94.山での一日
夢主名前設定
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「まずは目……目は相手の刀の先だ。お前には危険が大きい。それに目を潰された相手はやみくもに刀を振り回すだろう。お前に危害が及ぶ確率が高くなる」
比古は構えた木の棒越しに夢主を見ている。
「次に刀を持つ腕か。これも狙うのは難しい」
比古は棒を振り下ろし目の前で止めた。
確かに腕は近いようで遠い場所にある。
「成功しても走って追いかけられてしまうし、仲間を呼びに走られてはお終いだ。かと言って腹にも飛び込めまい」
比古は一歩下がると再び上段の構えを見せた。
「ならば足だ。振り下ろされる刀を避けながら足を狙え。足を斬った後にすぐに走り去る心構えで狙うんだ」
「はっ……剣術で足元の攻撃を想定した流派は無い……聞いたことがあります!」
「そうだ。足元を狙うのは武士道にそぐわない、卑怯な打ち方だ。道場剣術では邪道とされるだろう。だがお前のいた新選組の連中は違うだろ」
夢主は大きく頷いた。
……実戦に於いて卑怯もへったくれもあるか、斬られたら負けだ、生き残ったほうが勝ちだ!……
そんな実戦を想定して剣術指南がされていた新選組。
使えるものは全て使え、剣を落とせば拳を構えろ。
あそこでは目潰しだって足元への攻撃だって、勝つ為の常套手段だった。
「お前が持ち歩けるのはせいぜい懐刀だろうが、斬る能力が備わっていれば可能性はある。危険だがそれだけを鍛えておけば役立つかもしれん」
「はい」
懐刀……短い刀を持ち歩く日がやってくるかもしれない。
夢主の背筋がぞくぞくとした。
「油断した奴なら剣の基本である頭上からの唐竹、もしくは右上からの袈裟斬りが多いだろう。右構えなのだから相手の左には入るなよ、刀が落ちてくるぞ。右足を狙い、そのまま相手の向こうに走り去れ。遠慮はいらん、やってみろ」
そう言うと比古は一旦構えを解いて夢主に短い棒を渡し、もう一度同じ場に立った。夢主が突進しやすいよう、気は抑えている。
「い……行きます」
空の手でゆっくり刀を振り下ろす真似をする比古の腕の下、思い切って体を落とし、右脛を木の棒で叩いて駆け抜けた。
「っ痛ってぇな!!いや、それでいい!かなりの力だな、思ったより痛かったぞ!」
「すみませんっ、思いっきりしないといけないと思って……」
「ははっ!まぁ正しいな、その調子で構わん。油断していただけだ」
咄嗟に叫んでしまった比古は自分こそ夢主を甘く見過ぎていたと笑うしかない。
次は体の筋肉をしっかり意識して夢主の一撃を受けた比古、顔色一つ変えず笑っていた。
「凄い!比古師匠さすがです……」
「フフッ、これくらいは朝飯前だ」
斎藤と違い比古には遠慮なく飛び込んでいける夢主、窯の温度が下がるまで暫く護身術の指南が続いた。
比古は毎日朝餉の前後どちらか、そして午後にも一度体を動かした。
そんな鍛錬の後に夢主の護身術を稽古するのが日課になった。
比古は構えた木の棒越しに夢主を見ている。
「次に刀を持つ腕か。これも狙うのは難しい」
比古は棒を振り下ろし目の前で止めた。
確かに腕は近いようで遠い場所にある。
「成功しても走って追いかけられてしまうし、仲間を呼びに走られてはお終いだ。かと言って腹にも飛び込めまい」
比古は一歩下がると再び上段の構えを見せた。
「ならば足だ。振り下ろされる刀を避けながら足を狙え。足を斬った後にすぐに走り去る心構えで狙うんだ」
「はっ……剣術で足元の攻撃を想定した流派は無い……聞いたことがあります!」
「そうだ。足元を狙うのは武士道にそぐわない、卑怯な打ち方だ。道場剣術では邪道とされるだろう。だがお前のいた新選組の連中は違うだろ」
夢主は大きく頷いた。
……実戦に於いて卑怯もへったくれもあるか、斬られたら負けだ、生き残ったほうが勝ちだ!……
そんな実戦を想定して剣術指南がされていた新選組。
使えるものは全て使え、剣を落とせば拳を構えろ。
あそこでは目潰しだって足元への攻撃だって、勝つ為の常套手段だった。
「お前が持ち歩けるのはせいぜい懐刀だろうが、斬る能力が備わっていれば可能性はある。危険だがそれだけを鍛えておけば役立つかもしれん」
「はい」
懐刀……短い刀を持ち歩く日がやってくるかもしれない。
夢主の背筋がぞくぞくとした。
「油断した奴なら剣の基本である頭上からの唐竹、もしくは右上からの袈裟斬りが多いだろう。右構えなのだから相手の左には入るなよ、刀が落ちてくるぞ。右足を狙い、そのまま相手の向こうに走り去れ。遠慮はいらん、やってみろ」
そう言うと比古は一旦構えを解いて夢主に短い棒を渡し、もう一度同じ場に立った。夢主が突進しやすいよう、気は抑えている。
「い……行きます」
空の手でゆっくり刀を振り下ろす真似をする比古の腕の下、思い切って体を落とし、右脛を木の棒で叩いて駆け抜けた。
「っ痛ってぇな!!いや、それでいい!かなりの力だな、思ったより痛かったぞ!」
「すみませんっ、思いっきりしないといけないと思って……」
「ははっ!まぁ正しいな、その調子で構わん。油断していただけだ」
咄嗟に叫んでしまった比古は自分こそ夢主を甘く見過ぎていたと笑うしかない。
次は体の筋肉をしっかり意識して夢主の一撃を受けた比古、顔色一つ変えず笑っていた。
「凄い!比古師匠さすがです……」
「フフッ、これくらいは朝飯前だ」
斎藤と違い比古には遠慮なく飛び込んでいける夢主、窯の温度が下がるまで暫く護身術の指南が続いた。
比古は毎日朝餉の前後どちらか、そして午後にも一度体を動かした。
そんな鍛錬の後に夢主の護身術を稽古するのが日課になった。