100.最初で最後の想い
夢主名前設定
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「何でぃ、血相変えてよ」
「いえっ、お願いがあって参りました」
部屋に入るなり畏まって座わる沖田に、土方も緊張の面持ちで座り直す。
いつもなら笑いおどけて入ってくるものを、改まって背筋を伸ばす姿は尋常ならざる空気を醸し出した。
「一体どうした。夢主か、戻ったばかりだろう」
「そうなんです。夢主ちゃんのことで……土方さん!僕に、夢主ちゃんを江戸まで送り届けさせてください!!」
「なっ……」
突然深々と頭を下げる沖田に驚く間もなく、飛び出た言葉に土方は言葉を失った。
目を点にして、視界にある艶やかな髪に覆われた頭を呆然と眺めた。
「お前っ、何を……」
「以前お話したはずです。僕は既に歴史から消えている存在。そしてこれから大きな戦いが起きる。……そこに僕はいないと、夢主ちゃんに聞いています。それに、僕の夢」
「例の道場か。戦乱の世になるならば尚更難しいだろう」
「いえ、江戸で道場を持ちたいんです。いくらなんでも、戦は僕らの生きている間に治まるでしょう、そうしたらその時、江戸で……」
「江戸は戦地にならねぇのか」
「さぁ……僕もそこまでは聞いていません。でも夢主ちゃんが江戸に拘るのにはきっと理由があるのでしょう」
「そうだろうが……総司が江戸に」
土方は足を崩し、顎に手を添えて考え始めた。
「僕に特別任務を言いつけてください!お願いします!」
沖田は先程より深く頭を下げて声を張った。
畳に額が付くほど下げられた頭、決意が現れていた。
「任務か……そうだな。総司、療養で離隊……でも構わねぇぜ。そうすれば新選組のしがらみからも開放だ」
「しがらみだなんて」
新選組という居場所が大好きな沖田は、土方の否定的な言葉に悲しい顔をした。
しがらみではない、沖田にとって大切な居場所、絆を感じる人達がいる場所だ。
「いや、あいつを連れて出るのなら邪魔な肩書きだろう。時代の流れは悪い。いずれ新選組の沖田総司と言うだけで命を狙われる日がやって来る」
「はははっ、今でもそうですけどね!」
「フッ、違いねぇな」
総司が離脱か……
土方は口の中で呟いた。
「山南さんとの約束が、やっと果たせるぜ」
「土方さん……」
「旅銀は用立ててやる。例の商家からの金も残ってるしな、そっちの心配はいらねぇぞ」
「ははっ、心強いや!僕も貯め込んでいますからね、江戸に着いても住む場所には困りませんよ」
「フン、やるじゃねぇか」
金をつぎ込む女はおらず酒も程々。
自分の夢の為に地道に新選組での給金を貯めて、沖田は相当な蓄えを築いていた。
「俺も新しい武具を用立てておくか……籠手なんか、丁度いいな……」
……総司と夢主、二人同時に失うのは少しばかり淋しいぜ……
本音を隠して、土方は密かに進めていた戦支度を急ごうと決めた。
「いえっ、お願いがあって参りました」
部屋に入るなり畏まって座わる沖田に、土方も緊張の面持ちで座り直す。
いつもなら笑いおどけて入ってくるものを、改まって背筋を伸ばす姿は尋常ならざる空気を醸し出した。
「一体どうした。夢主か、戻ったばかりだろう」
「そうなんです。夢主ちゃんのことで……土方さん!僕に、夢主ちゃんを江戸まで送り届けさせてください!!」
「なっ……」
突然深々と頭を下げる沖田に驚く間もなく、飛び出た言葉に土方は言葉を失った。
目を点にして、視界にある艶やかな髪に覆われた頭を呆然と眺めた。
「お前っ、何を……」
「以前お話したはずです。僕は既に歴史から消えている存在。そしてこれから大きな戦いが起きる。……そこに僕はいないと、夢主ちゃんに聞いています。それに、僕の夢」
「例の道場か。戦乱の世になるならば尚更難しいだろう」
「いえ、江戸で道場を持ちたいんです。いくらなんでも、戦は僕らの生きている間に治まるでしょう、そうしたらその時、江戸で……」
「江戸は戦地にならねぇのか」
「さぁ……僕もそこまでは聞いていません。でも夢主ちゃんが江戸に拘るのにはきっと理由があるのでしょう」
「そうだろうが……総司が江戸に」
土方は足を崩し、顎に手を添えて考え始めた。
「僕に特別任務を言いつけてください!お願いします!」
沖田は先程より深く頭を下げて声を張った。
畳に額が付くほど下げられた頭、決意が現れていた。
「任務か……そうだな。総司、療養で離隊……でも構わねぇぜ。そうすれば新選組のしがらみからも開放だ」
「しがらみだなんて」
新選組という居場所が大好きな沖田は、土方の否定的な言葉に悲しい顔をした。
しがらみではない、沖田にとって大切な居場所、絆を感じる人達がいる場所だ。
「いや、あいつを連れて出るのなら邪魔な肩書きだろう。時代の流れは悪い。いずれ新選組の沖田総司と言うだけで命を狙われる日がやって来る」
「はははっ、今でもそうですけどね!」
「フッ、違いねぇな」
総司が離脱か……
土方は口の中で呟いた。
「山南さんとの約束が、やっと果たせるぜ」
「土方さん……」
「旅銀は用立ててやる。例の商家からの金も残ってるしな、そっちの心配はいらねぇぞ」
「ははっ、心強いや!僕も貯め込んでいますからね、江戸に着いても住む場所には困りませんよ」
「フン、やるじゃねぇか」
金をつぎ込む女はおらず酒も程々。
自分の夢の為に地道に新選組での給金を貯めて、沖田は相当な蓄えを築いていた。
「俺も新しい武具を用立てておくか……籠手なんか、丁度いいな……」
……総司と夢主、二人同時に失うのは少しばかり淋しいぜ……
本音を隠して、土方は密かに進めていた戦支度を急ごうと決めた。