94.山での一日
夢主名前設定
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「まぁ、その話はどうでも良い。女を仕留めるのに、大の男が余裕を感じないと思うか、ほとんどの男がお前みたいな小さな女を相手にすれば油断する。お前はそこに付け込むべきなのさ」
比古は夢主に近付き体格の差を見せ付けた。
「だいたいの男が刀を大振りに上段から振り下ろすか、正面から力尽くで掴みにかかるだろう」
比古の大きく分厚い手が夢主に向かって伸びてきた。
「そのまま男の力を使って男を転がせ」
えっ……夢主は理解できずに首をひねった。
すると比古は夢主の腕を掴み、ころりとその場に転がした。
「わっ……」
「ふん、どうだ。一瞬だろう」
「はい……これ、斎藤さんにされたことがあります」
夢主はいつかの道場での稽古を思い出していた。
木刀で斎藤に打ち込んで行くと、見事に床に転がされたのだ。あっという間の出来事で何が起きたのか、斎藤に説明されるまで理解も出来なかった。
「そうか、お前に教えたかったんじゃないか」
「私に……」
「柔術の一つだな」
夢主は地べたに手をついたまま比古を見上げ、成る程と何度も首を縦に動かした。
「相手の勢いを利用すれば良いから、コツを掴めばお前でも出来るはずだ」
「はい」
「よく見て手首を掴みながら体を反転させる。そのまま抑えるように手首をひねり込め、相手の勢いのままに地面にねじ伏せるつもりでな」
「はい……」
比古は立ち上がった夢主の手首を掴み、ゆっくりと解説した。
そして次に自らの手首に手を添えさせると、自ら動いて手の動きを教えてやった。
「やってみろ」
「はい……でも比古師匠の手首凄く太くて……上手く力が入れられるか……」
「捻ればいい。遠慮するな」
夢主は頷くと力を込め、比古の手首をねじ込んだ。
「うむ、悪くは無い」
比古は体を捻るが、立ったまま耐えている。
「少し動きをつけるぞ」
そう言うと比古は一歩下がり、そこから腕を伸ばしてきた。
「掴め」
「はいっ」
比古の手首を掴み、体を反転させながら思いっきり手首をねじ込んだ。
「いいぞっ」
比古は僅かに嬉しそうな声を出し、体勢を崩して夢主を見た。
「暫く繰り返せ!」
「はいっ」
すっかりその気になった比古が稽古を続けると決め、夢主も懸命に同じ動きを繰り返した。
ある程度繰り返して満足したのか、比古が一度地面に背中を付いて転がり、この稽古は終わった。
「もうひとつ簡単に教えてやる」
「はい」
そう言うと比古は小屋に立てかけてあった木の棒を持ってきた。
「もし万一、手元に刃物があったならば急所を狙い時間を稼げ。そのまま受けては勝ち目はない」
「急所……」
比古は頷いて上段に構えて見せた。
比古は夢主に近付き体格の差を見せ付けた。
「だいたいの男が刀を大振りに上段から振り下ろすか、正面から力尽くで掴みにかかるだろう」
比古の大きく分厚い手が夢主に向かって伸びてきた。
「そのまま男の力を使って男を転がせ」
えっ……夢主は理解できずに首をひねった。
すると比古は夢主の腕を掴み、ころりとその場に転がした。
「わっ……」
「ふん、どうだ。一瞬だろう」
「はい……これ、斎藤さんにされたことがあります」
夢主はいつかの道場での稽古を思い出していた。
木刀で斎藤に打ち込んで行くと、見事に床に転がされたのだ。あっという間の出来事で何が起きたのか、斎藤に説明されるまで理解も出来なかった。
「そうか、お前に教えたかったんじゃないか」
「私に……」
「柔術の一つだな」
夢主は地べたに手をついたまま比古を見上げ、成る程と何度も首を縦に動かした。
「相手の勢いを利用すれば良いから、コツを掴めばお前でも出来るはずだ」
「はい」
「よく見て手首を掴みながら体を反転させる。そのまま抑えるように手首をひねり込め、相手の勢いのままに地面にねじ伏せるつもりでな」
「はい……」
比古は立ち上がった夢主の手首を掴み、ゆっくりと解説した。
そして次に自らの手首に手を添えさせると、自ら動いて手の動きを教えてやった。
「やってみろ」
「はい……でも比古師匠の手首凄く太くて……上手く力が入れられるか……」
「捻ればいい。遠慮するな」
夢主は頷くと力を込め、比古の手首をねじ込んだ。
「うむ、悪くは無い」
比古は体を捻るが、立ったまま耐えている。
「少し動きをつけるぞ」
そう言うと比古は一歩下がり、そこから腕を伸ばしてきた。
「掴め」
「はいっ」
比古の手首を掴み、体を反転させながら思いっきり手首をねじ込んだ。
「いいぞっ」
比古は僅かに嬉しそうな声を出し、体勢を崩して夢主を見た。
「暫く繰り返せ!」
「はいっ」
すっかりその気になった比古が稽古を続けると決め、夢主も懸命に同じ動きを繰り返した。
ある程度繰り返して満足したのか、比古が一度地面に背中を付いて転がり、この稽古は終わった。
「もうひとつ簡単に教えてやる」
「はい」
そう言うと比古は小屋に立てかけてあった木の棒を持ってきた。
「もし万一、手元に刃物があったならば急所を狙い時間を稼げ。そのまま受けては勝ち目はない」
「急所……」
比古は頷いて上段に構えて見せた。