104.燃える夜空
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「やれやれ……」
せめて最後に一撃、そう思うが緋村は既に速攻の間合いの外に出ていた。
「無駄な争いは必要ない。お前の負けだ、斎藤」
「ふざけるな抜刀斎。貴様の息の根は必ず俺が止めてやる。それまでせいぜい生き延びるんだな」
フンと、悪態をつくと相手を見据えたまま顎を上げ、見下す視線を投げてから仲間に命令を下した。
まるで緋村がこれ以上斬りこんで来ないと確信があるような素振りで。
「新選組、撤退だ!!」
斎藤の一声で、必死の応戦を見せていた新選組の隊士達も敵の刃を弾き、懸命の撤退を始めた。
「緋村抜刀斎、いずれまた」
緋村の返事を待たず、斎藤は素早くその場から消え去った。
「斎藤一……また会う日がやって来るのか。新選組、一体どこまで……」
緋村は刃こぼれしている刀をじっくりと見つめた。
この刀でどれほどの人を殺めてきたのか。
今まで辛い宿命を共に背負ってくれた刀。
ここまで傷んでは人はもう斬れないだろう。
「使い物にはならぬか……新しい刀が、必要だな」
……いや、もう刀は必要ない……
もう役には立たない、人を斬り終えた刀を鞘に納め、戦いもあと少しと緋村もその場を立ち去った。
「斎藤一……また会う日がやって来るのか。新選組、一体どこまで……。夢主殿は、どうしているのか……」
緋村は刃こぼれしている刀をじっくりと確認した。
「使い物にはならぬか……新しい刀が、必要だな」
もう役には立たない、人を斬り終えた刀を鞘に収め、戦いはあと少しと緋村もその場を立ち去った。
伏見から離れた京の山では、夢主が何日も昼間の小屋で留守番を重ねていた。
だがある日、比古は夢主も沖田と共に滝がある岩場へと連れて行った。
理由は恐らく昨晩覗いた京の町、その向こうの空が恐ろしい赤黒色に見えたせいだ。
「あれは……」
夜、燃える空を目にした三人は、揃って目を見開いた。
本当にこんな日が来るとは、立ち尽くす沖田の拳は震えていた。自分がいない新選組、かつての仲間が戦っている。
比古は暗闇に浮かぶ炎が照らす空と、悔しげな沖田と悲しみに暮れる夢主を順に目にして、改めて己に剣を振るう理由を言い聞かせていた。
決して何かに与して力を振るってはいけないと。
「行かなくて、良いのですか……沖田さん」
「えぇ、大丈夫です。僕は……貴女の傍を離れません」
決意を固めた沖田は揺ぎない瞳を見せた。
共に伏見の炎が染める夜空を見る夢主、その視線の先で斎藤達は今も戦っていた。
明るいうちに山中から撤退したものの、伏見奉行所では新選組隊士達が会津藩兵らと共に士気を込めた声を張り上げ、開かれた門から突撃を開始していた。
しかしその進撃を阻んで無情に打ち込まれる多数の大砲が、辺りを吹き飛ばし地面の形を変えていく。
落ちるだけの旧式の大砲に加え、新式の大砲は着弾すると間もなく破裂し、仲間達の体さえもバラバラにしてしまう。
砲撃の他にも止まらない無数の銃弾。
その弾丸の雨の中をかいくぐり、ようやく敵のもとへ辿り着いた少数の隊士が慣れた接近戦で力を発揮するも、辿り着く味方が少な過ぎた。数では到底及ばない。
幕府軍の銃による反撃に援護され、撤退するのがやっとだった。
「ちきしょう、大砲も銃も性能が違いすぎるぜ」
「土方さん、行きますか」
「いや、待て斎藤。今出て行っても的にされて終わりだ。ここは一度落ち着いて立て直すべきだ」
決死の突撃をする時ではないと土方が隊士達を止めた。
まずは厄介な大砲を止めなければ。その作戦を伝えている時、急に辺りが明るく照らされた。
「何だ!」
「火付けです!!回り込まれました!!」
砲撃に気を取られた隙をついて、薩摩の斥候が伏見奉行所に火を放ったのだ。
放たれた火は広がり、薩摩の兵士が追い打ちを掛けるように付け火をして回った。
闇に隠れ攻撃をしていた幕府軍は姿を曝け出され、向けられる銃器の格好の標的とされてしまった。
慌てて身を隠すが反撃するにはあまりに不利。
火はあっと言う間に奉行所をすっかり包み、全て燃やし尽くさん勢いで煙炎が広がり、暗い空を昇っていった。
「撤退だ!!淀城に向かう!!」
届いた指令に従い、斎藤をはじめとする新選組一同は淀を目指して移動を開始した。
せめて最後に一撃、そう思うが緋村は既に速攻の間合いの外に出ていた。
「無駄な争いは必要ない。お前の負けだ、斎藤」
「ふざけるな抜刀斎。貴様の息の根は必ず俺が止めてやる。それまでせいぜい生き延びるんだな」
フンと、悪態をつくと相手を見据えたまま顎を上げ、見下す視線を投げてから仲間に命令を下した。
まるで緋村がこれ以上斬りこんで来ないと確信があるような素振りで。
「新選組、撤退だ!!」
斎藤の一声で、必死の応戦を見せていた新選組の隊士達も敵の刃を弾き、懸命の撤退を始めた。
「緋村抜刀斎、いずれまた」
緋村の返事を待たず、斎藤は素早くその場から消え去った。
「斎藤一……また会う日がやって来るのか。新選組、一体どこまで……」
緋村は刃こぼれしている刀をじっくりと見つめた。
この刀でどれほどの人を殺めてきたのか。
今まで辛い宿命を共に背負ってくれた刀。
ここまで傷んでは人はもう斬れないだろう。
「使い物にはならぬか……新しい刀が、必要だな」
……いや、もう刀は必要ない……
もう役には立たない、人を斬り終えた刀を鞘に納め、戦いもあと少しと緋村もその場を立ち去った。
「斎藤一……また会う日がやって来るのか。新選組、一体どこまで……。夢主殿は、どうしているのか……」
緋村は刃こぼれしている刀をじっくりと確認した。
「使い物にはならぬか……新しい刀が、必要だな」
もう役には立たない、人を斬り終えた刀を鞘に収め、戦いはあと少しと緋村もその場を立ち去った。
伏見から離れた京の山では、夢主が何日も昼間の小屋で留守番を重ねていた。
だがある日、比古は夢主も沖田と共に滝がある岩場へと連れて行った。
理由は恐らく昨晩覗いた京の町、その向こうの空が恐ろしい赤黒色に見えたせいだ。
「あれは……」
夜、燃える空を目にした三人は、揃って目を見開いた。
本当にこんな日が来るとは、立ち尽くす沖田の拳は震えていた。自分がいない新選組、かつての仲間が戦っている。
比古は暗闇に浮かぶ炎が照らす空と、悔しげな沖田と悲しみに暮れる夢主を順に目にして、改めて己に剣を振るう理由を言い聞かせていた。
決して何かに与して力を振るってはいけないと。
「行かなくて、良いのですか……沖田さん」
「えぇ、大丈夫です。僕は……貴女の傍を離れません」
決意を固めた沖田は揺ぎない瞳を見せた。
共に伏見の炎が染める夜空を見る夢主、その視線の先で斎藤達は今も戦っていた。
明るいうちに山中から撤退したものの、伏見奉行所では新選組隊士達が会津藩兵らと共に士気を込めた声を張り上げ、開かれた門から突撃を開始していた。
しかしその進撃を阻んで無情に打ち込まれる多数の大砲が、辺りを吹き飛ばし地面の形を変えていく。
落ちるだけの旧式の大砲に加え、新式の大砲は着弾すると間もなく破裂し、仲間達の体さえもバラバラにしてしまう。
砲撃の他にも止まらない無数の銃弾。
その弾丸の雨の中をかいくぐり、ようやく敵のもとへ辿り着いた少数の隊士が慣れた接近戦で力を発揮するも、辿り着く味方が少な過ぎた。数では到底及ばない。
幕府軍の銃による反撃に援護され、撤退するのがやっとだった。
「ちきしょう、大砲も銃も性能が違いすぎるぜ」
「土方さん、行きますか」
「いや、待て斎藤。今出て行っても的にされて終わりだ。ここは一度落ち着いて立て直すべきだ」
決死の突撃をする時ではないと土方が隊士達を止めた。
まずは厄介な大砲を止めなければ。その作戦を伝えている時、急に辺りが明るく照らされた。
「何だ!」
「火付けです!!回り込まれました!!」
砲撃に気を取られた隙をついて、薩摩の斥候が伏見奉行所に火を放ったのだ。
放たれた火は広がり、薩摩の兵士が追い打ちを掛けるように付け火をして回った。
闇に隠れ攻撃をしていた幕府軍は姿を曝け出され、向けられる銃器の格好の標的とされてしまった。
慌てて身を隠すが反撃するにはあまりに不利。
火はあっと言う間に奉行所をすっかり包み、全て燃やし尽くさん勢いで煙炎が広がり、暗い空を昇っていった。
「撤退だ!!淀城に向かう!!」
届いた指令に従い、斎藤をはじめとする新選組一同は淀を目指して移動を開始した。