93.ひとときの さようなら
夢主名前設定
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「私闘?こいつぁ私闘じゃねぇよ、土方さん!!」
「だったらなんだ、あいつの身の振りは本人が決めるべきだ。斎藤が断り本人が納得したのならば仕方あるまい。周りが駄々をこねても夢主は喜ばねぇぞ。無理矢理ついていって幸せになれるのか」
土方の説得に舌打ちし、斎藤に怒気をぶつけてから原田は怒りを抑え込んだ。
「もう二度と戻ってくるんじゃねぇ……」
「心得ていますよ、分隊後は隊士の行き来なし、約定ですから」
斎藤はフンと顔を背け歩き出した。
騒動の間ずっと口を閉ざしていた伊東派の男達は、何事も無かったように共に歩いて行った。
「ちきしょう……斎藤のこと可愛がってやってたのによ……裏切られた気分だぜ!!」
「仕方が無い。斎藤の言うことにも一理ある。連れて行くわけにもいかんだろう」
「これからどうするんですか……総司一人に任せるのか」
「それはこれから決める。あいつ自身がな」
「ちっ……」
自由に動けない己の身を恨み、原田はどこかへ姿を消した。
一方、皆に冷たい目で見られたが、大きな山は越えたと斎藤は安心していた。
ただ、納得出来ない夢主の涙に苛立っていた。
……チッ、前もって話したというのに、なんだあの顔は、泣くことは無かろう、いや泣けと言ったのは確かだが……
受けた衝撃を処理しきれずに不機嫌な顔で歩いていると、青い顔の伊東が小走りでやって来た。
伊東の部屋に招集された男達は、斎藤に声を掛ける伊東を尻目に先に部屋へ入っていった。
「斎藤さんっ!夢主さんが来ないって本当なのっ?!どうしてっ」
「何故ですか伊東さん、御陵をお守りするのが我等の新しい勤めなのでしょう、そんな神聖な場に女連れで出向く阿呆がおりますかね」
「そっ、それはそうですけれどもっ!」
「不都合でもあるのですか、俺の力が欲しいのでは無かったのですか」
この上なく機嫌の悪い斎藤は幾らか高圧的に応えている。
普段の差し障りのない対応とは違う威圧を感じ、伊東は初めて恐怖を感じた。
懐に入り込むまで決して外に出さなかった、伊東に見せなかった斎藤の本性だ。
「いえ……貴方の力がお借りできるなら、それだけで本望……」
……何て恐ろしい気を放つの……これでは、ただの人斬り……
「で、では部屋へ……みなさんがお待ちよ、新しい宿舎の話があるの」
伊東は生唾を飲み込むと、斎藤から逃げるように反らしていた体を戻して部屋に向かった。
……フン、くだらん騒動に巻き込みおって……ただでは済まさんぞ、さっさと悪事を露呈してみろ、叩き斬ってやる……
斎藤は本性を解き放った気を放ち、逃げるように歩く伊東の後に続いた。
「だったらなんだ、あいつの身の振りは本人が決めるべきだ。斎藤が断り本人が納得したのならば仕方あるまい。周りが駄々をこねても夢主は喜ばねぇぞ。無理矢理ついていって幸せになれるのか」
土方の説得に舌打ちし、斎藤に怒気をぶつけてから原田は怒りを抑え込んだ。
「もう二度と戻ってくるんじゃねぇ……」
「心得ていますよ、分隊後は隊士の行き来なし、約定ですから」
斎藤はフンと顔を背け歩き出した。
騒動の間ずっと口を閉ざしていた伊東派の男達は、何事も無かったように共に歩いて行った。
「ちきしょう……斎藤のこと可愛がってやってたのによ……裏切られた気分だぜ!!」
「仕方が無い。斎藤の言うことにも一理ある。連れて行くわけにもいかんだろう」
「これからどうするんですか……総司一人に任せるのか」
「それはこれから決める。あいつ自身がな」
「ちっ……」
自由に動けない己の身を恨み、原田はどこかへ姿を消した。
一方、皆に冷たい目で見られたが、大きな山は越えたと斎藤は安心していた。
ただ、納得出来ない夢主の涙に苛立っていた。
……チッ、前もって話したというのに、なんだあの顔は、泣くことは無かろう、いや泣けと言ったのは確かだが……
受けた衝撃を処理しきれずに不機嫌な顔で歩いていると、青い顔の伊東が小走りでやって来た。
伊東の部屋に招集された男達は、斎藤に声を掛ける伊東を尻目に先に部屋へ入っていった。
「斎藤さんっ!夢主さんが来ないって本当なのっ?!どうしてっ」
「何故ですか伊東さん、御陵をお守りするのが我等の新しい勤めなのでしょう、そんな神聖な場に女連れで出向く阿呆がおりますかね」
「そっ、それはそうですけれどもっ!」
「不都合でもあるのですか、俺の力が欲しいのでは無かったのですか」
この上なく機嫌の悪い斎藤は幾らか高圧的に応えている。
普段の差し障りのない対応とは違う威圧を感じ、伊東は初めて恐怖を感じた。
懐に入り込むまで決して外に出さなかった、伊東に見せなかった斎藤の本性だ。
「いえ……貴方の力がお借りできるなら、それだけで本望……」
……何て恐ろしい気を放つの……これでは、ただの人斬り……
「で、では部屋へ……みなさんがお待ちよ、新しい宿舎の話があるの」
伊東は生唾を飲み込むと、斎藤から逃げるように反らしていた体を戻して部屋に向かった。
……フン、くだらん騒動に巻き込みおって……ただでは済まさんぞ、さっさと悪事を露呈してみろ、叩き斬ってやる……
斎藤は本性を解き放った気を放ち、逃げるように歩く伊東の後に続いた。