98.絢爛と静寂の再会
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「それからもう一つ、お前ここに暫く滞在すると言ったな」
「あぁ」
「ならば俺も共に過ごそう。目付けだ」
比古の一言に斎藤は眉間に皺を寄せて苦い顔を見せるが、夢主はホッと胸を撫で下ろした。
「チッ……まぁいい」
「あの、ここに泊れるのですか」
「あぁ既に幾日か頼んである」
「大丈夫なのですか……その、お代は……」
「フッ、気にするな、伊東さんからたんまり預かったんでな」
「預かったって、まさか……ぁあ……」
斎藤一が御陵衛士の金を持ち出した、そんな話があったではないか。
夢主は丸くした目で辺りを見回し、斎藤の傍にある布袋を見つけた。
「そういうことだ」
ニッと笑う斎藤に夢主も降参だ。
他人の金を勝手に……説教しても無駄に終わるのが分かる。
諦めた夢主は代わりにひとつの願いを申し出た。
「白粉を落としたいです、髪も重たくて……首がおかしくなりそうです」
「そうか、似合っているが体を痛めては困る。仕方あるまい」
斎藤は人を呼び、夢主を隣の部屋に移動させた。
化粧と落とし、髷を取外して軽く髪を清める。
何重にも着せられた着物は脱がされ、店の者は緋色の襦袢、仕立ての良い小袖、そして先程よりは落ち着いた打ち掛けを羽織らせた。
再び二人の男の前に現れた夢主は、いつも通りの色づいた頬で恥ずかしげに微笑んでいた。
衣は普段より艶やかな装いで、何より日常で羽織る事の無い打ち掛けは、夢主をより麗しく優艶に彩っている。
遊女の如く体の前で結ばれた帯がなんともしがたい色を放っていた。
「ほぉ……何だか斎藤が憎らしくなってきたな」
目の前の夢主に見惚れた比古が呟くと、斎藤はフンと鼻をならした。
……新津は自分と夢主の関係が発展する事を願っているようだが、素直に受け入れたくない気持ちもあるようだ……
保護者気分と中年のやきもちか。
斎藤はそう推察し結論付けた。
「似合うぞ、夢主」
「あっ、ありがとうございます……でも、着物も普段の物にしてはいけませんか……」
「それくらいは俺に付き合え、祇園で遊ぶんだ。余興だよ」
ずるずると打ち掛けを引きずって歩き、二人から適度に離れて腰を下ろした。
「あぁ、実に似合う。これに関しては俺も斎藤に同意見だ」
「これでは休めません……休む場所はあるのですか」
「あぁ、ここは遊女を呼べる店だからな。床ならそこに」
斎藤が顎で示した先に襖があった。
夢主が着替えた部屋とは別の襖だ。その先に既に敷かれた布団がある。
……と言うことは……また……
いつの日か、壬生にいた頃に斎藤と茶屋で過ごした夜を思い出す。
あちこちから響く嬌声に耐えられず布団を頭からかぶった夜だ。
……あんな夜が、また……でも比古師匠もいてくれるし……
「休む時は邪魔な羽織を脱げばいいだろう」
襦袢姿で寝れば済む……言うのを止めて斎藤は小さく笑った。
「まぁ、気にするな。俺達はこっちの部屋で過ごすから、心配いらんさ」
「あぁ!俺がしっかり斎藤を見張るから心配するな」
「……それも心配です……仲良くしてくださいね……」
我の強い男同士、夢主の居ぬ間に喧嘩をしないでくれと願うばかりだ。
「寝るのはもう少し後だ、もっと酌をしろ」
「もぅ……」
むくれながらも夢主は斎藤の「こっちだ」という指示で隣りに腰を下ろした。
「酔ってるんですか、斎藤さん……」
「さぁな、お前らが来る前から呑んではいたが」
「俺もお前も底なしと見たがな」
手酌で勝手に酒を進める比古が笑った。
「あぁ」
「ならば俺も共に過ごそう。目付けだ」
比古の一言に斎藤は眉間に皺を寄せて苦い顔を見せるが、夢主はホッと胸を撫で下ろした。
「チッ……まぁいい」
「あの、ここに泊れるのですか」
「あぁ既に幾日か頼んである」
「大丈夫なのですか……その、お代は……」
「フッ、気にするな、伊東さんからたんまり預かったんでな」
「預かったって、まさか……ぁあ……」
斎藤一が御陵衛士の金を持ち出した、そんな話があったではないか。
夢主は丸くした目で辺りを見回し、斎藤の傍にある布袋を見つけた。
「そういうことだ」
ニッと笑う斎藤に夢主も降参だ。
他人の金を勝手に……説教しても無駄に終わるのが分かる。
諦めた夢主は代わりにひとつの願いを申し出た。
「白粉を落としたいです、髪も重たくて……首がおかしくなりそうです」
「そうか、似合っているが体を痛めては困る。仕方あるまい」
斎藤は人を呼び、夢主を隣の部屋に移動させた。
化粧と落とし、髷を取外して軽く髪を清める。
何重にも着せられた着物は脱がされ、店の者は緋色の襦袢、仕立ての良い小袖、そして先程よりは落ち着いた打ち掛けを羽織らせた。
再び二人の男の前に現れた夢主は、いつも通りの色づいた頬で恥ずかしげに微笑んでいた。
衣は普段より艶やかな装いで、何より日常で羽織る事の無い打ち掛けは、夢主をより麗しく優艶に彩っている。
遊女の如く体の前で結ばれた帯がなんともしがたい色を放っていた。
「ほぉ……何だか斎藤が憎らしくなってきたな」
目の前の夢主に見惚れた比古が呟くと、斎藤はフンと鼻をならした。
……新津は自分と夢主の関係が発展する事を願っているようだが、素直に受け入れたくない気持ちもあるようだ……
保護者気分と中年のやきもちか。
斎藤はそう推察し結論付けた。
「似合うぞ、夢主」
「あっ、ありがとうございます……でも、着物も普段の物にしてはいけませんか……」
「それくらいは俺に付き合え、祇園で遊ぶんだ。余興だよ」
ずるずると打ち掛けを引きずって歩き、二人から適度に離れて腰を下ろした。
「あぁ、実に似合う。これに関しては俺も斎藤に同意見だ」
「これでは休めません……休む場所はあるのですか」
「あぁ、ここは遊女を呼べる店だからな。床ならそこに」
斎藤が顎で示した先に襖があった。
夢主が着替えた部屋とは別の襖だ。その先に既に敷かれた布団がある。
……と言うことは……また……
いつの日か、壬生にいた頃に斎藤と茶屋で過ごした夜を思い出す。
あちこちから響く嬌声に耐えられず布団を頭からかぶった夜だ。
……あんな夜が、また……でも比古師匠もいてくれるし……
「休む時は邪魔な羽織を脱げばいいだろう」
襦袢姿で寝れば済む……言うのを止めて斎藤は小さく笑った。
「まぁ、気にするな。俺達はこっちの部屋で過ごすから、心配いらんさ」
「あぁ!俺がしっかり斎藤を見張るから心配するな」
「……それも心配です……仲良くしてくださいね……」
我の強い男同士、夢主の居ぬ間に喧嘩をしないでくれと願うばかりだ。
「寝るのはもう少し後だ、もっと酌をしろ」
「もぅ……」
むくれながらも夢主は斎藤の「こっちだ」という指示で隣りに腰を下ろした。
「酔ってるんですか、斎藤さん……」
「さぁな、お前らが来る前から呑んではいたが」
「俺もお前も底なしと見たがな」
手酌で勝手に酒を進める比古が笑った。