101.新月の光
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「斎藤さん、いいんですか、そんなことを言ってしまって」
「フッ、構わんさ。ただし、どれほど想い合おうが俺は夢主に会いに行き、必ずその心を奪い去るからな。その覚悟はしておけよ」
「あはははっ、そいつは酷いなっ!ははっ、斎藤さんてば、どうせそうはならないと自信があるのでしょう、厭らしいなぁもう!」
「フン、女の心は移ろい易いと言うくらいだ、俺だって覚悟はしているさ。だが……諦めはしない」
「はいはい、それを夢主ちゃんに聞かせてあげてくださいよ」
沖田が足を崩して体を揺らしながら笑い始めると、斎藤は気まずそうに呟いた。
「……あぁ」
「斎藤さん?」
「まぁ、それとなくだな」
「……えぇっ!!もしかして……夢主ちゃんに……告げたのですか、お気持ちを……」
沖田は揺らしていた体を止めると、斎藤の顔を覗き込みながら小声で訊ねた。
斎藤は余り見せない表情を作り、目を逸らして小さく顔を動かした。
「えぇえええっ!……それは……」
沖田は体を仰け反らせ、斎藤の珍しい表情に目を丸くするが、事実を受け入れようと自らを諭した。
想う相手に心を伝えるのは自然な行動。戦が始まる前なら尚更。
それにこれは、ずっと皆が待っていた事。
「いえ、考えれば……夢主ちゃんには、いいことですね、そうですか、斎藤さんが……ははっ」
伏し目がちに呟くが、吹っ切ったように大きく頷いて斎藤に晴れやかな顔を向けた。
大好きな人の一番の望みがやっと叶ったのだ、喜んで受け入れようと覚悟した沖田は、にこやかな微笑みに溢れていた。
見ている周りがどれ程やきもきさせられたか、長い長い回り道だった。
ようやく斎藤はぐるぐる回るのを止めたのだ。
「夢主ちゃんのこと、安心して任せてください」
「恩に着る」
「もう、水臭いなぁ……はははっ」
沖田の誠実な優しさに斎藤も思わずフッと小さく笑みを零した。
「では、僕は今度こそ土方さんに報告してきます」
「あぁ、頼んだ」
沖田との話を終えると斎藤はすぐに戻り、夢主にも話の内容を伝えた。
「沖田君に伝えた。お前をよろしく頼むと……俺の大事な女を頼むとな」
「さっ、斎藤さん」
「フン、彼なら安心して任せられる。誰よりも信頼できる男だ。剣の腕も、男としても」
「はぃ……」
彼ならお前を泣かせることは一切しないと言い切れる。沖田への信頼が籠った言葉は、斎藤の男らしさも伝わってくる。
夢主が真っ赤な顔で応えると、斎藤は満足して隊務に出て行った。
俺の大事な女、初めて聞かされた嬉しくて恥ずかしい言葉に、夢主は暫く固まっていた。
夜の巡察。新選組に戻った斎藤は以前と同じように幹部として仕事に就いている。
もう少しでそれぞれの道に進むのだ、出来れば毎夜とも同じ時を過ごし、顔を見ておやすみを告げたかった。
「新月の夜は居てくれるのかな、斎藤さん、自分で見てみろって言ったんだもん……」
瞳の色を確かめてみろ、あれは確かな約束なのだろうか。
夢主は夜空から殆ど消えている月に目を向けた。
「明日かな……新月」
「夢主ちゃんっ」
「わぁっ、沖田さんっ!」
縁側でひとり佇む夢主のそばに、気付けば沖田が立っていた。
「びっくりしました、沖田さんは巡察に出ないのですか」
「僕は病の身ですから、ははっ」
「あ、そっか……そうですね。そうでした……」
「ははっ、何だか申し訳ないです」
歴史に従い土方の流した策に乗り、労咳を装い殆どを屯所で過ごしている。
時々土方や近藤のそばに控えて特別警護に当たるが、斎藤と共に巡察に出る夜は、斎藤が戻ってから数える程もなかった。
「フッ、構わんさ。ただし、どれほど想い合おうが俺は夢主に会いに行き、必ずその心を奪い去るからな。その覚悟はしておけよ」
「あはははっ、そいつは酷いなっ!ははっ、斎藤さんてば、どうせそうはならないと自信があるのでしょう、厭らしいなぁもう!」
「フン、女の心は移ろい易いと言うくらいだ、俺だって覚悟はしているさ。だが……諦めはしない」
「はいはい、それを夢主ちゃんに聞かせてあげてくださいよ」
沖田が足を崩して体を揺らしながら笑い始めると、斎藤は気まずそうに呟いた。
「……あぁ」
「斎藤さん?」
「まぁ、それとなくだな」
「……えぇっ!!もしかして……夢主ちゃんに……告げたのですか、お気持ちを……」
沖田は揺らしていた体を止めると、斎藤の顔を覗き込みながら小声で訊ねた。
斎藤は余り見せない表情を作り、目を逸らして小さく顔を動かした。
「えぇえええっ!……それは……」
沖田は体を仰け反らせ、斎藤の珍しい表情に目を丸くするが、事実を受け入れようと自らを諭した。
想う相手に心を伝えるのは自然な行動。戦が始まる前なら尚更。
それにこれは、ずっと皆が待っていた事。
「いえ、考えれば……夢主ちゃんには、いいことですね、そうですか、斎藤さんが……ははっ」
伏し目がちに呟くが、吹っ切ったように大きく頷いて斎藤に晴れやかな顔を向けた。
大好きな人の一番の望みがやっと叶ったのだ、喜んで受け入れようと覚悟した沖田は、にこやかな微笑みに溢れていた。
見ている周りがどれ程やきもきさせられたか、長い長い回り道だった。
ようやく斎藤はぐるぐる回るのを止めたのだ。
「夢主ちゃんのこと、安心して任せてください」
「恩に着る」
「もう、水臭いなぁ……はははっ」
沖田の誠実な優しさに斎藤も思わずフッと小さく笑みを零した。
「では、僕は今度こそ土方さんに報告してきます」
「あぁ、頼んだ」
沖田との話を終えると斎藤はすぐに戻り、夢主にも話の内容を伝えた。
「沖田君に伝えた。お前をよろしく頼むと……俺の大事な女を頼むとな」
「さっ、斎藤さん」
「フン、彼なら安心して任せられる。誰よりも信頼できる男だ。剣の腕も、男としても」
「はぃ……」
彼ならお前を泣かせることは一切しないと言い切れる。沖田への信頼が籠った言葉は、斎藤の男らしさも伝わってくる。
夢主が真っ赤な顔で応えると、斎藤は満足して隊務に出て行った。
俺の大事な女、初めて聞かされた嬉しくて恥ずかしい言葉に、夢主は暫く固まっていた。
夜の巡察。新選組に戻った斎藤は以前と同じように幹部として仕事に就いている。
もう少しでそれぞれの道に進むのだ、出来れば毎夜とも同じ時を過ごし、顔を見ておやすみを告げたかった。
「新月の夜は居てくれるのかな、斎藤さん、自分で見てみろって言ったんだもん……」
瞳の色を確かめてみろ、あれは確かな約束なのだろうか。
夢主は夜空から殆ど消えている月に目を向けた。
「明日かな……新月」
「夢主ちゃんっ」
「わぁっ、沖田さんっ!」
縁側でひとり佇む夢主のそばに、気付けば沖田が立っていた。
「びっくりしました、沖田さんは巡察に出ないのですか」
「僕は病の身ですから、ははっ」
「あ、そっか……そうですね。そうでした……」
「ははっ、何だか申し訳ないです」
歴史に従い土方の流した策に乗り、労咳を装い殆どを屯所で過ごしている。
時々土方や近藤のそばに控えて特別警護に当たるが、斎藤と共に巡察に出る夜は、斎藤が戻ってから数える程もなかった。