104.燃える夜空
夢主名前設定
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「違うんですよ新津さん、その話、詳しくお伝えしたいのですがここではちょっと……」
「師匠にお願いがあるんです」
師匠……沖田はえっと驚き荷物を抱えたまま夢主を見るが、目が合っても夢主は構わず話を続けた。
「師匠も京を離れるのですか」
「いや……京が荒れるのは分かっているが、山に兵士どもが来るまではあの小屋にいるつもりだ。せっかく作った窯があるしな。俺もその件でちょうど伝えたい話があったんだ。時間があるなら、少し登ってから行け」
比古の山小屋まで来いという誘い。
荷を預けたい二人は願ってもない話と、比古の後に続いた。
沖田が小屋まで登るのは初めてだ。以前夢主が匿われた時は決して教えられなかった場所。
今回は訪問を許された。自分もついに夢主と同じ立場に立ったのか、沖田は気を引き締めて山道を歩いた。
山小屋に着くと比古は外で今夜使う薪を持って来ると、一人小屋の脇に回った。
沖田は夢主の案内で中に入り、荷を降ろし、ふぅと一息吐いて辺りを見回した。
決して広くは無いが二人で寝泊りしても不足は無い広さ。夢主も安心して過ごせただろう。
飲み終えた酒瓶と茶碗が置きっ放しだが、他は小綺麗にされているのは比古の案外と真面目な性格か、部屋の状況から沖田は比古の内面を感じ取った。
「ここで……夢主ちゃんは過ごしていたんですね」
「はい」
小屋の中を見回した沖田は、ふらっと外に出て周囲を見回した。
澄んだ空気に豊かな緑、遠くには水の存在も感じる。
「いい場所ですね」
「だろうな、俺が見つけた場所だからな」
沖田の呟きに得意気に応えながら比古が脇を通り抜け、小屋の中に入って行った。沖田も慌てて中に引き返した。
「それで、何から話してもらおうか」
「えぇと……あの、まず!荷物を預かっていただけませんか!」
「荷物……」
沖田が抱えてきた荷に目をやり、再び戻すと質問した。
「旅に出るのか、夢主」
「はい」
夢主の隣に座った沖田も大きく頷いた。
「僕が夢主ちゃんを江戸まで無事に連れて行きます」
「お前が」
「はい。夢主ちゃん、新津さんは全てをご存知と見ました。違いますか」
「その通りです……」
「分かりました。ではそのつもりで……新津さんにお話します」
夢主に確認を取ると、沖田は比古に一つずつ伝えた。
自分が歴史から消える事、その歴史に従い姿を消す代わりに夢を叶える為にも江戸へ向かう事、時代と向き合い成すべき事を成そうとする斎藤に夢主を必ず守り抜くと誓った事を伝えた。
「成る程。つまりは沖田、いや井上か……面倒だな。ここでは沖田でいいだろう。沖田総司、お前は壬生狼を抜けたと、そういう訳だな」
「そういう事に……なります」
「そうか」
比古は嬉しそうに、満足した顔を沖田に向けた。
「それでいい、お前の選んだ道は正しい。沖田、お前が夢主を守り江戸へ連れて行くという話、よく分かった」
合点がいったと表情を和らげた比古に、二人も安堵した。
どんな反応を見せるか不安だったが、比古は二人の選択を認めてくれた。
「荷物なら部屋の隅にでも勝手に置いてくれ。俺は一向に構わんぞ。ただ俺がここを出る時があれば置いて行く。それでもいいのか」
「はい、少しでも荷物が残る可能性があるなら……」
「分かった。預かろう」
荷を無事預けられたら、後は一刻も早く京を出るべきか。顔を見合わせて立ち上がる二人を比古が制した。
「まぁ待て。そう急ぐ必要もあるまい。時に貴様、確か得意技は突きだったな」
「そうですが」
ぐっと沖田の体に力が入ったのが、隣りに座る夢主にも伝わった。
「フッ、警戒するな何もしねぇよ。おい、沖田。夢主の為にお前にいい事を教えてやる」
「いい事……」
「ここでは無理だ。ついて来い」
夢主と沖田は目を合わせて首を傾げるが、共に腰を上げた。
比古の言葉に従おう、悪いようにはならないはずだ。信じて小屋を出る比古を追った。
「師匠にお願いがあるんです」
師匠……沖田はえっと驚き荷物を抱えたまま夢主を見るが、目が合っても夢主は構わず話を続けた。
「師匠も京を離れるのですか」
「いや……京が荒れるのは分かっているが、山に兵士どもが来るまではあの小屋にいるつもりだ。せっかく作った窯があるしな。俺もその件でちょうど伝えたい話があったんだ。時間があるなら、少し登ってから行け」
比古の山小屋まで来いという誘い。
荷を預けたい二人は願ってもない話と、比古の後に続いた。
沖田が小屋まで登るのは初めてだ。以前夢主が匿われた時は決して教えられなかった場所。
今回は訪問を許された。自分もついに夢主と同じ立場に立ったのか、沖田は気を引き締めて山道を歩いた。
山小屋に着くと比古は外で今夜使う薪を持って来ると、一人小屋の脇に回った。
沖田は夢主の案内で中に入り、荷を降ろし、ふぅと一息吐いて辺りを見回した。
決して広くは無いが二人で寝泊りしても不足は無い広さ。夢主も安心して過ごせただろう。
飲み終えた酒瓶と茶碗が置きっ放しだが、他は小綺麗にされているのは比古の案外と真面目な性格か、部屋の状況から沖田は比古の内面を感じ取った。
「ここで……夢主ちゃんは過ごしていたんですね」
「はい」
小屋の中を見回した沖田は、ふらっと外に出て周囲を見回した。
澄んだ空気に豊かな緑、遠くには水の存在も感じる。
「いい場所ですね」
「だろうな、俺が見つけた場所だからな」
沖田の呟きに得意気に応えながら比古が脇を通り抜け、小屋の中に入って行った。沖田も慌てて中に引き返した。
「それで、何から話してもらおうか」
「えぇと……あの、まず!荷物を預かっていただけませんか!」
「荷物……」
沖田が抱えてきた荷に目をやり、再び戻すと質問した。
「旅に出るのか、夢主」
「はい」
夢主の隣に座った沖田も大きく頷いた。
「僕が夢主ちゃんを江戸まで無事に連れて行きます」
「お前が」
「はい。夢主ちゃん、新津さんは全てをご存知と見ました。違いますか」
「その通りです……」
「分かりました。ではそのつもりで……新津さんにお話します」
夢主に確認を取ると、沖田は比古に一つずつ伝えた。
自分が歴史から消える事、その歴史に従い姿を消す代わりに夢を叶える為にも江戸へ向かう事、時代と向き合い成すべき事を成そうとする斎藤に夢主を必ず守り抜くと誓った事を伝えた。
「成る程。つまりは沖田、いや井上か……面倒だな。ここでは沖田でいいだろう。沖田総司、お前は壬生狼を抜けたと、そういう訳だな」
「そういう事に……なります」
「そうか」
比古は嬉しそうに、満足した顔を沖田に向けた。
「それでいい、お前の選んだ道は正しい。沖田、お前が夢主を守り江戸へ連れて行くという話、よく分かった」
合点がいったと表情を和らげた比古に、二人も安堵した。
どんな反応を見せるか不安だったが、比古は二人の選択を認めてくれた。
「荷物なら部屋の隅にでも勝手に置いてくれ。俺は一向に構わんぞ。ただ俺がここを出る時があれば置いて行く。それでもいいのか」
「はい、少しでも荷物が残る可能性があるなら……」
「分かった。預かろう」
荷を無事預けられたら、後は一刻も早く京を出るべきか。顔を見合わせて立ち上がる二人を比古が制した。
「まぁ待て。そう急ぐ必要もあるまい。時に貴様、確か得意技は突きだったな」
「そうですが」
ぐっと沖田の体に力が入ったのが、隣りに座る夢主にも伝わった。
「フッ、警戒するな何もしねぇよ。おい、沖田。夢主の為にお前にいい事を教えてやる」
「いい事……」
「ここでは無理だ。ついて来い」
夢主と沖田は目を合わせて首を傾げるが、共に腰を上げた。
比古の言葉に従おう、悪いようにはならないはずだ。信じて小屋を出る比古を追った。