107.会津新選組
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「治療費と言ったって、額が大きすぎますよ」
「うるせぇな、人の好意は素直に受け取れ!お前一人じゃねぇんだ!斎藤が戻るまでの分と思えば安いくらいだろう!幕府や会津に貰った金と……言うなと言われたが伝えるぜ、斎藤からの金も相当入ってる」
「え……」
二人は再び驚き声を失った。
「あいつも随分と貯め込んでやがったな。まだ半分だと抜かしやがったぜ、恐ろしい男だ。まぁ……だがこれで受け取れるだろう。受け取らなきゃあいつの気持ちを踏みにじる事になるぜ、苦労させたくないんだよ、お前に」
「一さん……」
「これで住む場所を見つけて、大事に使え」
「はい……」
斎藤が江戸に戻り、新たに手にした金の全てを夢主に渡したのでは……それ程の額に驚きながら、夢主は泣いていた。
必ずお前の元へ戻るから、お前はその仕度を整えておけ……そんな声が聞こえてきそうだ。
共に生きて欲しいと言ってくれた言葉を思いながら、夢主は涙を拭いた。
「おっとそれからお前に俺からの土産……怒られちまうかな、手ぇ出してみろ」
「えっ?」
夢主が手を広げると土方は腰に結んでいた袋に手を伸ばし、中身を取り出してそっと掌に乗せた。
「これは……」
「咲いてたんでな、昔俺に届けてくれただろう……梅の花。枝ごと持ってきたらお前に怒られそうだからな、小さな花だけどよ」
「ふふっ……ありがとうございます。確かに……折ったら可哀相……」
「だがな、梅は程よく手折られたほうが翌年の花付きも実付きも良くなるんだぜ、それだけは教えておくぜ」
「わかりました、ふふっ、土方さん本当に梅がお好きなんですね」
梅のことならお前の知識に負けないとばかりに熱くなる土方が子供のようで可笑しかった。
「梅だけじゃなく……土方さんはいろんな事を知っています。私に無いものをたくさん持っています……」
「そうか」
厳しい戦の中でも変わらない美しい顔を傾け微笑む土方に、夢主も笑顔を返した。
「さて、そろそろ戻るか。土方歳三ともあろう男がこうのんびりとしてちゃあ、怒られちまうな」
「ふふっ、では私……お見送りします」
「いいさ、ここで」
断ると眉根を寄せて首を振る夢主を不審に思い、土方はなら敷地の中までならと見送りを許した。
離れから母屋を通り門に辿り着くまであっという間だ。
わざわざ見送りとは一体何事か……前を行く土方がゆっくり振り返ると、夢主は何かを抱え込んだ時にしてしまう表情を見せていた。
「あの……土方さんが来てくれて嬉しかったです」
「そうか、また時間が出来たら顔を見せるさ」
「はい、是非……」
「なんだ、変な顔しやがって。斎藤より俺が良くなっちまったか」
「違いますっ!!違います……」
冗談で返してくると思ったら俯いてしまった夢主を気に掛け、土方はゆっくりそっと顔を覗いた。
総司ではなく俺に伝えたい話があるのか……
自由にならない己の身だが、男として下を向く女を放っては帰れない。
「どうした」
「土方さんがいてくださると……総司さん……沖田さんのお顔が明るくなるんです。いつも笑っている沖田さんですけど……どこか淋しそうで……。本当は、お傍にいたいのは近藤さんや土方さんなのではと」
「違いますよ」
「沖っ……総司さん……」
体を屈めていた土方も体を起こし、様子を見に来た沖田に顔を向けた。
「うるせぇな、人の好意は素直に受け取れ!お前一人じゃねぇんだ!斎藤が戻るまでの分と思えば安いくらいだろう!幕府や会津に貰った金と……言うなと言われたが伝えるぜ、斎藤からの金も相当入ってる」
「え……」
二人は再び驚き声を失った。
「あいつも随分と貯め込んでやがったな。まだ半分だと抜かしやがったぜ、恐ろしい男だ。まぁ……だがこれで受け取れるだろう。受け取らなきゃあいつの気持ちを踏みにじる事になるぜ、苦労させたくないんだよ、お前に」
「一さん……」
「これで住む場所を見つけて、大事に使え」
「はい……」
斎藤が江戸に戻り、新たに手にした金の全てを夢主に渡したのでは……それ程の額に驚きながら、夢主は泣いていた。
必ずお前の元へ戻るから、お前はその仕度を整えておけ……そんな声が聞こえてきそうだ。
共に生きて欲しいと言ってくれた言葉を思いながら、夢主は涙を拭いた。
「おっとそれからお前に俺からの土産……怒られちまうかな、手ぇ出してみろ」
「えっ?」
夢主が手を広げると土方は腰に結んでいた袋に手を伸ばし、中身を取り出してそっと掌に乗せた。
「これは……」
「咲いてたんでな、昔俺に届けてくれただろう……梅の花。枝ごと持ってきたらお前に怒られそうだからな、小さな花だけどよ」
「ふふっ……ありがとうございます。確かに……折ったら可哀相……」
「だがな、梅は程よく手折られたほうが翌年の花付きも実付きも良くなるんだぜ、それだけは教えておくぜ」
「わかりました、ふふっ、土方さん本当に梅がお好きなんですね」
梅のことならお前の知識に負けないとばかりに熱くなる土方が子供のようで可笑しかった。
「梅だけじゃなく……土方さんはいろんな事を知っています。私に無いものをたくさん持っています……」
「そうか」
厳しい戦の中でも変わらない美しい顔を傾け微笑む土方に、夢主も笑顔を返した。
「さて、そろそろ戻るか。土方歳三ともあろう男がこうのんびりとしてちゃあ、怒られちまうな」
「ふふっ、では私……お見送りします」
「いいさ、ここで」
断ると眉根を寄せて首を振る夢主を不審に思い、土方はなら敷地の中までならと見送りを許した。
離れから母屋を通り門に辿り着くまであっという間だ。
わざわざ見送りとは一体何事か……前を行く土方がゆっくり振り返ると、夢主は何かを抱え込んだ時にしてしまう表情を見せていた。
「あの……土方さんが来てくれて嬉しかったです」
「そうか、また時間が出来たら顔を見せるさ」
「はい、是非……」
「なんだ、変な顔しやがって。斎藤より俺が良くなっちまったか」
「違いますっ!!違います……」
冗談で返してくると思ったら俯いてしまった夢主を気に掛け、土方はゆっくりそっと顔を覗いた。
総司ではなく俺に伝えたい話があるのか……
自由にならない己の身だが、男として下を向く女を放っては帰れない。
「どうした」
「土方さんがいてくださると……総司さん……沖田さんのお顔が明るくなるんです。いつも笑っている沖田さんですけど……どこか淋しそうで……。本当は、お傍にいたいのは近藤さんや土方さんなのではと」
「違いますよ」
「沖っ……総司さん……」
体を屈めていた土方も体を起こし、様子を見に来た沖田に顔を向けた。