107.会津新選組
夢主名前設定
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美しく流れる舞のような沖田の形稽古を久しぶりに目にした夢主は、懐かしさを感じて眺めていた。
初めて目にした壬生の道場での沖田の稽古を思い出す、あれはいつの季節か。
道場といえば、今となっては楽しく面白い思い出ばかりだ。
斎藤が皆と一対多数の乱稽古で見せた背筋が痺れるほど疾く鋭く力強い剣、稽古をつけてもらうつもりが床に転がされた日は確か寒くて雪が降り出した日。
そして斎藤と沖田が稽古を越えて本気になってしまった日……止めてくれたのは藤堂……あれは確か梅の季節だろう。
次々と浮かぶ愛しい日々と、そこにいた皆の姿。
込み上げてしまう涙を拭って顔を上げると、沖田が心配そうに覗いていた。
「どうしたの……辛いの……」
「いいえ、もうすぐ梅の季節だなって思っただけです。ちょっと懐かしいなって」
「……そうだね……」
にこりと涙を滲ませながら微笑む夢主に沖田は優しく返し、庭の真ん中へ戻り稽古を再開した。
変に慰め合っては余計に寂しさが増す。沖田はひたすら刀を振るった。
剣を握っていると、かつて道場で散々叩きのめした仲間の降参した顔や、笑いながら「お前は厳しすぎる!」と責めて文句を言う顔が次々と浮かんでくる。
涙を拭いたいのは沖田もまた同じだった。
夢主は一人、空を見上げ流れ行く雲を見つめて過ごした。
同じ空の下、今もどこかで懸命に駆けている者達を想う毎日が過ぎて行く。
離れや江戸周辺で梅が咲き始めた頃、話していた通りに待ち人がやって来た。
時折顔を出して世話をしてくれる老婦に、訪問者が通して良い人物かどうか訊ねられ、驚いた二人だが揃って「是非!」と即答した。
二人の様子に特別な客人と察した老婦はしなやかに笑んで部屋を後にした。
老婦が去り、すぐに近付いてきた足音はとても懐かしいものだ。
母屋から姿を現し離れにやって来たのは、洋装に身を包んだ土方歳三だった。
洋装に変わっても変わらない素早い摺り足の音に二人は嬉しさを覚えた。
「土方さん!!その格好!髪!!」
驚く沖田を愉快そうに笑っている土方を、夢主も楽しく見つめた。
「ははっ!いいだろう!お前は驚かねぇんだな夢主、さすがだ」
「いえ……でも本当のところ、土方さんの洋装の写真を見たことがあるんです」
「ほぉ、俺の写真をか」
「はい、その洋装姿で……とてもお似合いです」
「ははっ、そうか、お前に言われると本当に似合ってるんだろうな、はははっ」
洋装が広まっている世から来た夢主の褒め言葉を土方は素直に喜んだ。
少し照れ臭そうにしている土方、なかなか大きな荷物を抱えていた。
「髪まで切っちゃうなんて意外でしたよ」
「洋装にはこっちの方が似合うんだよ!な、夢主」
「えっ……そうですね……まぁどちらでも……」
「あははっ、ほら夢主ちゃんどっちでも~って言ってますよー」
「いえっ、土方さんはこのお姿にこの髪型でとってもお似合いです!!総司さん!」
余計なことを言わないで下さいとむくれて沖田に釘を打つ夢主を、男二人は楽しく笑う。
親しい二人の心からの笑顔、そんな束の間の光景に夢主も微笑まずにいられなかった。
「ところでその荷物は何なんですか」
「こいつか、いい土産を持ってきたぜ。ちょっといいか」
そう言うと座敷の真ん中へ腰を下ろし、包みを広げた。
「これはっ、なんですか土方さん!」
「お前の服だよ。洋装さ。いつか必要な時があるかも知れねぇだろう、咄嗟に揃えるのは大変なもんだぞ。大きさも合うはずだ。着方は夢主がよく知ってるだろう。今まで通り過ごせばいいだろうが……備えみたいなもんだ。動きやすくていいぜ」
自分の宝物をおすそ分けする子供のように得意気な土方の前で、沖田は渋々と黒い上着と白いシャツを広げるが、興味が無いとばかりにその場に戻してしまった。
「まぁ捨てずに置いておけよ!いいな。それからこれだ」
洋服の下に置かれていた木箱を開けると、中から綺麗に束ねられた小判が並んで姿を見せた。
「これは一体!」
「まぁ、軍資金はたんまり頂戴してるんでな。沖田総司は植木屋で療養してるんだ。お前に治療費も必要だろう、違うか」
目配せをし愉快そうに言う土方を二人は驚いて見つめ返した。
初めて目にした壬生の道場での沖田の稽古を思い出す、あれはいつの季節か。
道場といえば、今となっては楽しく面白い思い出ばかりだ。
斎藤が皆と一対多数の乱稽古で見せた背筋が痺れるほど疾く鋭く力強い剣、稽古をつけてもらうつもりが床に転がされた日は確か寒くて雪が降り出した日。
そして斎藤と沖田が稽古を越えて本気になってしまった日……止めてくれたのは藤堂……あれは確か梅の季節だろう。
次々と浮かぶ愛しい日々と、そこにいた皆の姿。
込み上げてしまう涙を拭って顔を上げると、沖田が心配そうに覗いていた。
「どうしたの……辛いの……」
「いいえ、もうすぐ梅の季節だなって思っただけです。ちょっと懐かしいなって」
「……そうだね……」
にこりと涙を滲ませながら微笑む夢主に沖田は優しく返し、庭の真ん中へ戻り稽古を再開した。
変に慰め合っては余計に寂しさが増す。沖田はひたすら刀を振るった。
剣を握っていると、かつて道場で散々叩きのめした仲間の降参した顔や、笑いながら「お前は厳しすぎる!」と責めて文句を言う顔が次々と浮かんでくる。
涙を拭いたいのは沖田もまた同じだった。
夢主は一人、空を見上げ流れ行く雲を見つめて過ごした。
同じ空の下、今もどこかで懸命に駆けている者達を想う毎日が過ぎて行く。
離れや江戸周辺で梅が咲き始めた頃、話していた通りに待ち人がやって来た。
時折顔を出して世話をしてくれる老婦に、訪問者が通して良い人物かどうか訊ねられ、驚いた二人だが揃って「是非!」と即答した。
二人の様子に特別な客人と察した老婦はしなやかに笑んで部屋を後にした。
老婦が去り、すぐに近付いてきた足音はとても懐かしいものだ。
母屋から姿を現し離れにやって来たのは、洋装に身を包んだ土方歳三だった。
洋装に変わっても変わらない素早い摺り足の音に二人は嬉しさを覚えた。
「土方さん!!その格好!髪!!」
驚く沖田を愉快そうに笑っている土方を、夢主も楽しく見つめた。
「ははっ!いいだろう!お前は驚かねぇんだな夢主、さすがだ」
「いえ……でも本当のところ、土方さんの洋装の写真を見たことがあるんです」
「ほぉ、俺の写真をか」
「はい、その洋装姿で……とてもお似合いです」
「ははっ、そうか、お前に言われると本当に似合ってるんだろうな、はははっ」
洋装が広まっている世から来た夢主の褒め言葉を土方は素直に喜んだ。
少し照れ臭そうにしている土方、なかなか大きな荷物を抱えていた。
「髪まで切っちゃうなんて意外でしたよ」
「洋装にはこっちの方が似合うんだよ!な、夢主」
「えっ……そうですね……まぁどちらでも……」
「あははっ、ほら夢主ちゃんどっちでも~って言ってますよー」
「いえっ、土方さんはこのお姿にこの髪型でとってもお似合いです!!総司さん!」
余計なことを言わないで下さいとむくれて沖田に釘を打つ夢主を、男二人は楽しく笑う。
親しい二人の心からの笑顔、そんな束の間の光景に夢主も微笑まずにいられなかった。
「ところでその荷物は何なんですか」
「こいつか、いい土産を持ってきたぜ。ちょっといいか」
そう言うと座敷の真ん中へ腰を下ろし、包みを広げた。
「これはっ、なんですか土方さん!」
「お前の服だよ。洋装さ。いつか必要な時があるかも知れねぇだろう、咄嗟に揃えるのは大変なもんだぞ。大きさも合うはずだ。着方は夢主がよく知ってるだろう。今まで通り過ごせばいいだろうが……備えみたいなもんだ。動きやすくていいぜ」
自分の宝物をおすそ分けする子供のように得意気な土方の前で、沖田は渋々と黒い上着と白いシャツを広げるが、興味が無いとばかりにその場に戻してしまった。
「まぁ捨てずに置いておけよ!いいな。それからこれだ」
洋服の下に置かれていた木箱を開けると、中から綺麗に束ねられた小判が並んで姿を見せた。
「これは一体!」
「まぁ、軍資金はたんまり頂戴してるんでな。沖田総司は植木屋で療養してるんだ。お前に治療費も必要だろう、違うか」
目配せをし愉快そうに言う土方を二人は驚いて見つめ返した。