107.会津新選組
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植木屋を訪れてから暫くの後、土方は内藤隼人と言うもう一つの名を自らに付け、薩長を中心とする官軍との最後の戦いに向かっていく。
この時、官軍を刺激しないようにと幕府に命ぜられ、『新選組』という愛着ある誇り高き隊名が『甲陽鎮撫隊』に変えられた。
そして甲陽鎮撫隊が着陣した流山。
不運にも僅かな人数で陣に残っているところを官軍に包囲されてしまった。隊士の殆どが離れた場所へ調練に出ていたのだ。
近藤は共に残っていた土方と若い隊士を守る為、自ら官軍の前に姿を現し、捕らわれた。
近藤が捕らわれたと言う突然の報せに、隊士達はみな衝撃を受けた。
大久保大和と名乗り正体を隠した近藤だが、官軍がやっきになって探していた、彼ら曰く賊軍の、それも一番憎しと狙っていた集団、新選組の局長だ。
すぐに真実は見抜かれ、生きては開放されないだろうと、誰もが覚悟を決めた。
既に隊を離れた永倉や原田、植木屋に潜む沖田も報せを知り、感じた思いは同じであった。
悔しさで震えるが、その震えは、どうにも出来ない自らへの怒りでもある。
直前まで傍にいた土方のその思いは誰よりも強かった。
僅かな希望を抱いて近藤の助命に駆け回るが、叶わなかった。
近藤を失っても土方は戦うことを止めず、旧幕府先鋒軍の参謀に選出されると、会津藩士と共に軍を率いて、宇都宮城を落としに向かい、成功させた。
宇都宮城は官軍が狙う要所だ。
会津藩や庄内藩を討たんと狙う官軍が北上する為に外せない地点。
会津藩は京で治安を守った新選組、庄内藩は江戸を守った新微組の面倒を見ていた藩。
不貞浪士や過激派として散々取締りを受けた薩長の官軍は、仕返しをしたくて堪らなかった。
土方は新選組副長として一目置かれていた存在だが、この城の奪還で更に評価が上がった。
しかしその後、土方は戦いの最中に足を怪我し、前線に出られず会津に入り療養した。
土方が離れた直後、宇都宮城は再び官軍の手に渡っている。いやでも土方の評価は上がっていった。
土方が会津に入った翌日、誰の手も届かない場に連れて行かれた新選組の局長・近藤勇は、守ってきたはずの京の天子様に背く者として、罪人の扱いを受け斬首の刑に処された。
流山で近藤が投降してから、ひと月も経たない四月二十五日のことだった。
土方一行は、近藤捕らわれの地・流山から先に会津入りしていた甲陽鎮撫隊こと新選組の本陣と合流する為、さらに移動して会津若松の清水屋に入った。
そこで斎藤を呼び出し、真剣な眼差しをぶつけていた。
斎藤は土方の様子を窺った。
こんな状況下、怪我で動けないとはさぞかしもどかしいだろう。
そう思うも、土方の目の色は衰えず、それどころか戦の流れや官軍の行いに怒り滾っているように見えた。
「土方さん」
近藤の処刑は斎藤も耳にしていた。
今更口にするのも虚しいか、屈辱だろうかと考えるが、目の前の男にだけはと、伝えたい思いを言葉にした。
「近藤さんはやり遂げました。我らの局長、近藤勇は最期に責任を果たしたんです。新政府側に下るを良しとせず、土方さん、貴方を死なせる訳にはいかなかった。局長としても、友としても……そうでしょう」
「……もう、いい。すまねぇな……」
その想いはありがたい……俺も分かっている……
そう返したいが言葉に詰まってしまう土方は、お前を呼び出した本題は別にあると姿勢を正し、赤い鼻を隠さずに見せた。
この時、官軍を刺激しないようにと幕府に命ぜられ、『新選組』という愛着ある誇り高き隊名が『甲陽鎮撫隊』に変えられた。
そして甲陽鎮撫隊が着陣した流山。
不運にも僅かな人数で陣に残っているところを官軍に包囲されてしまった。隊士の殆どが離れた場所へ調練に出ていたのだ。
近藤は共に残っていた土方と若い隊士を守る為、自ら官軍の前に姿を現し、捕らわれた。
近藤が捕らわれたと言う突然の報せに、隊士達はみな衝撃を受けた。
大久保大和と名乗り正体を隠した近藤だが、官軍がやっきになって探していた、彼ら曰く賊軍の、それも一番憎しと狙っていた集団、新選組の局長だ。
すぐに真実は見抜かれ、生きては開放されないだろうと、誰もが覚悟を決めた。
既に隊を離れた永倉や原田、植木屋に潜む沖田も報せを知り、感じた思いは同じであった。
悔しさで震えるが、その震えは、どうにも出来ない自らへの怒りでもある。
直前まで傍にいた土方のその思いは誰よりも強かった。
僅かな希望を抱いて近藤の助命に駆け回るが、叶わなかった。
近藤を失っても土方は戦うことを止めず、旧幕府先鋒軍の参謀に選出されると、会津藩士と共に軍を率いて、宇都宮城を落としに向かい、成功させた。
宇都宮城は官軍が狙う要所だ。
会津藩や庄内藩を討たんと狙う官軍が北上する為に外せない地点。
会津藩は京で治安を守った新選組、庄内藩は江戸を守った新微組の面倒を見ていた藩。
不貞浪士や過激派として散々取締りを受けた薩長の官軍は、仕返しをしたくて堪らなかった。
土方は新選組副長として一目置かれていた存在だが、この城の奪還で更に評価が上がった。
しかしその後、土方は戦いの最中に足を怪我し、前線に出られず会津に入り療養した。
土方が離れた直後、宇都宮城は再び官軍の手に渡っている。いやでも土方の評価は上がっていった。
土方が会津に入った翌日、誰の手も届かない場に連れて行かれた新選組の局長・近藤勇は、守ってきたはずの京の天子様に背く者として、罪人の扱いを受け斬首の刑に処された。
流山で近藤が投降してから、ひと月も経たない四月二十五日のことだった。
土方一行は、近藤捕らわれの地・流山から先に会津入りしていた甲陽鎮撫隊こと新選組の本陣と合流する為、さらに移動して会津若松の清水屋に入った。
そこで斎藤を呼び出し、真剣な眼差しをぶつけていた。
斎藤は土方の様子を窺った。
こんな状況下、怪我で動けないとはさぞかしもどかしいだろう。
そう思うも、土方の目の色は衰えず、それどころか戦の流れや官軍の行いに怒り滾っているように見えた。
「土方さん」
近藤の処刑は斎藤も耳にしていた。
今更口にするのも虚しいか、屈辱だろうかと考えるが、目の前の男にだけはと、伝えたい思いを言葉にした。
「近藤さんはやり遂げました。我らの局長、近藤勇は最期に責任を果たしたんです。新政府側に下るを良しとせず、土方さん、貴方を死なせる訳にはいかなかった。局長としても、友としても……そうでしょう」
「……もう、いい。すまねぇな……」
その想いはありがたい……俺も分かっている……
そう返したいが言葉に詰まってしまう土方は、お前を呼び出した本題は別にあると姿勢を正し、赤い鼻を隠さずに見せた。