106.冷たい船の燭
夢主名前設定
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心から嬉しそうに、弱々しくも声を絞り出して夢主に話し掛けている。
沖田はほんの僅か扉を開いたまま、廊下から二人の会話に耳を傾けた。
その隣では斎藤が依然立ったままだ。耳に届いた懐かしく優しい声に嫌でも目元が緩んでしまう。
斎藤は誰に見られても気付かれないよう、腕を組んで目を細め、口元を締めて表情を隠した。
「ふふっ、嬉しかったんですよ。あの、山崎さんのお家って……忍者なんですか」
「っ……ははっ……はは、あぁ苦しい……あんまり笑わせないでください、忍者とは……夢主さんは面白い……。私の家はただの医者……鍼灸医で……医者と言いつつ商人みたいなもんです……私も医者の真似事をして……商いをしているだけでした……」
「そうなんですか……でも私、そろばんなら出来ますよ」
「へぇ……それは……知りませんでした……驚きです、算段まで出来たとは……これは是非……家に連れて帰りたかったですね……」
「ふふっ、山崎さんたらっ」
自分の冗談に笑ってくれる夢主に山崎も嬉しそうだ。
狭い船室に夢主の声はよく響いた。
「でも私、山崎さんのお家に行ったところで、たいしたお手伝いも出来ませんよ……きっとみなさんの邪魔をしてしまうだけで」
「ははっ……いや……笑ってくれているだけで……それだけでいいんですよ、貴女が……笑ってくれてさえ……いれば、それで……」
すっ、と山崎の手が伸びてきたので、夢主は何も意識せずにそっと両手を添えた。
弱っても夢主より大きな掌、その中にある小さな陶器に気付き目を大きくした。
「ははっ……見つかってしまいましたね……ずっとこうして手元に……随分と力を頂きましたよ」
「山崎さん……力になったのなら、嬉しいです」
照れて首を傾げると、山崎とははっと霞んでしまいそうな笑みを返した。
「山崎さんにずっと訊いてみたかったんですけどね、山崎さんって実は私と一さんの……斎藤さんのお話も……聞いてたんですか」
「えっ……斎藤先生と……」
「だって監察方として動いてて、お目付け役……そんな役割されてたのかなぁって……前に幕府の忍びの方に私を見てたって言われた事あったので……。もしかして、山崎さんもそうなのかなって……別に責めている訳じゃないんですよ、でも少し……気になって……」
山崎の手に添えた夢主の手が僅かに熱くなっていた。
斎藤とのやり取りを見られていたとしたら居た堪れないほどに恥ずかしいからだ。
「ははっ……大丈夫……確かに初めは副長の命令で聞き耳を立てた時もありました……でも……それもすぐに終わりました……興味本位で……覗いてしまった事はあります……申し訳ない……」
それはいつの日だろうと頬を染める夢主に山崎は小さく微笑んだ。
沖田はほんの僅か扉を開いたまま、廊下から二人の会話に耳を傾けた。
その隣では斎藤が依然立ったままだ。耳に届いた懐かしく優しい声に嫌でも目元が緩んでしまう。
斎藤は誰に見られても気付かれないよう、腕を組んで目を細め、口元を締めて表情を隠した。
「ふふっ、嬉しかったんですよ。あの、山崎さんのお家って……忍者なんですか」
「っ……ははっ……はは、あぁ苦しい……あんまり笑わせないでください、忍者とは……夢主さんは面白い……。私の家はただの医者……鍼灸医で……医者と言いつつ商人みたいなもんです……私も医者の真似事をして……商いをしているだけでした……」
「そうなんですか……でも私、そろばんなら出来ますよ」
「へぇ……それは……知りませんでした……驚きです、算段まで出来たとは……これは是非……家に連れて帰りたかったですね……」
「ふふっ、山崎さんたらっ」
自分の冗談に笑ってくれる夢主に山崎も嬉しそうだ。
狭い船室に夢主の声はよく響いた。
「でも私、山崎さんのお家に行ったところで、たいしたお手伝いも出来ませんよ……きっとみなさんの邪魔をしてしまうだけで」
「ははっ……いや……笑ってくれているだけで……それだけでいいんですよ、貴女が……笑ってくれてさえ……いれば、それで……」
すっ、と山崎の手が伸びてきたので、夢主は何も意識せずにそっと両手を添えた。
弱っても夢主より大きな掌、その中にある小さな陶器に気付き目を大きくした。
「ははっ……見つかってしまいましたね……ずっとこうして手元に……随分と力を頂きましたよ」
「山崎さん……力になったのなら、嬉しいです」
照れて首を傾げると、山崎とははっと霞んでしまいそうな笑みを返した。
「山崎さんにずっと訊いてみたかったんですけどね、山崎さんって実は私と一さんの……斎藤さんのお話も……聞いてたんですか」
「えっ……斎藤先生と……」
「だって監察方として動いてて、お目付け役……そんな役割されてたのかなぁって……前に幕府の忍びの方に私を見てたって言われた事あったので……。もしかして、山崎さんもそうなのかなって……別に責めている訳じゃないんですよ、でも少し……気になって……」
山崎の手に添えた夢主の手が僅かに熱くなっていた。
斎藤とのやり取りを見られていたとしたら居た堪れないほどに恥ずかしいからだ。
「ははっ……大丈夫……確かに初めは副長の命令で聞き耳を立てた時もありました……でも……それもすぐに終わりました……興味本位で……覗いてしまった事はあります……申し訳ない……」
それはいつの日だろうと頬を染める夢主に山崎は小さく微笑んだ。