102.約束の朝
夢主名前設定
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……理由があるとすれば、それはきっと、私が斎藤さんを……斎藤さんを好きだから……
「そんな哀しい顔をするな」
目を伏せる夢主を覗くように斎藤が呟いた。
「斎藤さんこそ、哀しい顔をしないでください」
「俺はそんな顔をしているか」
「しています……いつもみたいに目を吊り上げて、むすーっとしてください……怖いお顔で睨んでください……」
「フッ、お前落ち込んでいるのかと思ったら元気じゃないか」
「ふふっ……」
恥ずかしそうに斎藤を見つめ返すが否定はしなかった。
微笑み合う二人、斎藤は切なげに目を細めると静かに手を伸ばした。
そっと色づいた夢主の唇に触れる。
これで暫く距離を置く現実に、斎藤は焦燥にも似た熱を感じていた。
「今は……駄目か」
「……それは……」
口づけならば……夢主も斎藤と唇を重ねることを何度も思い描いてきた。
夢見るように、願っていた。
それでもきっと、それだけでは止まらない……そんな想いで互いに自分を抑えてきた。
「だって、それだけじゃ……終わらないって……」
「ならばどうだ」
斎藤は夢主の背に手を回すと、体を引き寄せた。
向かい合い座ったまま抱きしめる。
「これで我慢してやる。お前を強く想う……証が欲しい……か。……俺も馬鹿だな」
「斎藤さん……」
きっと斎藤にとっての弱音だったのだろう。
いくら剣腕が立ち戦いが好きであろうとも、気付いている。
今度の戦いは斬り合いの勝負ではなく、近代兵器による最早ただの殺戮戦争だと。
自らの剣の腕に関わり無く、命の遣り取りが行われるのだ。
自分は無事に戦いを生き抜けるのか、夢主は無事に身を隠せるのか、本当に迎えに行けるのか。
この想いが変わらぬまま戦を終えられるのか。
斎藤であっても不安を抱えていた。
「斎藤さん……」
ぎゅうと強く、夢主も抱きしめ返した。
激しい鼓動が自分のものなのか、相手のものなのか、互いにわからず、それでも強く抱きしめた。
斎藤の体の熱が、夜気に冷えた夢主の体を温める。二人の体の熱が同化していくようだ。
静かに抱きしめ合った後、斎藤がおもむろに体を離した。
夢主の手を掴むと、指先は未だ凍えていた。
「さぁ、何かが起こる前に布団に入れ」
「はぃ」
望まぬ夜でお前を傷つけたくは無い、そんな斎藤に優しく促され、夢主は赤らんだ顔のまま、はにかんで返事をした。
すっ……
布団に入ると、夢主はそっと斎藤の布団の中に手を伸ばし入れた。
「っ……」
驚く斎藤だが、夢主の手が自分の手を求めていると気付き、強く握り返してやった。
「こっ、今夜くらいは……いいですか」
恥ずかしそうに隣の布団から斎藤を覗く夢主の瞳がキラリと暗闇に光って見える。
「フッ……あぁ」
……人にお預け食わせておいて、いい度胸だぜ……
斎藤はひとりほくそ笑むが、そのまま手を離さなかった。
冬の空気に冷えたか細い指先が、愛おしくて堪らない。
明日になれば手放さなければならないこの指先、斎藤は温かい自らの手でしっかりと包んでやった。
「ゆっくり休め、夢主」
「はぃ、斎藤さん……おやすみなさい……」
「……おやすみ……だ」
「そんな哀しい顔をするな」
目を伏せる夢主を覗くように斎藤が呟いた。
「斎藤さんこそ、哀しい顔をしないでください」
「俺はそんな顔をしているか」
「しています……いつもみたいに目を吊り上げて、むすーっとしてください……怖いお顔で睨んでください……」
「フッ、お前落ち込んでいるのかと思ったら元気じゃないか」
「ふふっ……」
恥ずかしそうに斎藤を見つめ返すが否定はしなかった。
微笑み合う二人、斎藤は切なげに目を細めると静かに手を伸ばした。
そっと色づいた夢主の唇に触れる。
これで暫く距離を置く現実に、斎藤は焦燥にも似た熱を感じていた。
「今は……駄目か」
「……それは……」
口づけならば……夢主も斎藤と唇を重ねることを何度も思い描いてきた。
夢見るように、願っていた。
それでもきっと、それだけでは止まらない……そんな想いで互いに自分を抑えてきた。
「だって、それだけじゃ……終わらないって……」
「ならばどうだ」
斎藤は夢主の背に手を回すと、体を引き寄せた。
向かい合い座ったまま抱きしめる。
「これで我慢してやる。お前を強く想う……証が欲しい……か。……俺も馬鹿だな」
「斎藤さん……」
きっと斎藤にとっての弱音だったのだろう。
いくら剣腕が立ち戦いが好きであろうとも、気付いている。
今度の戦いは斬り合いの勝負ではなく、近代兵器による最早ただの殺戮戦争だと。
自らの剣の腕に関わり無く、命の遣り取りが行われるのだ。
自分は無事に戦いを生き抜けるのか、夢主は無事に身を隠せるのか、本当に迎えに行けるのか。
この想いが変わらぬまま戦を終えられるのか。
斎藤であっても不安を抱えていた。
「斎藤さん……」
ぎゅうと強く、夢主も抱きしめ返した。
激しい鼓動が自分のものなのか、相手のものなのか、互いにわからず、それでも強く抱きしめた。
斎藤の体の熱が、夜気に冷えた夢主の体を温める。二人の体の熱が同化していくようだ。
静かに抱きしめ合った後、斎藤がおもむろに体を離した。
夢主の手を掴むと、指先は未だ凍えていた。
「さぁ、何かが起こる前に布団に入れ」
「はぃ」
望まぬ夜でお前を傷つけたくは無い、そんな斎藤に優しく促され、夢主は赤らんだ顔のまま、はにかんで返事をした。
すっ……
布団に入ると、夢主はそっと斎藤の布団の中に手を伸ばし入れた。
「っ……」
驚く斎藤だが、夢主の手が自分の手を求めていると気付き、強く握り返してやった。
「こっ、今夜くらいは……いいですか」
恥ずかしそうに隣の布団から斎藤を覗く夢主の瞳がキラリと暗闇に光って見える。
「フッ……あぁ」
……人にお預け食わせておいて、いい度胸だぜ……
斎藤はひとりほくそ笑むが、そのまま手を離さなかった。
冬の空気に冷えたか細い指先が、愛おしくて堪らない。
明日になれば手放さなければならないこの指先、斎藤は温かい自らの手でしっかりと包んでやった。
「ゆっくり休め、夢主」
「はぃ、斎藤さん……おやすみなさい……」
「……おやすみ……だ」