94.山での一日
夢主名前設定
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「あの男はなかなか出来るぞ。剣もなかなか、礼儀も身の程もまぁ弁えている。俺に刃を向けなかったのは奴の賢い判断だ」
刀を抜こうと思ったが抜けなかった、沖田の話は本当だったのだ。
「それにあいつは哀しいほどにお前に尽くしているじゃねぇか。優しい男だ」
「そうですね……私も……沖田さんがお相手なら本当に幸せになれる気がします」
「だが、違う」
分かりきった答えだと比古は姿勢を変えて、空を仰ぎ見た。
「斎藤一……あれは苦労させられるぜ」
「そんなこと……斎藤さんだって優しいです。温かい人だし、とっても面白いんですよ」
「ははっ、あいつが愉快か。俺には人相の悪い無愛想な男にしか見えんがな」
「そうなんですよ!みなさんそう仰るんですけど、本当にお話していると楽しいんです!それに本当にお優しいんですから!冷たい人ってみなさん勝手な思い込みなんです」
熱を込めて語る夢主を比古はニヤニヤと見ている。
話し相手に想い人を認めてもらおうと必死な姿が何とも面白い。
「ははははっ!!分かった分かった!そんなに惚れているのか」
「惚っ……」
顔を歪めむぐっと口を閉じてしまうが、比古を見ていると、何故かこの人には正直に答えようと思ってしまう。
「そうです……大好きなんです……斎藤さんが」
「成る程な、今回の居候騒ぎもあいつのせいだな」
夢主は偽り無く頷いた。
「やれやれ、斎藤の野郎、いつか覚えていろよ」
「止めてくださいよっ、斎藤さんに変なことしないでください!」
「するか!冗談だよ、お前も面白い奴だ」
「もぉっ……比古師匠も何かお話してくださいよ」
「俺か、俺の話はいいさ」
「えぇっ、聞きたいですっ!」
「うむ……まぁ気が向いたら話してやろう。今はもう話は終いだ」
「人の話だけ聞いて……ずるいんですね」
「おいっ!」
不貞腐れた夢主はつい、手元の酒を一気に呑み干してしまった。
「ぁ……」
酒を流し込んだ本人もしまったと顔に表して後悔するが、遅かった。
「つぃ……」
「大丈夫か」
「はぃ……だいじょぅぶ……れす……」
段々声が小さくなり体が傾きだす。
比古は手を伸ばして猪口を回収し、夢主の体を支えた。
「やれやれだな、今宵は火を見るので動けんと言うのに、この居候は全く……」
比古は文句を言いながらも、この場に寝かせるわけにも行くまいとやむなく夢主を抱え上げた。
既に目を瞑ってしまった夢主は拒絶せず、大人しく比古の腕に収まった。
「呑気なもんだ」
「さぃ……と……さん……」
小屋に入ろうとした所で、比古は他の男の名を呼ばれピクリと反応した。
「ふん、別の男の名を呼ばれるとは俺も落ちたもんだな」
小屋に入るとそっと夢主を寝かせ、すぐに窯へ戻って酒を続けた。
「そんなに惚れているのか、斎藤一」
酒を口に含むと同時にバチンと火の中で大きく弾ける音がした。
刀を抜こうと思ったが抜けなかった、沖田の話は本当だったのだ。
「それにあいつは哀しいほどにお前に尽くしているじゃねぇか。優しい男だ」
「そうですね……私も……沖田さんがお相手なら本当に幸せになれる気がします」
「だが、違う」
分かりきった答えだと比古は姿勢を変えて、空を仰ぎ見た。
「斎藤一……あれは苦労させられるぜ」
「そんなこと……斎藤さんだって優しいです。温かい人だし、とっても面白いんですよ」
「ははっ、あいつが愉快か。俺には人相の悪い無愛想な男にしか見えんがな」
「そうなんですよ!みなさんそう仰るんですけど、本当にお話していると楽しいんです!それに本当にお優しいんですから!冷たい人ってみなさん勝手な思い込みなんです」
熱を込めて語る夢主を比古はニヤニヤと見ている。
話し相手に想い人を認めてもらおうと必死な姿が何とも面白い。
「ははははっ!!分かった分かった!そんなに惚れているのか」
「惚っ……」
顔を歪めむぐっと口を閉じてしまうが、比古を見ていると、何故かこの人には正直に答えようと思ってしまう。
「そうです……大好きなんです……斎藤さんが」
「成る程な、今回の居候騒ぎもあいつのせいだな」
夢主は偽り無く頷いた。
「やれやれ、斎藤の野郎、いつか覚えていろよ」
「止めてくださいよっ、斎藤さんに変なことしないでください!」
「するか!冗談だよ、お前も面白い奴だ」
「もぉっ……比古師匠も何かお話してくださいよ」
「俺か、俺の話はいいさ」
「えぇっ、聞きたいですっ!」
「うむ……まぁ気が向いたら話してやろう。今はもう話は終いだ」
「人の話だけ聞いて……ずるいんですね」
「おいっ!」
不貞腐れた夢主はつい、手元の酒を一気に呑み干してしまった。
「ぁ……」
酒を流し込んだ本人もしまったと顔に表して後悔するが、遅かった。
「つぃ……」
「大丈夫か」
「はぃ……だいじょぅぶ……れす……」
段々声が小さくなり体が傾きだす。
比古は手を伸ばして猪口を回収し、夢主の体を支えた。
「やれやれだな、今宵は火を見るので動けんと言うのに、この居候は全く……」
比古は文句を言いながらも、この場に寝かせるわけにも行くまいとやむなく夢主を抱え上げた。
既に目を瞑ってしまった夢主は拒絶せず、大人しく比古の腕に収まった。
「呑気なもんだ」
「さぃ……と……さん……」
小屋に入ろうとした所で、比古は他の男の名を呼ばれピクリと反応した。
「ふん、別の男の名を呼ばれるとは俺も落ちたもんだな」
小屋に入るとそっと夢主を寝かせ、すぐに窯へ戻って酒を続けた。
「そんなに惚れているのか、斎藤一」
酒を口に含むと同時にバチンと火の中で大きく弾ける音がした。