそうだ。何故か分からんが川の近くで手負いし、手当てを受けたが何日か経ってそのまま……」
「そんな……原田さん……」
夢主もその死は覚悟していた。
原田に言葉を送った時も、死を控えた原田に残される家族を想って言葉を伝えた。
とっくに覚悟していたのに、突きつけられると受け入れられない自分がいた。
「だって、原田さんは生き延びたって言い伝えがあって……」
「それはただの言い伝えだったんだろう」
戸惑い涙を浮かべる夢主に土方は冷たく現実を突きつけてしまった。
「もう、土方さん……夢主ちゃん、大丈夫」
沖田の問いかけに地面を見て小さく頷く夢主、その頭を見て、土方は言い過ぎたと頭を掻いて反省の色を浮かべた。
「土方さんにしてはらしくないですね、こんな風に女の子を泣かせちゃうなんて。土方さんが泣かせるのは色恋でだけだと思いましたよ」
「こいつっ……いやっ、悪かったな夢主……総司は変わらねぇな、憎たらしくて何時だってどつきたくなる野郎だ」
「ははっ、ありがとうございます。僕は何と言われようが土方さんが大好きですよ、怒りん坊で乱暴で我が儘な土方さんが!!」
「言ってくれるじゃねぇか」
ニヤリ……出航前に久しぶりに手合わせでもするか、そんな喧嘩染みた視線を土方は送るが、沖田は爽やかに笑い受け流した。
「どうか……生きてくださいね、僕の道場を見に来てください……」
「……そうだな、そうだ。お前の道場か……当ては出来たのか」
「えぇ」
「そうか……良かったな」
夢主は二人の会話を聞きながら涙をおさめ、こんな他愛の無いやり取りももう見られないのだろうと二人の絆を目に焼き付けた。
「夢主、泣き止んだか……すまねぇな、こんな所まで来てくれたってのによ、きつく言っちまった。悪かったな……俺も驚いたんだ、原田が死ぬとは思わなくてな。あいつは殺しても死なねぇ顔してただたろ?」
「ふふっ……そうです……原田さん、いつも優しくて強くて……頼もしかったです……沢山励ましてもらいました……」
「おいおい……」
話しながら再び涙を溢れさせる夢主に土方は困り、その頭に軽くぽんぽんと触れて励ました。
「原田さんも……よくしてくれました……頭……ぽんぽんって」
「そうか……」
「あったかくて……大きな手で……お日様みたいな……原田さんっ」
真っ赤な目で笑顔を取り繕う夢主を見るうち、土方は居た堪れなくなり顔を逸らしてしまった。
「ここで……お前がここまで来てくれるってことは、俺もここまでなんだな……」
「そんなっ」
ポツリと漏らした言葉は冗談のつもりだった。
しかし半分は薄っすらと勘付いている本音でもあった。