100.最初で最後の想い
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「江戸で、斎藤さんを待ってます……我が儘なのは分かっています、でも……迎えに来てください……会いに来るだけじゃ……嫌です……」
泣き出しそうな夢主に、斎藤は慈しむような優しい顔を見せた。
震えそうな体に手を伸ばし包んでやりたい、もうそれ以上言わなくても大丈夫だと唇を塞いでしまいたい。
そんな気持ちを堪えて斎藤は口を開いた。
「昼間、いいことを教えてやると言っただろう」
夢主が頷くと、斎藤はゆっくり視線を月に戻した。
夢主は目を離せずにその瞳を追っている。
「これほどに、誰かに惚れたことは無かった……」
「……ぇ……」
黄金色の瞳が刹那に夢主を捉える。
斎藤はすぐに月夜に目を戻した。
「誰かを愛おしく想う……恐らく、最初で最後だ……夢主」
「斎藤さん……」
斎藤は夢主の顔を横目で見た後、咳払いをして再び顔を背けた。
夢主は斎藤の言葉を受け、真っ赤な顔に染まっている。
呆けるように斎藤を見つめている。
「さぁ、酒が残っているぞ」
「あの……」
斎藤が必死に顔を逸らしているのは恥ずかしさ故、そして抱きしめてしまわないよう、己の熱い衝動を抑える為。
返事はするな、されては困る、抑えが効かなくなる……
夢主は無意識に斎藤の意思を悟り、黙ってその姿を見つめた。
しかし返事を求められても、夢主は声を出せなかった。
耳まで赤く染まって固まっている。指の先まで痺れたように動かない。
すぅっ……と吹きぬける夜風に、ようやく寒空の下で月を肴に酒を楽しんでいる今を思い出した。
目を合わさぬよう斎藤が猪口を手に取ると夢主は正気に戻り、黙って酒を注いだ。
未だ感情が先走り、夢主の手先が震えている。
上気しそうな自分を必死に堪えているのか、斎藤もはにかんだように僅かに頬を緩ませていた。
真っ直ぐ前を向いたまま一気に酒を流し込むと再び夢主に猪口を向けた。
「必ず迎えに行ってやる、だからお前も、頑張るんだな」
「……はいっ」
夢主の頬を伝う雫が月光を反射し、きらりと輝いて落ちていった。
止まらない涙をそのままに酌を続けると、斎藤はそっと顔を覗き、指先でそれを拭ってやった。
「阿呆ぅ……酒に入るぞ」
「はぃっ……ふふっ……」
夢主は幸せに染まった顔を上げて微笑んだ。
斎藤ですら頬を染めてしまう程の、幸せの色に。
冷たい冬の月夜の下、夢主の小さな温かい笑い声と気恥ずかしそうな斎藤の低く諭す声が、静かに重なって響いた。
泣き出しそうな夢主に、斎藤は慈しむような優しい顔を見せた。
震えそうな体に手を伸ばし包んでやりたい、もうそれ以上言わなくても大丈夫だと唇を塞いでしまいたい。
そんな気持ちを堪えて斎藤は口を開いた。
「昼間、いいことを教えてやると言っただろう」
夢主が頷くと、斎藤はゆっくり視線を月に戻した。
夢主は目を離せずにその瞳を追っている。
「これほどに、誰かに惚れたことは無かった……」
「……ぇ……」
黄金色の瞳が刹那に夢主を捉える。
斎藤はすぐに月夜に目を戻した。
「誰かを愛おしく想う……恐らく、最初で最後だ……夢主」
「斎藤さん……」
斎藤は夢主の顔を横目で見た後、咳払いをして再び顔を背けた。
夢主は斎藤の言葉を受け、真っ赤な顔に染まっている。
呆けるように斎藤を見つめている。
「さぁ、酒が残っているぞ」
「あの……」
斎藤が必死に顔を逸らしているのは恥ずかしさ故、そして抱きしめてしまわないよう、己の熱い衝動を抑える為。
返事はするな、されては困る、抑えが効かなくなる……
夢主は無意識に斎藤の意思を悟り、黙ってその姿を見つめた。
しかし返事を求められても、夢主は声を出せなかった。
耳まで赤く染まって固まっている。指の先まで痺れたように動かない。
すぅっ……と吹きぬける夜風に、ようやく寒空の下で月を肴に酒を楽しんでいる今を思い出した。
目を合わさぬよう斎藤が猪口を手に取ると夢主は正気に戻り、黙って酒を注いだ。
未だ感情が先走り、夢主の手先が震えている。
上気しそうな自分を必死に堪えているのか、斎藤もはにかんだように僅かに頬を緩ませていた。
真っ直ぐ前を向いたまま一気に酒を流し込むと再び夢主に猪口を向けた。
「必ず迎えに行ってやる、だからお前も、頑張るんだな」
「……はいっ」
夢主の頬を伝う雫が月光を反射し、きらりと輝いて落ちていった。
止まらない涙をそのままに酌を続けると、斎藤はそっと顔を覗き、指先でそれを拭ってやった。
「阿呆ぅ……酒に入るぞ」
「はぃっ……ふふっ……」
夢主は幸せに染まった顔を上げて微笑んだ。
斎藤ですら頬を染めてしまう程の、幸せの色に。
冷たい冬の月夜の下、夢主の小さな温かい笑い声と気恥ずかしそうな斎藤の低く諭す声が、静かに重なって響いた。