99.油小路の辻に
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間違っても当事者に遭遇しないよう、現場と伝わる路地の隣の路を歩く。
比古に支えられる夢主、ふと何かを感じて歩みを止めた。
「もう始まってる……」
我を失った者の怒号や悲しみを抱えた叫びが耳に飛び込んできた。
刀がぶつかり合う音が絶え間なく響く。激しい戦闘が繰り広げられていた。
「待て、ここまでだ」
「……でも……」
路地を進み、もう少しで男達のせめぎ合う辻に……そんな場所で比古は夢主の体を掴んだ。
これ以上進めば巻き添えを食うかもしれない。
「もう少し……姿が見えるまで……」
「……どうなっても知らんぞ」
夢主の後ろに比古がぴたりと付いたまま、新選組の隊服が確認できる距離まで進んだ。
ここまで来ると知っている声は誰のものか認識できる。
それは数ヶ月ぶりに聞く原田と永倉の声だ。いつ以来か数えられないが、それでもはっきり聞き取れた。
やがてその聞き慣れた声が藤堂とぶつかっているのが分かる。
そこからは、夢主に届かない小声で話された。
「平助、俺が鍔迫り合いから体勢を崩す、その隙に逃げろ!逃げたって恥じゃねぇ、近藤さんも土方さんもお前が死ぬのを望んじゃいねぇ!」
「永倉さん……」
「今だっ!!」
「すまなぃっ……新八っぁん!!」
うおぁっ!!と吠えて力強く押す真似をして、そのまま前につんのめった永倉は地面に片膝を付いた。
藤堂がこの騒乱から去るのを見届けようと目を離さない。
だが次の瞬間、見慣れた隊服がふわりと翻り視界の中に飛び込んできた。
頭に血が上った平隊士が奇声を上げ、逃げんとする敵を止めようと刀を振りかざして追う。
「待てっ!!」
永倉は慌てて手を伸ばし反射的に叫ぶが、ここからでは防ぎようが無い。
夢主にも永倉の叫び声が届き、思わず体を乗り出した。
何が起きたのか確かめたい。だがその必要も無く、路地の隙間、先に広がる通りに見知った男の姿を捉えた。
走って来たのは藤堂。
飛び掛かってきた隊士に背中を斬られ、散る赤い飛沫が月明かりにきらきらと光りながら落ちていく。
夢主は目の前の光景に言葉を失った。
大きな目は驚きで更に広がり、声を出せずに口だけを微かに動かした。
……とう……どぅ……さん……
「こっ……こんのぉおおおお!!!!」
「逃げてぇえええっ!!!!」
怒りに震え、藤堂は刀を持つ手に力を込めて、立ち向かおうと雄叫びを上げる。
夢主は路地から叫んでいた。
「馬鹿野郎っ!!」
咄嗟に比古に口を塞がれ、男達に見つからない場所まで強制的に退去させられた。
「今……夢主の声が……」
「あぁ、俺にも聞こえた……確かに……」
永倉が地面に屈んだまま呆然と呟くと、原田が寄ってきて確認するよう呟く。
二人は道の先に目を向けるが、藤堂の姿も夢主の姿も確認出来なかった。
「平助は……どうなったんだ、逃げたのか……」
「分からねぇ……いや、死んだんだ。あいつはここで死んだ……見ろよ、切り刻まれてあちこちに体も衣も……これじゃぁどれだけ斬り殺したかも分からねぇ」
「分からねぇな……」
二人は少しの間、戦闘中であることを忘れて大事な仲間を想い、暗い道の先を見つめていた。
比古に支えられる夢主、ふと何かを感じて歩みを止めた。
「もう始まってる……」
我を失った者の怒号や悲しみを抱えた叫びが耳に飛び込んできた。
刀がぶつかり合う音が絶え間なく響く。激しい戦闘が繰り広げられていた。
「待て、ここまでだ」
「……でも……」
路地を進み、もう少しで男達のせめぎ合う辻に……そんな場所で比古は夢主の体を掴んだ。
これ以上進めば巻き添えを食うかもしれない。
「もう少し……姿が見えるまで……」
「……どうなっても知らんぞ」
夢主の後ろに比古がぴたりと付いたまま、新選組の隊服が確認できる距離まで進んだ。
ここまで来ると知っている声は誰のものか認識できる。
それは数ヶ月ぶりに聞く原田と永倉の声だ。いつ以来か数えられないが、それでもはっきり聞き取れた。
やがてその聞き慣れた声が藤堂とぶつかっているのが分かる。
そこからは、夢主に届かない小声で話された。
「平助、俺が鍔迫り合いから体勢を崩す、その隙に逃げろ!逃げたって恥じゃねぇ、近藤さんも土方さんもお前が死ぬのを望んじゃいねぇ!」
「永倉さん……」
「今だっ!!」
「すまなぃっ……新八っぁん!!」
うおぁっ!!と吠えて力強く押す真似をして、そのまま前につんのめった永倉は地面に片膝を付いた。
藤堂がこの騒乱から去るのを見届けようと目を離さない。
だが次の瞬間、見慣れた隊服がふわりと翻り視界の中に飛び込んできた。
頭に血が上った平隊士が奇声を上げ、逃げんとする敵を止めようと刀を振りかざして追う。
「待てっ!!」
永倉は慌てて手を伸ばし反射的に叫ぶが、ここからでは防ぎようが無い。
夢主にも永倉の叫び声が届き、思わず体を乗り出した。
何が起きたのか確かめたい。だがその必要も無く、路地の隙間、先に広がる通りに見知った男の姿を捉えた。
走って来たのは藤堂。
飛び掛かってきた隊士に背中を斬られ、散る赤い飛沫が月明かりにきらきらと光りながら落ちていく。
夢主は目の前の光景に言葉を失った。
大きな目は驚きで更に広がり、声を出せずに口だけを微かに動かした。
……とう……どぅ……さん……
「こっ……こんのぉおおおお!!!!」
「逃げてぇえええっ!!!!」
怒りに震え、藤堂は刀を持つ手に力を込めて、立ち向かおうと雄叫びを上げる。
夢主は路地から叫んでいた。
「馬鹿野郎っ!!」
咄嗟に比古に口を塞がれ、男達に見つからない場所まで強制的に退去させられた。
「今……夢主の声が……」
「あぁ、俺にも聞こえた……確かに……」
永倉が地面に屈んだまま呆然と呟くと、原田が寄ってきて確認するよう呟く。
二人は道の先に目を向けるが、藤堂の姿も夢主の姿も確認出来なかった。
「平助は……どうなったんだ、逃げたのか……」
「分からねぇ……いや、死んだんだ。あいつはここで死んだ……見ろよ、切り刻まれてあちこちに体も衣も……これじゃぁどれだけ斬り殺したかも分からねぇ」
「分からねぇな……」
二人は少しの間、戦闘中であることを忘れて大事な仲間を想い、暗い道の先を見つめていた。