102.約束の朝
夢主名前設定
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土方と斎藤、沖田の三人が残り、遅れて呼ばれた夢主が一人やって来た。
夢主は土方へ挨拶を済まるつもりでやって来たが、それだけではないと感じた。
廊下ですれ違う幹部の面々が、ただならぬ様子で声を掛けてきたからだ。
「夢主……お前江戸に……」
「総司が一緒なら安心だな……」
様々に声を掛けてくれるが、一様に驚きと戸惑いを隠しきれていない。
更には皆が背負う張り詰めた空気や覚悟を決めた表情から、大きな戦を前に最後の話し合いが行われたのが分かった。
土方達を待たせるわけにもいかず、返事もそこそこに夢主は先を急いだ。
「夢主、座れ」
部屋に入ると、夢主は土方に指示され戸惑いながら腰を下ろした。斎藤は横に、沖田は向かいに座る。
沖田から話があるのか、斎藤を見上げると小さく頷いて「そうだ」と教えられた。
「僕は今日から……井上総司と名乗ります。源さんにも近藤さんにもお話はしてあります」
「井上……」
唐突な沖田の知らせ。出てきたばかりの新しい名前を繰り返した。
「どうしてですか、沖田さん」
「ふふっ、お話しましょう、僕の新しい門出です」
沖田は新選組幹部としての人生を終え、新たに一剣客として夢主と共に江戸に向かい新しい人生を始めると、改名の理由を説明した。
共に行動する夢主にはよく理解し、協力してもらわねばなるまい。
「本当は近藤って名乗りたいところですけど、さすがにバレバレですからね、試衛館を継ぐ訳でもありませんし。親戚筋の源さんからならいいかな~と、お借りしちゃいました。あははっ」
「井上さん……沖田さんに向かってなんだか呼びにくいです。沖田さんって呼んでしまいそうで」
「それでは困りますね。改名した意味がなくなっちゃいますから。ねぇ、……総司って……呼んでもらえませんか」
「え」
夢主は驚きのあまり、願い出た沖田ではなく斎藤の顔を見上げてしまった。
「構わんだろう、確かに沖田の名は危険だ。井上だろうが総司だろうが馴染みやすい名で呼べばよい」
「斎藤さん……あの、……はっ……一さん!」
「なっ」
「斎藤さんも、一さんと呼んでも……よろしいですかっ」
沖田を総司と呼ぶならば、斎藤も下の名で一と呼びたい。
夢主は交換条件のように願った。そばでは土方が可笑しそうに声を潜めて肩を揺らしている。
呼ばれた当の本人、斎藤は咄嗟のことに眉間に皺を寄せていた。
「っく、……好きにしろ。もう暫く呼ばれることも無くなるがな」
「はっ……はい!ふふっ……一さん……」
戸惑いながらも認めてくれた斎藤を嬉しく思い、笑みが溢れる。
「俺の名を忘れるなよ」
ニッ……口元を歪める斎藤に微笑み返すが、別れを示唆する言葉に夢主の目頭が熱くなった。
「ふふっ、忘れるわけがありません」
泣き顔を見せぬよう笑顔を保つ夢主のそばで、沖田は頭を掻いた。笑顔を取り繕って二人を見ている。
夢主は土方へ挨拶を済まるつもりでやって来たが、それだけではないと感じた。
廊下ですれ違う幹部の面々が、ただならぬ様子で声を掛けてきたからだ。
「夢主……お前江戸に……」
「総司が一緒なら安心だな……」
様々に声を掛けてくれるが、一様に驚きと戸惑いを隠しきれていない。
更には皆が背負う張り詰めた空気や覚悟を決めた表情から、大きな戦を前に最後の話し合いが行われたのが分かった。
土方達を待たせるわけにもいかず、返事もそこそこに夢主は先を急いだ。
「夢主、座れ」
部屋に入ると、夢主は土方に指示され戸惑いながら腰を下ろした。斎藤は横に、沖田は向かいに座る。
沖田から話があるのか、斎藤を見上げると小さく頷いて「そうだ」と教えられた。
「僕は今日から……井上総司と名乗ります。源さんにも近藤さんにもお話はしてあります」
「井上……」
唐突な沖田の知らせ。出てきたばかりの新しい名前を繰り返した。
「どうしてですか、沖田さん」
「ふふっ、お話しましょう、僕の新しい門出です」
沖田は新選組幹部としての人生を終え、新たに一剣客として夢主と共に江戸に向かい新しい人生を始めると、改名の理由を説明した。
共に行動する夢主にはよく理解し、協力してもらわねばなるまい。
「本当は近藤って名乗りたいところですけど、さすがにバレバレですからね、試衛館を継ぐ訳でもありませんし。親戚筋の源さんからならいいかな~と、お借りしちゃいました。あははっ」
「井上さん……沖田さんに向かってなんだか呼びにくいです。沖田さんって呼んでしまいそうで」
「それでは困りますね。改名した意味がなくなっちゃいますから。ねぇ、……総司って……呼んでもらえませんか」
「え」
夢主は驚きのあまり、願い出た沖田ではなく斎藤の顔を見上げてしまった。
「構わんだろう、確かに沖田の名は危険だ。井上だろうが総司だろうが馴染みやすい名で呼べばよい」
「斎藤さん……あの、……はっ……一さん!」
「なっ」
「斎藤さんも、一さんと呼んでも……よろしいですかっ」
沖田を総司と呼ぶならば、斎藤も下の名で一と呼びたい。
夢主は交換条件のように願った。そばでは土方が可笑しそうに声を潜めて肩を揺らしている。
呼ばれた当の本人、斎藤は咄嗟のことに眉間に皺を寄せていた。
「っく、……好きにしろ。もう暫く呼ばれることも無くなるがな」
「はっ……はい!ふふっ……一さん……」
戸惑いながらも認めてくれた斎藤を嬉しく思い、笑みが溢れる。
「俺の名を忘れるなよ」
ニッ……口元を歪める斎藤に微笑み返すが、別れを示唆する言葉に夢主の目頭が熱くなった。
「ふふっ、忘れるわけがありません」
泣き顔を見せぬよう笑顔を保つ夢主のそばで、沖田は頭を掻いた。笑顔を取り繕って二人を見ている。