101.新月の光
夢主名前設定
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「月を見ていたのですか」
「はい、斎藤さんの……沖田さんもご存知ですよね、斎藤さんの瞳が月明かりで変わること。明日はきっと新月です。どんな色付きをするのかなって考えてたんです」
「そうでしたか。夢主ちゃんはいつでも斎藤さんを見ていますもんね」
「あっ、あの……」
沖田に伝える話では無かったと気付くが、当の本人はにこやかに夢主を見つめていた。
「気にしないでください」
「沖田さん……」
目の前に立ち、にこりと微笑む沖田の顔に斎藤の言葉を思い出した。
確かに沖田ほど信頼できる人物はいない。江戸への道中、隣にいてくれたらどれ程心強いか。
斎藤よりも低い位置にある沖田の顔を眺め、これからの行く末に思い馳せていると、不意に冷たい空気に晒されていた体が、ふわりと暖かく包まれた。
「あの……」
「僕もそろそろ……自分の気持ちに区切りをつけないと、いけないなと思って」
「それで、これですか……沖田さん」
沖田はそっと夢主を腕に抱いていた。
「ふふっ、ごめんね。少しだけ……いいかな」
「沖田さん……」
やがて腕に力が加わり、夢主は沖田の体にしっかりと抱きしめられた。
何か思い巡らしているのだろう、沖田は黙ったまま夢主の存在をただ腕の中に感じているようだ。
されるがまま、抱擁を許した夢主は時が経つのを待った。
沖田がこれ以上何かを望んでいるように感じなかったからだ。
「好きでした……ずっと……」
自分の想いを辿るように囁く沖田、このままにしていては壊れてしまう何か。
遠ざかって消えてしまうくらいなら、自分でこの気持ちに区切りをつけよう。
沖田は心の中で自らにそう語りかけた。
暫くして、そっと離れた沖田の顔は穏やかで温かいものだった。
「僕を信じてくれて、ありがとう。何に変えても守り抜くよ、必ず。斎藤さんが迎えに来るまでね」
「沖田さん……」
沖田は夢主への気持ちにけじめを付けた。
斎藤の幸せの為、自分を犠牲にして戻らないかもしれない彼を待つなんて……そう考えもした。
だが、そんな気持ちも理解出来た。沖田自身もただ夢主の幸せを願い、傍にいたいのだから。
斎藤は想いを告げた。沖田にしてみればようやくだ。
それは夢主の待ち望んだこと。
例え夢主の目が自分に向いていなくとも傍に控えて守り抜く、自らに誓った想いだ。
「ははっ!悔しいけれど、あの人以外に夢主ちゃんを渡したくありません。斎藤さん以外に、貴女を幸せに出来る人はいないでしょう」
「沖田さん……どうして……」
自分を見つめる優しい眼差しに言葉が詰まる。
誰よりも愛おしんで、全てを投げうって自分の為に動いてくれる人。
誠実で、この人に泣かされたことは一度もない。泣く場所を与えてくれたことはあっても、辛い感情を与えられたことは無かった。
いつでも優しく見守り、時に力を貸してくれた。
これからも全力で助けると申し出てくれている。
「どうして沖田さんを好きに……好きにならなかったのかと、自分で自分を恨みます……こんなに……優しくて、真っ直ぐで……」
「それを僕に言うなんて、僕も恨んじゃいますよ」
気持ちに整理をつけようという自分には酷な言葉だと苦笑いするしかない。
声にならず、謝る代わりに何度も頷く夢主。
沖田の苦笑いはすぐに優しい微笑みに変わった。
「傍に居させてください、僕の一番の我が儘です」
自分の我が儘なのだから、貴女は気にしなくて良い。沖田の優しさに夢主の胸はますます苦しくなる。
同時に、言葉にならない嬉しさが込み上げてきた。
これが沖田総司、優しさと慈しみに満ちた情愛の剣士……夢主は顔を上げて沖田に応えた。
「はぃっ……お願い、します……江戸まで……一緒に……」
「ははっ、泣かないでよ……大丈夫だから」
……ふふっ、泣きたいのは僕ですよ……
目を拭い始めた夢主をそっと見守ると、夢主は必死に言葉を続けようと唇を動かした。
「ありがとうございます……ありがとぅ……」
「……うん」
沖田は小さく泣き出した夢主の肩に手を置き、そっとなだめた。
「はい、斎藤さんの……沖田さんもご存知ですよね、斎藤さんの瞳が月明かりで変わること。明日はきっと新月です。どんな色付きをするのかなって考えてたんです」
「そうでしたか。夢主ちゃんはいつでも斎藤さんを見ていますもんね」
「あっ、あの……」
沖田に伝える話では無かったと気付くが、当の本人はにこやかに夢主を見つめていた。
「気にしないでください」
「沖田さん……」
目の前に立ち、にこりと微笑む沖田の顔に斎藤の言葉を思い出した。
確かに沖田ほど信頼できる人物はいない。江戸への道中、隣にいてくれたらどれ程心強いか。
斎藤よりも低い位置にある沖田の顔を眺め、これからの行く末に思い馳せていると、不意に冷たい空気に晒されていた体が、ふわりと暖かく包まれた。
「あの……」
「僕もそろそろ……自分の気持ちに区切りをつけないと、いけないなと思って」
「それで、これですか……沖田さん」
沖田はそっと夢主を腕に抱いていた。
「ふふっ、ごめんね。少しだけ……いいかな」
「沖田さん……」
やがて腕に力が加わり、夢主は沖田の体にしっかりと抱きしめられた。
何か思い巡らしているのだろう、沖田は黙ったまま夢主の存在をただ腕の中に感じているようだ。
されるがまま、抱擁を許した夢主は時が経つのを待った。
沖田がこれ以上何かを望んでいるように感じなかったからだ。
「好きでした……ずっと……」
自分の想いを辿るように囁く沖田、このままにしていては壊れてしまう何か。
遠ざかって消えてしまうくらいなら、自分でこの気持ちに区切りをつけよう。
沖田は心の中で自らにそう語りかけた。
暫くして、そっと離れた沖田の顔は穏やかで温かいものだった。
「僕を信じてくれて、ありがとう。何に変えても守り抜くよ、必ず。斎藤さんが迎えに来るまでね」
「沖田さん……」
沖田は夢主への気持ちにけじめを付けた。
斎藤の幸せの為、自分を犠牲にして戻らないかもしれない彼を待つなんて……そう考えもした。
だが、そんな気持ちも理解出来た。沖田自身もただ夢主の幸せを願い、傍にいたいのだから。
斎藤は想いを告げた。沖田にしてみればようやくだ。
それは夢主の待ち望んだこと。
例え夢主の目が自分に向いていなくとも傍に控えて守り抜く、自らに誓った想いだ。
「ははっ!悔しいけれど、あの人以外に夢主ちゃんを渡したくありません。斎藤さん以外に、貴女を幸せに出来る人はいないでしょう」
「沖田さん……どうして……」
自分を見つめる優しい眼差しに言葉が詰まる。
誰よりも愛おしんで、全てを投げうって自分の為に動いてくれる人。
誠実で、この人に泣かされたことは一度もない。泣く場所を与えてくれたことはあっても、辛い感情を与えられたことは無かった。
いつでも優しく見守り、時に力を貸してくれた。
これからも全力で助けると申し出てくれている。
「どうして沖田さんを好きに……好きにならなかったのかと、自分で自分を恨みます……こんなに……優しくて、真っ直ぐで……」
「それを僕に言うなんて、僕も恨んじゃいますよ」
気持ちに整理をつけようという自分には酷な言葉だと苦笑いするしかない。
声にならず、謝る代わりに何度も頷く夢主。
沖田の苦笑いはすぐに優しい微笑みに変わった。
「傍に居させてください、僕の一番の我が儘です」
自分の我が儘なのだから、貴女は気にしなくて良い。沖田の優しさに夢主の胸はますます苦しくなる。
同時に、言葉にならない嬉しさが込み上げてきた。
これが沖田総司、優しさと慈しみに満ちた情愛の剣士……夢主は顔を上げて沖田に応えた。
「はぃっ……お願い、します……江戸まで……一緒に……」
「ははっ、泣かないでよ……大丈夫だから」
……ふふっ、泣きたいのは僕ですよ……
目を拭い始めた夢主をそっと見守ると、夢主は必死に言葉を続けようと唇を動かした。
「ありがとうございます……ありがとぅ……」
「……うん」
沖田は小さく泣き出した夢主の肩に手を置き、そっとなだめた。