91.心構え
夢主名前設定
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「山崎さん!」
「なんだ山崎、土方さんか」
問われた山崎は、はにかむように口元を引き締めて目だけを逸らした。
山崎は新選組の中に於いて、斎藤の優先任務を把握している数少ない人間であり、これから起こる出来事も幾らか予想がつくのだろう。
土方に言われてもいるが、山崎個人としても夢主の行方が気になるのが本音だった。
「答えんのか」
「はい」
山崎は再び視線を斎藤に戻すと、短く堂々と返事をした。
「夢主ちゃんを心配する気持ちは分かりますが程々にしてくださいね、山崎さん。あなたが隊内で全てを知っている数少ない人であり、土方さんや僕らにとっても心強い存在……というのは分かるんですけれど」
苦笑いで盗み聞きをたしなめる沖田に山崎は素直に頭を下げた。
「こんな所で油を売っていて良いのか」
「私はすぐに大坂に向かいます。仕事がありますので……その前に幾人か確認しておくべき人がいると思いましたので。失礼致しました」
斎藤、夢主、そして伊東達、山崎は気になる人物が揃って出て行ったので、大坂に向かう前に状況を確認したかったのだ。
斎藤を見上げていた山崎はちらりと夢主に顔を向けて様子を確認すると、この場を立ち去ろうと三人に小さく頭を下げた。
「あっ、山崎さん!」
「何か……」
「いつもありがとうございます……お気遣いを……」
「任務ですから」
山崎は夢主からの礼に、喜ぶ気持ちを顔に出さないよう歯を食いしばって会釈をし、姿を消した。
「なんだかんだで夢主ちゃんには見守ってくれる人が沢山いますね、本当は僕がどこかで守ってあげられたら良いんですけど」
「無理に決まっている、君が隊から消える理由が無かろう。労咳の話を一気に浸透させるのか。一番隊組長がまさか女の為に消えたとなれば隊内の、平隊士達からの信頼に関わるぜ」
「出来れば、と言ったでしょう!分かっていますよ!今、僕があそこを離れられないのも、新津さんの所へ行けないことも」
今はまだ、その時ではない……沖田は言葉を心にしまった。
屯所に辿り着き、伊東が待ついつもの店に向かう為、門の前で踵を返そうとした斎藤を夢主が呼び止めた。
「あまり遅くならない方がいいですよ、昨日の今日ではさすがに……」
「案ずるな」
伊東に関しては自由に動ける確約を得ている斎藤は、落ち着いて夢主に大丈夫だと自信を見せた。
「でも……くれぐれも羽目を外さないで下さいよ、その……取り込まれちゃわないで下さいね……」
「フッ、いい顔をしているな」
「どんな顔ですか」
夢主の不安な気持ちを余所に、心配気に見上げる姿を斎藤は愉快そうに見下ろしている。
「実に淋しそうだ。俺がここを出ていく時もそんな顔をして見せろよ」
ククッと斎藤は喉を鳴らした。
「そんなに……」
夢主が自分の様子を確認するよう両頬に手を添えた時、屯所の中から突然楽しそうな声が聞こえてきた。
野太い隊士達の声だが、不相応な愛嬌のある甲高い声がいくつも聞こえる。ふざけて高い声を出しているのとは様子が違う。
「何をしてるんでしょう……」
「ははっ、行ってみましょう!斎藤さん、お気をつけて」
夢主の気が逸れたのを良いことに、沖田はさっさと追い出そうと斎藤を送り出し、夢主は慌てて会釈をした。
斎藤が見えなくなると二人は早速声のもとへ向かった。
「なんだ山崎、土方さんか」
問われた山崎は、はにかむように口元を引き締めて目だけを逸らした。
山崎は新選組の中に於いて、斎藤の優先任務を把握している数少ない人間であり、これから起こる出来事も幾らか予想がつくのだろう。
土方に言われてもいるが、山崎個人としても夢主の行方が気になるのが本音だった。
「答えんのか」
「はい」
山崎は再び視線を斎藤に戻すと、短く堂々と返事をした。
「夢主ちゃんを心配する気持ちは分かりますが程々にしてくださいね、山崎さん。あなたが隊内で全てを知っている数少ない人であり、土方さんや僕らにとっても心強い存在……というのは分かるんですけれど」
苦笑いで盗み聞きをたしなめる沖田に山崎は素直に頭を下げた。
「こんな所で油を売っていて良いのか」
「私はすぐに大坂に向かいます。仕事がありますので……その前に幾人か確認しておくべき人がいると思いましたので。失礼致しました」
斎藤、夢主、そして伊東達、山崎は気になる人物が揃って出て行ったので、大坂に向かう前に状況を確認したかったのだ。
斎藤を見上げていた山崎はちらりと夢主に顔を向けて様子を確認すると、この場を立ち去ろうと三人に小さく頭を下げた。
「あっ、山崎さん!」
「何か……」
「いつもありがとうございます……お気遣いを……」
「任務ですから」
山崎は夢主からの礼に、喜ぶ気持ちを顔に出さないよう歯を食いしばって会釈をし、姿を消した。
「なんだかんだで夢主ちゃんには見守ってくれる人が沢山いますね、本当は僕がどこかで守ってあげられたら良いんですけど」
「無理に決まっている、君が隊から消える理由が無かろう。労咳の話を一気に浸透させるのか。一番隊組長がまさか女の為に消えたとなれば隊内の、平隊士達からの信頼に関わるぜ」
「出来れば、と言ったでしょう!分かっていますよ!今、僕があそこを離れられないのも、新津さんの所へ行けないことも」
今はまだ、その時ではない……沖田は言葉を心にしまった。
屯所に辿り着き、伊東が待ついつもの店に向かう為、門の前で踵を返そうとした斎藤を夢主が呼び止めた。
「あまり遅くならない方がいいですよ、昨日の今日ではさすがに……」
「案ずるな」
伊東に関しては自由に動ける確約を得ている斎藤は、落ち着いて夢主に大丈夫だと自信を見せた。
「でも……くれぐれも羽目を外さないで下さいよ、その……取り込まれちゃわないで下さいね……」
「フッ、いい顔をしているな」
「どんな顔ですか」
夢主の不安な気持ちを余所に、心配気に見上げる姿を斎藤は愉快そうに見下ろしている。
「実に淋しそうだ。俺がここを出ていく時もそんな顔をして見せろよ」
ククッと斎藤は喉を鳴らした。
「そんなに……」
夢主が自分の様子を確認するよう両頬に手を添えた時、屯所の中から突然楽しそうな声が聞こえてきた。
野太い隊士達の声だが、不相応な愛嬌のある甲高い声がいくつも聞こえる。ふざけて高い声を出しているのとは様子が違う。
「何をしてるんでしょう……」
「ははっ、行ってみましょう!斎藤さん、お気をつけて」
夢主の気が逸れたのを良いことに、沖田はさっさと追い出そうと斎藤を送り出し、夢主は慌てて会釈をした。
斎藤が見えなくなると二人は早速声のもとへ向かった。