103.いつかの二人への旅立ち
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「荷物を預けるんだろう、鉄之助、運んでやれ」
夢主は残していけば確実に燃やされてしまうと考え、幾らかの持ち出せない荷物をどこかに預けられたらと考えていた。
その荷は抱えて運べはするが、なかなかの大きさだ。沖田が持ち運べは肝心な時に抜刀が遅れる。
「分かりました!少しですが、お供致します!」
「すみません、助かります」
鉄之助が荷を抱えると夢主は見守ってくれていた斎藤に体を向けた。
皆も同じ方向を向いている。
「おぉぅ、別れの接吻いっちまえよ!!」
「あぁもう文句は言わねぇぜ、がつんといっちまえ!!」
「もっ……みなさん!変なことを言わないでください!!」
囃し立てる男達に真っ赤な顔で言い返していると斎藤はクックと笑い、見ていた原田がその場を制した。
「まぁ、もうそれは済ませてきたって事だろう、なっ!斎藤」
「フン、どうとでも」
勝手に想像してくれと悪態をつくが、みんなの目は夢主の首筋に一点集中していた。
夢主はようやく斎藤が首に何をしたかを悟った。
痛くなかったか……
何やら強く唇を当て吸われている感覚がしたが、あれは斎藤が赤い証を残していたのだと気付き、首に手を添え斎藤を睨んだ。
「フッ、気付いてなかったのか」
紅潮した顔でむくれて上目で見てくる夢主が可愛く見えて仕方が無い。
斎藤は幹部連中をつと一瞥すると、夢主を腕の中に隠すように抱き込んだ。
ガチャリと着込みや刀の音が響き、夢主の胸がドクンと跳ねる。
「唇の操は確かに頂いた。今度はお前の全てを、俺のものに……」
腕の中で夢主がそっと顔を上げると、ぎらりと鋭い瞳を光らせながらも、優しい眼差しで斎藤が見下ろしていた。
「俺の全てを、お前のものに……忘れるな夢主」
「……はぃ、一さん……」
言い終えると、斎藤は皆に見えないよう羽織の袖で隠し、短く淡い口吸いをして離した。
夢主の姿が再び皆に晒された時、皆の視線に気付かず頬を染めて斎藤を見上げていた。
「何だよ斎藤!!」
何かあったのは明らかだが、何が起きたか見えなかったと周りの男達はやんやと騒ぐが、沖田は一人苦笑いでぼやいた。
「あぁ~あ、見せ付けてくれるなぁ」
「さぁ、俺達も行く時だ!」
これではきりが無いと歩み出た土方が出陣の時を告げる。
「夢主、行って来い」
土方に促されて皆に深く頭を下げ、斎藤と目を合わせて互いの姿を目に焼き付ける。
小さく頷き合い、屯所の外へ踏み出した。
後ろ髪を惹かれるとはこの事だ。
斎藤と繋がりを得たと感じた途端、本当に何かで結ばれて感じる。
体も心もひたすら斎藤に引き戻される思いで歩き始めた。
沖田と荷を抱えた鉄之助が共に歩いて行く。
姿が見えなくなる曲がり角、ちらり振り返ると、泣き出しそうな男達が手を振り、最後の別れを叫んでいた。
「……ふふっ」
込み上げる涙をぐっと堪えて屯所の門を見ると、斎藤が無事に旅立つのを確認するよう真っ直ぐこちらを見ていた。
夢主は小さくなった男達に深くお辞儀をしてから角を曲がった。
「大丈夫か、斎藤」
「えぇ。何のことは無い、ただの旅立ちです」
気遣いの言葉をかける土方に斎藤は平然と答え、今度は自分達の番だと隊列を整え始めた。
……つい先程まで触れていたあの髪の滑らかな感触……ようやく触れる事を許された唇……もう、手の届かない所に……
斎藤は拳を強く握ると、目の前に迫る戦場へと心を切り替えた。
「迷っていては辿り着けない。必ず……夢主」
不動堂村屯所で隊列を成す隊士達の前に立つ斎藤の顔は、これから起こる戦いに正義を貫かんと覚悟を決めた新選組幹部の顔になっていた。
その熱誠こもる迫力ある立ち姿に隊士達の肌が粟立つほどだった。
夢主は残していけば確実に燃やされてしまうと考え、幾らかの持ち出せない荷物をどこかに預けられたらと考えていた。
その荷は抱えて運べはするが、なかなかの大きさだ。沖田が持ち運べは肝心な時に抜刀が遅れる。
「分かりました!少しですが、お供致します!」
「すみません、助かります」
鉄之助が荷を抱えると夢主は見守ってくれていた斎藤に体を向けた。
皆も同じ方向を向いている。
「おぉぅ、別れの接吻いっちまえよ!!」
「あぁもう文句は言わねぇぜ、がつんといっちまえ!!」
「もっ……みなさん!変なことを言わないでください!!」
囃し立てる男達に真っ赤な顔で言い返していると斎藤はクックと笑い、見ていた原田がその場を制した。
「まぁ、もうそれは済ませてきたって事だろう、なっ!斎藤」
「フン、どうとでも」
勝手に想像してくれと悪態をつくが、みんなの目は夢主の首筋に一点集中していた。
夢主はようやく斎藤が首に何をしたかを悟った。
痛くなかったか……
何やら強く唇を当て吸われている感覚がしたが、あれは斎藤が赤い証を残していたのだと気付き、首に手を添え斎藤を睨んだ。
「フッ、気付いてなかったのか」
紅潮した顔でむくれて上目で見てくる夢主が可愛く見えて仕方が無い。
斎藤は幹部連中をつと一瞥すると、夢主を腕の中に隠すように抱き込んだ。
ガチャリと着込みや刀の音が響き、夢主の胸がドクンと跳ねる。
「唇の操は確かに頂いた。今度はお前の全てを、俺のものに……」
腕の中で夢主がそっと顔を上げると、ぎらりと鋭い瞳を光らせながらも、優しい眼差しで斎藤が見下ろしていた。
「俺の全てを、お前のものに……忘れるな夢主」
「……はぃ、一さん……」
言い終えると、斎藤は皆に見えないよう羽織の袖で隠し、短く淡い口吸いをして離した。
夢主の姿が再び皆に晒された時、皆の視線に気付かず頬を染めて斎藤を見上げていた。
「何だよ斎藤!!」
何かあったのは明らかだが、何が起きたか見えなかったと周りの男達はやんやと騒ぐが、沖田は一人苦笑いでぼやいた。
「あぁ~あ、見せ付けてくれるなぁ」
「さぁ、俺達も行く時だ!」
これではきりが無いと歩み出た土方が出陣の時を告げる。
「夢主、行って来い」
土方に促されて皆に深く頭を下げ、斎藤と目を合わせて互いの姿を目に焼き付ける。
小さく頷き合い、屯所の外へ踏み出した。
後ろ髪を惹かれるとはこの事だ。
斎藤と繋がりを得たと感じた途端、本当に何かで結ばれて感じる。
体も心もひたすら斎藤に引き戻される思いで歩き始めた。
沖田と荷を抱えた鉄之助が共に歩いて行く。
姿が見えなくなる曲がり角、ちらり振り返ると、泣き出しそうな男達が手を振り、最後の別れを叫んでいた。
「……ふふっ」
込み上げる涙をぐっと堪えて屯所の門を見ると、斎藤が無事に旅立つのを確認するよう真っ直ぐこちらを見ていた。
夢主は小さくなった男達に深くお辞儀をしてから角を曲がった。
「大丈夫か、斎藤」
「えぇ。何のことは無い、ただの旅立ちです」
気遣いの言葉をかける土方に斎藤は平然と答え、今度は自分達の番だと隊列を整え始めた。
……つい先程まで触れていたあの髪の滑らかな感触……ようやく触れる事を許された唇……もう、手の届かない所に……
斎藤は拳を強く握ると、目の前に迫る戦場へと心を切り替えた。
「迷っていては辿り着けない。必ず……夢主」
不動堂村屯所で隊列を成す隊士達の前に立つ斎藤の顔は、これから起こる戦いに正義を貫かんと覚悟を決めた新選組幹部の顔になっていた。
その熱誠こもる迫力ある立ち姿に隊士達の肌が粟立つほどだった。