12.二人の朝
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屯所の中を通り過ぎて外に出たが、出たのは裏口から。
表の門は平隊士が番をしているからだろうか、夢主は首をひねった。
それに不思議だったのは、土方をはじめ幹部の皆の気配が無かったことだ。
芹沢達も島原に繰り出しているのか、どちらの屋敷にもいつも聞こえる賑やかな声が無い。
夢主は疑問を抱えたまま斎藤の後ろに黙って続いた。
斎藤は斎藤で、すたすたと歩みながら何やら思案している。
実は夢主を連れ出したのは土方の命令だった。
行く当ても困ったらそこに行けと指示されたのだが、斎藤は迷っていた。
……島原の近くには行けまい……長州藩邸のある地域も不味い……あまり遠くにも連れて行けまい……
町の中心から少し外れた道を行き、指示された場所が近付くと自然に歩みが遅くなる。
斎藤は歩みを緩めて「うぅむ」と唸った。
その唸りを聞いた夢主は、もしや体調が悪いのかと考え込む横顔を見上げた。
食事と言うのは口実だ。
どうして自分を連れ出したかは分からないが、土方の許可があるなら何かの指令なのかもしれない。
先程の辛そうな寝起きといい、本当は休みたいが、やむを得ず出歩いているのではないか。
「あの、斎藤さん……」
「なんだ」
ゆっくり歩いていたが、振り向くのは速かった。
いつもと変わらぬ表情からは斎藤の体調は窺えない。鋭くも世話焼きの良さそうな目で、どうしたと夢主を見ている。
「その……体調が優れないので……どこかで休みたいのですが……」
斎藤の体を気遣ったところで、構うなと言われるだけだ。
夢主は自分の調子が優れないと申し出た。
「何」
夢主の様子を見る斎藤だが、体調が悪いようには見えない。
しかし確かに様子はおかしい。
「そうか……」
やむを得んかと斎藤が切り出そうとした時、辺りを見回した夢主から提案があった。
「あの、お茶屋さん……でも構いませんから……」
二人のすぐ側には一軒の茶屋が立っていた。
そこは土方が指定した店。都合が良い。だが斎藤は躊躇した。
「お前、あそこがただの茶屋ではないと知っているのか」
夢主は目を伏せて頷いた。
少し困った顔を見せるが、迷いはない。
「出会い茶屋は男と女が逢瀬を重ねる場所だぞ、嫌ではないのか」
「……構いません」
こいつは体をとにかく休めたいだけ、斎藤は自らに諭し、それならばと夢主を中に促した。
表の門は平隊士が番をしているからだろうか、夢主は首をひねった。
それに不思議だったのは、土方をはじめ幹部の皆の気配が無かったことだ。
芹沢達も島原に繰り出しているのか、どちらの屋敷にもいつも聞こえる賑やかな声が無い。
夢主は疑問を抱えたまま斎藤の後ろに黙って続いた。
斎藤は斎藤で、すたすたと歩みながら何やら思案している。
実は夢主を連れ出したのは土方の命令だった。
行く当ても困ったらそこに行けと指示されたのだが、斎藤は迷っていた。
……島原の近くには行けまい……長州藩邸のある地域も不味い……あまり遠くにも連れて行けまい……
町の中心から少し外れた道を行き、指示された場所が近付くと自然に歩みが遅くなる。
斎藤は歩みを緩めて「うぅむ」と唸った。
その唸りを聞いた夢主は、もしや体調が悪いのかと考え込む横顔を見上げた。
食事と言うのは口実だ。
どうして自分を連れ出したかは分からないが、土方の許可があるなら何かの指令なのかもしれない。
先程の辛そうな寝起きといい、本当は休みたいが、やむを得ず出歩いているのではないか。
「あの、斎藤さん……」
「なんだ」
ゆっくり歩いていたが、振り向くのは速かった。
いつもと変わらぬ表情からは斎藤の体調は窺えない。鋭くも世話焼きの良さそうな目で、どうしたと夢主を見ている。
「その……体調が優れないので……どこかで休みたいのですが……」
斎藤の体を気遣ったところで、構うなと言われるだけだ。
夢主は自分の調子が優れないと申し出た。
「何」
夢主の様子を見る斎藤だが、体調が悪いようには見えない。
しかし確かに様子はおかしい。
「そうか……」
やむを得んかと斎藤が切り出そうとした時、辺りを見回した夢主から提案があった。
「あの、お茶屋さん……でも構いませんから……」
二人のすぐ側には一軒の茶屋が立っていた。
そこは土方が指定した店。都合が良い。だが斎藤は躊躇した。
「お前、あそこがただの茶屋ではないと知っているのか」
夢主は目を伏せて頷いた。
少し困った顔を見せるが、迷いはない。
「出会い茶屋は男と女が逢瀬を重ねる場所だぞ、嫌ではないのか」
「……構いません」
こいつは体をとにかく休めたいだけ、斎藤は自らに諭し、それならばと夢主を中に促した。