102.約束の朝
夢主名前設定
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「あの~、僕の話だったんですけど……」
「あっ、す、すみませんっ!沖っ……じゃなくて、その、そっ……総司……さん」
「ははっ、きっとすぐ慣れますよ。まぁ人前でなければ沖田でも構いませんが、慣れないとボロが出ちゃいますからね」
「そ……総司さん……」
慣れない呼び方にどぎまぎして瞬きが速くなる夢主を、男三人は面白がって見守っている。
「斎藤さんもしっかりとお役目を果たしてくださいよ!」
「君に言われなくとも果たして見せるさ」
土方は沖田に揶揄される斎藤の肩に手を置いて耳元で囁いた。
「一番大事な女を一番信頼できる男に預けて、はい終い……とはいかねぇぞ、斎藤」
「フッ、預けはしても、終わらせはしませんよ」
「そうか、そいつは安心だ。必ずあいつを迎えに行ってやれよ、じゃねぇと早々に身を引いた俺が救われねぇだろう」
「土方さん……分かりました。副長にはまだまだ逆らえませんね」
「残念だったな、まぁお互い様だ!」
土方の声に斎藤はフッと返して腰を上げ、それに続き沖田と夢主も腰を上げるが、夢主がつと土方に向き直った。
「あの……」
「どうした夢主」
「土方さんと二人でお話が……少しだけ、よろしいでしょうか」
斎藤と土方は互いの目を見て首を縦に動かし、斎藤と沖田は夢主を部屋に残して出て行った。
障子がぴたりと閉ざされ、残った夢主は土方にある進言を始めた。
「永倉さんの奥さん、体を壊されているのをご存知ですか」
「何っ」
「やっぱりご存知なかったのですね……産後の肥立ちが悪くて新選組出陣の前に亡くなるんです。恐らくは今夜か、もしかしたら昨夜既に……永倉さん、それでもここを離れずにいるんです。お願いします土方さんっ!」
「……」
「私から最後のお願いです!どうか、みなさんに最後の時間を……お別れの時間を作ってあげてください!お願いしますっ、どうか……このままじゃ、永倉さんのお子さんも、赤ちゃんも……死んじゃいます。原田さんのお子さんだってまだお腹に……」
涙を湛えたまま土方を見据え離さない夢主、その気迫に土方は圧されていた。
自分はこれから始まる戦に向け決意を固めている。心残りは無い。
しかし目の前の女は、どうも周りの男達が気になって仕方が無いようだ。
何故それほどまでに周りを気に掛ける、自分自身の望みは無いのか。
土方は顔を緩めて夢主を見つめた。
「……分かった。俺は何も知らなかったんだな。俺は……馬鹿だな、皆が俺と同じ訳じゃねぇんだ。忘れてたぜ、すまない夢主、お前に泣いて教えられるまで気付かないとは、副長失格だな」
「そんな……」
「フッ、ありがとよ」
土方は傍に控える小姓に幹部を集めさせ、伝令を出すことにした。
その様子を夢主は土方の前に座ったまま黙って見守った。
「あっ、す、すみませんっ!沖っ……じゃなくて、その、そっ……総司……さん」
「ははっ、きっとすぐ慣れますよ。まぁ人前でなければ沖田でも構いませんが、慣れないとボロが出ちゃいますからね」
「そ……総司さん……」
慣れない呼び方にどぎまぎして瞬きが速くなる夢主を、男三人は面白がって見守っている。
「斎藤さんもしっかりとお役目を果たしてくださいよ!」
「君に言われなくとも果たして見せるさ」
土方は沖田に揶揄される斎藤の肩に手を置いて耳元で囁いた。
「一番大事な女を一番信頼できる男に預けて、はい終い……とはいかねぇぞ、斎藤」
「フッ、預けはしても、終わらせはしませんよ」
「そうか、そいつは安心だ。必ずあいつを迎えに行ってやれよ、じゃねぇと早々に身を引いた俺が救われねぇだろう」
「土方さん……分かりました。副長にはまだまだ逆らえませんね」
「残念だったな、まぁお互い様だ!」
土方の声に斎藤はフッと返して腰を上げ、それに続き沖田と夢主も腰を上げるが、夢主がつと土方に向き直った。
「あの……」
「どうした夢主」
「土方さんと二人でお話が……少しだけ、よろしいでしょうか」
斎藤と土方は互いの目を見て首を縦に動かし、斎藤と沖田は夢主を部屋に残して出て行った。
障子がぴたりと閉ざされ、残った夢主は土方にある進言を始めた。
「永倉さんの奥さん、体を壊されているのをご存知ですか」
「何っ」
「やっぱりご存知なかったのですね……産後の肥立ちが悪くて新選組出陣の前に亡くなるんです。恐らくは今夜か、もしかしたら昨夜既に……永倉さん、それでもここを離れずにいるんです。お願いします土方さんっ!」
「……」
「私から最後のお願いです!どうか、みなさんに最後の時間を……お別れの時間を作ってあげてください!お願いしますっ、どうか……このままじゃ、永倉さんのお子さんも、赤ちゃんも……死んじゃいます。原田さんのお子さんだってまだお腹に……」
涙を湛えたまま土方を見据え離さない夢主、その気迫に土方は圧されていた。
自分はこれから始まる戦に向け決意を固めている。心残りは無い。
しかし目の前の女は、どうも周りの男達が気になって仕方が無いようだ。
何故それほどまでに周りを気に掛ける、自分自身の望みは無いのか。
土方は顔を緩めて夢主を見つめた。
「……分かった。俺は何も知らなかったんだな。俺は……馬鹿だな、皆が俺と同じ訳じゃねぇんだ。忘れてたぜ、すまない夢主、お前に泣いて教えられるまで気付かないとは、副長失格だな」
「そんな……」
「フッ、ありがとよ」
土方は傍に控える小姓に幹部を集めさせ、伝令を出すことにした。
その様子を夢主は土方の前に座ったまま黙って見守った。