12.二人の朝
夢主名前設定
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布団に入り目を閉じると、思わぬ事態が起きた。今まで聞こえなかったものが急に耳に入ってきたのだ。
嬌声だ。
(ぁっ……ぁんんっ……)
遠くから聞こえる止まらない声。夢主は耳が隠れるまで布団をかぶり、赤くなった顔を隠そうとした。
耳の良い斎藤にはずっと聞こえていたのだ。
だから夢主と距離を取っていた。
……土方さんもこんな場所を指定するとは、全く趣味が悪い……
何か間違いが起こるのを楽しみに待たれているようで少なからず苛立った。
けれども地理的に間違い無い場所であり、怪しまれず一晩を過ごせるので反論も出来なかった。
布団の中の夢主は必死に意識を消そうとしているうち、いつしか本当に眠り込んでしまった。
それを見届けた斎藤はふっと息を吐き、酒の残った猪口を膳に置いた。
「やれやれ……眠ったか。介錯の方がどれほど楽か……」
店に入る前から耳の良い斎藤には多くの嬌声が届いていた。
声や物音から、経験が少なくない斎藤には近くでどういった痴情が行われているか事細かに、容易に想像がつく。
そんな状況でそれなりに気になる女と夜を過ごすのだから至極気を使う。
夢主の顔を見ないよう窓際で月を肴に酒を呑んだのもその為だ。
ちらりと夢主を見やり、フッと鼻をならすと刀を脇に座ったまま自らも目を閉じた。
長く続いた眠らない日々、昼間仮眠を取ったが充分ではなかったうえ、夢主の為に普段使わぬ神経をすり減らした。
斎藤の意識が遠のいていった。
遠く聞こえていた艶めいた声も薄れた真夜中。
寝入って一刻ほど経った頃、夢主は不意に目が覚めた。
見ると少し開いた窓から僅かに漏れ入る月明かりの中、斎藤がうつらうつらと刀を抱えたまま眠っている。
……斎藤さん、やっぱりお疲れだったんだ……
自分の為により神経をすり減らした事など知る由も無く、夢主は微笑んで肌掛けを持って斎藤に近づいた。
膳の上、猪口に酒が残っているのを見つけ、一人で沢山呑んだのかな……と何気なく手に取った。
……お酒ご一緒できれば、斎藤さんももっと楽しいのかな……
記憶を無くした夜を思い出し一瞬躊躇うが、くいっと飲み干してしまった。
嬌声だ。
(ぁっ……ぁんんっ……)
遠くから聞こえる止まらない声。夢主は耳が隠れるまで布団をかぶり、赤くなった顔を隠そうとした。
耳の良い斎藤にはずっと聞こえていたのだ。
だから夢主と距離を取っていた。
……土方さんもこんな場所を指定するとは、全く趣味が悪い……
何か間違いが起こるのを楽しみに待たれているようで少なからず苛立った。
けれども地理的に間違い無い場所であり、怪しまれず一晩を過ごせるので反論も出来なかった。
布団の中の夢主は必死に意識を消そうとしているうち、いつしか本当に眠り込んでしまった。
それを見届けた斎藤はふっと息を吐き、酒の残った猪口を膳に置いた。
「やれやれ……眠ったか。介錯の方がどれほど楽か……」
店に入る前から耳の良い斎藤には多くの嬌声が届いていた。
声や物音から、経験が少なくない斎藤には近くでどういった痴情が行われているか事細かに、容易に想像がつく。
そんな状況でそれなりに気になる女と夜を過ごすのだから至極気を使う。
夢主の顔を見ないよう窓際で月を肴に酒を呑んだのもその為だ。
ちらりと夢主を見やり、フッと鼻をならすと刀を脇に座ったまま自らも目を閉じた。
長く続いた眠らない日々、昼間仮眠を取ったが充分ではなかったうえ、夢主の為に普段使わぬ神経をすり減らした。
斎藤の意識が遠のいていった。
遠く聞こえていた艶めいた声も薄れた真夜中。
寝入って一刻ほど経った頃、夢主は不意に目が覚めた。
見ると少し開いた窓から僅かに漏れ入る月明かりの中、斎藤がうつらうつらと刀を抱えたまま眠っている。
……斎藤さん、やっぱりお疲れだったんだ……
自分の為により神経をすり減らした事など知る由も無く、夢主は微笑んで肌掛けを持って斎藤に近づいた。
膳の上、猪口に酒が残っているのを見つけ、一人で沢山呑んだのかな……と何気なく手に取った。
……お酒ご一緒できれば、斎藤さんももっと楽しいのかな……
記憶を無くした夜を思い出し一瞬躊躇うが、くいっと飲み干してしまった。