102.約束の朝
夢主名前設定
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布団の上に座り込んだ二人は、今までのことを懐かしんで話し込んでしまった。
斎藤のもとを去ると決まってから、事ある毎に懐かしい話に花を咲かせてしまうのは仕方が無い。
夢主がつい昔話を口にすると、その度に斎藤は止めること無く新選組で共に過ごしたこの数年の話に付き合ってくれた。
明日で暫く会えなくなる。
もしかしたら最後になるのかもしれない、その想いは斎藤の方が強かった。
「夢主」
「はい」
「もし俺が迎えに来なかったらどうする」
「どぅ……それは、わからないです。……探しに行っちゃうかな」
「おいおい」
「だって……気になるじゃないですか」
「死んでるかもしれんぞ」
「それでも……確かめたいじゃないですか……」
「他に女が居たらどうする」
「それでも……きっと……あぁ、斎藤さんが生きてる……って。そう思えたらいいんです……」
言いながら俯く夢主に、本音ではないのだろうと斎藤が笑う。
「馬鹿だな」
「ふふっ……本当のことを話すと……斎藤さんについて行きたいけれど、出来ないんです。本当は行って欲しくないけど、止められないんです。……だって、斎藤さんにとって闘いが全て。それに掛替えのない人との出会いが……待ってるから……。歴史に名のない私が、斎藤さんの人生に入り込んじゃ駄目なんです……」
……でも……
なんと自分勝手な想いなのか、わかっているが、縋るような瞳で見つめてしまう。
「だからお願いです。ちゃんと、その方に会って来てください。もしかしたら……もしかしたら、本当に大切な人になるかもしれないお方です……きっとお綺麗で、賢くて、優しくて……」
……でも……叶うなら、私を選んで欲しい……迎えに、来て欲しい……
明治の世で斎藤が心から認めていた女性、きっと素敵な人なのだろう。
夢主がその姿を思い描き目を伏せていると、ふっと斎藤の手が背中に回り、体が近づいた。
「わかった」
「はぃ……」
己の顔を隠すように夢主を深く抱きしめて伝える斎藤。夢主の鼓動が徐々に速まっていく。
斎藤はゆるっと腕の力を抜くと夢主の手首を掴み、ゆっくりと押し倒した。
とても愛おしそうに夢主を見つめている。
……こうまで出来ても、駄目なのか……俺はお前がいてくれたならば、それで良いというのに……
斎藤は夢主が緊張で体を強張らせ、目を潤ませるさまを見下ろした。
顔は離れているが、今すぐにでも夢主の全てを愛してしまいたい、そんな想いが斎藤の瞳から溢れている。
「ごめんなさい……」
小さく漏れた声に、斎藤はフッと息を吐くように笑い、力を緩めた。
「フッ、仕方がないな。……こんなにお預けを食わされるとは思わなかったぜ」
「そんなつもりでは……」
ゆっくり手首を離して拘束を解き、体を起き上がらせてやり、ニヤリと笑った。
「お前は我が儘だな」
「そうです……私、我が儘です……全部私の我が儘なんです……」
「おい」
軽い冗談で口にした我が儘という言葉で、心から落ち込んでしまう夢主に斎藤は慌てた。
「だって、時尾さんに会ってきて欲しいっていうのも私の我が儘なんです。じゃないと私……ずっと気にしちゃう……時尾さんと出会っていれば、斎藤さんはもっと幸せになれたんじゃないか……大切な何かを邪魔してしまったんじゃ……きっと、ずっとそんな思いを抱えてしまうから……」
「そんな事は無い。では、お前が俺の前に現れたのは何故だ、俺の部屋に留まったのは何故だ。きっと全てに理由があるはずだ」
「理由……」
「あぁ。定めと言われても俺は否定せん」
そんな事まで言ってくれる斎藤に、夢主の胸は熱くなっていく。
斎藤のもとを去ると決まってから、事ある毎に懐かしい話に花を咲かせてしまうのは仕方が無い。
夢主がつい昔話を口にすると、その度に斎藤は止めること無く新選組で共に過ごしたこの数年の話に付き合ってくれた。
明日で暫く会えなくなる。
もしかしたら最後になるのかもしれない、その想いは斎藤の方が強かった。
「夢主」
「はい」
「もし俺が迎えに来なかったらどうする」
「どぅ……それは、わからないです。……探しに行っちゃうかな」
「おいおい」
「だって……気になるじゃないですか」
「死んでるかもしれんぞ」
「それでも……確かめたいじゃないですか……」
「他に女が居たらどうする」
「それでも……きっと……あぁ、斎藤さんが生きてる……って。そう思えたらいいんです……」
言いながら俯く夢主に、本音ではないのだろうと斎藤が笑う。
「馬鹿だな」
「ふふっ……本当のことを話すと……斎藤さんについて行きたいけれど、出来ないんです。本当は行って欲しくないけど、止められないんです。……だって、斎藤さんにとって闘いが全て。それに掛替えのない人との出会いが……待ってるから……。歴史に名のない私が、斎藤さんの人生に入り込んじゃ駄目なんです……」
……でも……
なんと自分勝手な想いなのか、わかっているが、縋るような瞳で見つめてしまう。
「だからお願いです。ちゃんと、その方に会って来てください。もしかしたら……もしかしたら、本当に大切な人になるかもしれないお方です……きっとお綺麗で、賢くて、優しくて……」
……でも……叶うなら、私を選んで欲しい……迎えに、来て欲しい……
明治の世で斎藤が心から認めていた女性、きっと素敵な人なのだろう。
夢主がその姿を思い描き目を伏せていると、ふっと斎藤の手が背中に回り、体が近づいた。
「わかった」
「はぃ……」
己の顔を隠すように夢主を深く抱きしめて伝える斎藤。夢主の鼓動が徐々に速まっていく。
斎藤はゆるっと腕の力を抜くと夢主の手首を掴み、ゆっくりと押し倒した。
とても愛おしそうに夢主を見つめている。
……こうまで出来ても、駄目なのか……俺はお前がいてくれたならば、それで良いというのに……
斎藤は夢主が緊張で体を強張らせ、目を潤ませるさまを見下ろした。
顔は離れているが、今すぐにでも夢主の全てを愛してしまいたい、そんな想いが斎藤の瞳から溢れている。
「ごめんなさい……」
小さく漏れた声に、斎藤はフッと息を吐くように笑い、力を緩めた。
「フッ、仕方がないな。……こんなにお預けを食わされるとは思わなかったぜ」
「そんなつもりでは……」
ゆっくり手首を離して拘束を解き、体を起き上がらせてやり、ニヤリと笑った。
「お前は我が儘だな」
「そうです……私、我が儘です……全部私の我が儘なんです……」
「おい」
軽い冗談で口にした我が儘という言葉で、心から落ち込んでしまう夢主に斎藤は慌てた。
「だって、時尾さんに会ってきて欲しいっていうのも私の我が儘なんです。じゃないと私……ずっと気にしちゃう……時尾さんと出会っていれば、斎藤さんはもっと幸せになれたんじゃないか……大切な何かを邪魔してしまったんじゃ……きっと、ずっとそんな思いを抱えてしまうから……」
「そんな事は無い。では、お前が俺の前に現れたのは何故だ、俺の部屋に留まったのは何故だ。きっと全てに理由があるはずだ」
「理由……」
「あぁ。定めと言われても俺は否定せん」
そんな事まで言ってくれる斎藤に、夢主の胸は熱くなっていく。