100.最初で最後の想い
夢主名前設定
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夢主は誰かをじっと見つめては目を伏せて、悲しそうに手元の酒を見つめている。
視線の先の人物がそう遠くないうち、死に遭遇するのだと勘付いた。
そして土方は夢主を見つめるうち、自らも哀しげな瞳と目が合ってしまった。
「はははっ!」
……そうか、俺もか……
反射的に笑いが零れた。
厳しい宣告に、何故か胸のつかえが取れたような爽快さを感じる。
夢主はそれまでと同様に目を伏せる。見つめるその手が震えているようにも見えた。
斎藤と土方は一瞬視線が合った。
斎藤は傍で静かな夢主の視線を再確認する。
……間違いない、土方さんも……
斎藤が察した事実を覚悟した時、土方はいつの日か川沿いの道で夕影の中、夢主が耳元で告げてくれた約束を思い出していた。
「あぁ、そうだったな……」
精一杯背伸びをし、想いを寄せる男の前であんな嘘を……
土方は目を伏せてニヤリと口元を釣り上げた。
「あんな下らない嘘を付きやがって……その気も無いくせに……」
土方は顔を上げた。夢主を見つめる顔は淡い寂寥の想いで薄っすら笑んでいる。
こんな俺に強がりに満ちた優しさをくれた女。
「そうだ、あれが俺にとっては最初の死の報せだったな……フッ、今更何を」
土方は気を取り直して座敷の中を見回した。
酒が回り上機嫌な男達。世間から冷たい目で見られようが、厳しい隊規を守り義を貫いてここまで共に歩んでくれた男達。
「大事な仲間だ。こいつらを残して逝けるものか」
皆を動かす自分が命を失うわけにはいかない。
戦いの中、自ら旗印となり仲間を新時代へ導いてやる。土方は強く決意した。
やがて宴が進むと座敷を出て行く者も見え始めた。
「そろそろお前も部屋に戻るか、もう遅い」
ずっと周りを眺めて全く酒に手をつけない。
気遣われた夢主は素直に頷き猪口を置き、斎藤に伴われ座敷をあとにした。
「楽しくなかったか」
「いぃえ……久しぶりにみなさんの楽しそうな姿を見て、私も楽しかったです。でも……つい……」
「そうか」
部屋への道、夜空に顔を向ければ細い細い月が浮かんでいた。
か細くとも煌々と照る月はとても美しい。
「次の満月にはお前は去っているだろうな」
「斎藤さん……」
共に名月を楽しんだ夜、今となってはとても遠く懐かしい夜。
「夢主」
「はい」
「二人で……呑み直すか」
斎藤の問いに夢主は迷わず頷いた。
何も気にせず酒を楽しめるよう寝支度を整え、夢主は寝巻の上から綿入りの暖かい半纏を羽織った。
部屋の入り口に座り、障子を開いて眺める空はとても広い。
畳の上には盆が、斎藤が用意してくれた酒が乗っている。
冬の冷たい夜気も、風が吹き込まなければ耐えられた。
「本当に大きなお屋敷ですね」
「あぁ、大名屋敷のようだな」
フッと笑うと斎藤は不意に立ち上がり、部屋の奥から何かを手に戻ってきた。
視線の先の人物がそう遠くないうち、死に遭遇するのだと勘付いた。
そして土方は夢主を見つめるうち、自らも哀しげな瞳と目が合ってしまった。
「はははっ!」
……そうか、俺もか……
反射的に笑いが零れた。
厳しい宣告に、何故か胸のつかえが取れたような爽快さを感じる。
夢主はそれまでと同様に目を伏せる。見つめるその手が震えているようにも見えた。
斎藤と土方は一瞬視線が合った。
斎藤は傍で静かな夢主の視線を再確認する。
……間違いない、土方さんも……
斎藤が察した事実を覚悟した時、土方はいつの日か川沿いの道で夕影の中、夢主が耳元で告げてくれた約束を思い出していた。
「あぁ、そうだったな……」
精一杯背伸びをし、想いを寄せる男の前であんな嘘を……
土方は目を伏せてニヤリと口元を釣り上げた。
「あんな下らない嘘を付きやがって……その気も無いくせに……」
土方は顔を上げた。夢主を見つめる顔は淡い寂寥の想いで薄っすら笑んでいる。
こんな俺に強がりに満ちた優しさをくれた女。
「そうだ、あれが俺にとっては最初の死の報せだったな……フッ、今更何を」
土方は気を取り直して座敷の中を見回した。
酒が回り上機嫌な男達。世間から冷たい目で見られようが、厳しい隊規を守り義を貫いてここまで共に歩んでくれた男達。
「大事な仲間だ。こいつらを残して逝けるものか」
皆を動かす自分が命を失うわけにはいかない。
戦いの中、自ら旗印となり仲間を新時代へ導いてやる。土方は強く決意した。
やがて宴が進むと座敷を出て行く者も見え始めた。
「そろそろお前も部屋に戻るか、もう遅い」
ずっと周りを眺めて全く酒に手をつけない。
気遣われた夢主は素直に頷き猪口を置き、斎藤に伴われ座敷をあとにした。
「楽しくなかったか」
「いぃえ……久しぶりにみなさんの楽しそうな姿を見て、私も楽しかったです。でも……つい……」
「そうか」
部屋への道、夜空に顔を向ければ細い細い月が浮かんでいた。
か細くとも煌々と照る月はとても美しい。
「次の満月にはお前は去っているだろうな」
「斎藤さん……」
共に名月を楽しんだ夜、今となってはとても遠く懐かしい夜。
「夢主」
「はい」
「二人で……呑み直すか」
斎藤の問いに夢主は迷わず頷いた。
何も気にせず酒を楽しめるよう寝支度を整え、夢主は寝巻の上から綿入りの暖かい半纏を羽織った。
部屋の入り口に座り、障子を開いて眺める空はとても広い。
畳の上には盆が、斎藤が用意してくれた酒が乗っている。
冬の冷たい夜気も、風が吹き込まなければ耐えられた。
「本当に大きなお屋敷ですね」
「あぁ、大名屋敷のようだな」
フッと笑うと斎藤は不意に立ち上がり、部屋の奥から何かを手に戻ってきた。