98.絢爛と静寂の再会
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「やれやれ、京で出会う男は面倒な奴ばかりだな。あぁ、分かったよ。あるさ、もちろんな。だが……今はまだその時ではない」
「手前勝手な男だな」
眉根を寄せ睨みつける比古に負けじと斎藤も強い眼差しを返す。
「それはお互い様だ。俺はあいつを何度か誘って断られている」
「何だと。お前の誘い方が乱暴だったんじゃねぇか」
誘った過去があるとは驚きだが、あれほど慕い信頼しながら何度も断る夢主の行動も解せない。
「そんなはずはない」
「自信たっぷりだな」
「フン……理由があるんだよ、今は駄目だと」
「理由」
「あぁ。これから俺は妻となるべき女に会うらしい」
「そう言ったのか」
「はっきり言われた訳じゃないが、そうとしか捉えられない言い方だった。だからとっととその女に会ってしまえば、それでも夢主を選ぶとなれば、あいつは迷い無く心も体も許してくれる、ようだ」
斎藤は眉を上げながら他人事のように話し、空になった徳利を膳に戻した。
すぐに重たい徳利を取り、盃を満たす。
「まどろっこしいな」
「そいつは俺の台詞さ」
先程だってどれほど晒された白い首筋から、その着物の中へと手を滑り込ませたかったか。
比古を目障りと目の端に捉えながらも、自制心を働かせるきっかけになってくれる存在に感謝していた。
「面倒な話に付き合ってやったんだ、こっちの話にも付き合ってもらおうか」
「何だ、言ってみろ。ただし俺は……」
自らの力は丘の上の黒船、何かに加担してはならない絶対で最強の力。
比古が説明しようとするが斎藤はそれを必要としなかった。
「分かっている、夢主にも散々言われている。俺が頼みたいのは、あいつだ。先程もずっと同じ事を考えていたようだしな、きっとここを飛び出して藤堂を……新選組で世話になった男を助けようとするだろう」
「その話か。あいつの身を守る事ならば喜んで力を貸すさ」
「すまない」
「惚れた女へのせめてもの貸しさ」
「何か言ったか」
盃を口に近づけながら溢した比古の言葉、斎藤は確認するが、比古は何でも無いと酒を喉の奥へ一気に流し込んだ。
「いや、男二人の酒も案外と悪くないな。隣にあいつが寝ているせいか」
「……さぁな」
斎藤は夢主の眠る部屋の襖から視線を外すと、酒気漂う気だるい空気を流そうと格子窓を開いた。
途端に冷たい冬の夜風が吹き込み、斎藤の酔いを覚ましていく。細い格子の間から眺める月がいやに眩しい。
「月華の如く……」
小さな窓の隙間に納まるまいと、煌々と輝いている。
夜空に優美に佇む美しい月に息を呑んだ。
夢主の纏っていた大輪の華々は、さぞや月下に映えるだろう……
斎藤は寝床に消える前の夢主の姿を思い出した。
……あれほど華やかな着物にも負けない凜とした美しさは他には無かろう……あの華は何としても守らなければ……
「そういえばこんなにも美しいものだったな、月夜とは」
呟く斎藤の瞳は黄金色に染まり、力強い光を放っていた。
「手前勝手な男だな」
眉根を寄せ睨みつける比古に負けじと斎藤も強い眼差しを返す。
「それはお互い様だ。俺はあいつを何度か誘って断られている」
「何だと。お前の誘い方が乱暴だったんじゃねぇか」
誘った過去があるとは驚きだが、あれほど慕い信頼しながら何度も断る夢主の行動も解せない。
「そんなはずはない」
「自信たっぷりだな」
「フン……理由があるんだよ、今は駄目だと」
「理由」
「あぁ。これから俺は妻となるべき女に会うらしい」
「そう言ったのか」
「はっきり言われた訳じゃないが、そうとしか捉えられない言い方だった。だからとっととその女に会ってしまえば、それでも夢主を選ぶとなれば、あいつは迷い無く心も体も許してくれる、ようだ」
斎藤は眉を上げながら他人事のように話し、空になった徳利を膳に戻した。
すぐに重たい徳利を取り、盃を満たす。
「まどろっこしいな」
「そいつは俺の台詞さ」
先程だってどれほど晒された白い首筋から、その着物の中へと手を滑り込ませたかったか。
比古を目障りと目の端に捉えながらも、自制心を働かせるきっかけになってくれる存在に感謝していた。
「面倒な話に付き合ってやったんだ、こっちの話にも付き合ってもらおうか」
「何だ、言ってみろ。ただし俺は……」
自らの力は丘の上の黒船、何かに加担してはならない絶対で最強の力。
比古が説明しようとするが斎藤はそれを必要としなかった。
「分かっている、夢主にも散々言われている。俺が頼みたいのは、あいつだ。先程もずっと同じ事を考えていたようだしな、きっとここを飛び出して藤堂を……新選組で世話になった男を助けようとするだろう」
「その話か。あいつの身を守る事ならば喜んで力を貸すさ」
「すまない」
「惚れた女へのせめてもの貸しさ」
「何か言ったか」
盃を口に近づけながら溢した比古の言葉、斎藤は確認するが、比古は何でも無いと酒を喉の奥へ一気に流し込んだ。
「いや、男二人の酒も案外と悪くないな。隣にあいつが寝ているせいか」
「……さぁな」
斎藤は夢主の眠る部屋の襖から視線を外すと、酒気漂う気だるい空気を流そうと格子窓を開いた。
途端に冷たい冬の夜風が吹き込み、斎藤の酔いを覚ましていく。細い格子の間から眺める月がいやに眩しい。
「月華の如く……」
小さな窓の隙間に納まるまいと、煌々と輝いている。
夜空に優美に佇む美しい月に息を呑んだ。
夢主の纏っていた大輪の華々は、さぞや月下に映えるだろう……
斎藤は寝床に消える前の夢主の姿を思い出した。
……あれほど華やかな着物にも負けない凜とした美しさは他には無かろう……あの華は何としても守らなければ……
「そういえばこんなにも美しいものだったな、月夜とは」
呟く斎藤の瞳は黄金色に染まり、力強い光を放っていた。