91.心構え
夢主名前設定
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「まぁ、噂を流すのが上手いお人がいるから大丈夫さ」
「噂を?」
「あぁ。土方さんが上手いこと話を動かしてくれるだろう。とにかく俺が去る時にお前が一緒では困る。まかり間違って伊東さん達がいいじゃないと誘いでもしてみろ。一緒に過ごす羽目になるんだぞ」
「それは困ります……」
「あぁそうだろう。それにあそこに残られても不自然だ。まるで戻るのを知っていて待っているようではな。飛び出すのが一番だ」
「はぃ……それはわかります」
「だったら大人しく俺の嘘に付き合え。いいか」
「わかりました……」
斎藤の嘘、自分に向けられる斎藤の冷たい声、冷たい言葉、冷たい瞳……自分は上手く対応できるだろうか。
頭で理解しても心が戸惑ってしまうのではないかと、不安を拭いきれない。
「沖田さんはどうされるのですか……」
恐らく本来の歴史ならば沖田は既に病に伏して表舞台から姿を消している頃。
夢主の記憶では、伊東や藤堂と新選組との事件に沖田が関わったという記録は残っていない。
「僕は今まで通りですよ。屯所に残ります。ただ……」
沖田は小さく息を吐くと、先程のお返しとばかりに斎藤を一瞥してから話を始めた。
「僕の……あったかも知れない近い死を土方さんに告げたと、夢主ちゃんには話しましたよね。ついでだから斎藤さんも聞いておいてください、僕は労咳を装います」
「えっ……労咳を」
「えぇ。土方さんの策です。とは言っても僕は嘘や真似事が苦手ですからね、たまに部屋に籠もらせてもらったり、近藤さんの護衛と偽って隊務から少し離れるよう計らってもらうんです。なるべく本来の歴史から逸れないような行動を……」
「歴史通りか。滑稽でもあるな」
「なんとでも言ってください。僕は夢主ちゃんの話を信じていますし、温かい未来と言うものも信じてみたいんです。だから僕が大きく関わってはいけない事からは遠ざかるつもりです」
「好きにすれば良い、俺には関係ない」
「そうでもありませんよ、まぁいいですが」
「沖田さんは私の知ってる記憶に沿って動くのですね……斎藤さんはお役目を……私は」
「夢主ちゃんも頑張ってね、新津さんは大丈夫だと思いますよ。あの人は筋道を違える人では無いでしょう。安心して夢主ちゃんを預けられます」
これから自分達とは離れた暮らしを送る夢主を沖田はにこりと微笑んで励ました。
「今日もお前を送ったら俺はそのまま伊東さんのもとへ向かう」
分かりました……
口を閉ざしたまま頷き、もう話が終わり、屯所へ戻ると思い込んだ夢主は立ち上がろうと腰を浮かした。
だが斎藤がふと顔を上げ、沖田もにこやかな顔立ちのまま同じ場所を見上げた。
「おい、いい加減出て来い山崎」
「えっ、山崎さん……」
斎藤と沖田につられて顔を上げると、何か影が降りてくるのが分かった。
動きが止まってはっきり見えたのは、片膝を付き気まずそうに三人の視線に捉えられる山崎であった。
「噂を?」
「あぁ。土方さんが上手いこと話を動かしてくれるだろう。とにかく俺が去る時にお前が一緒では困る。まかり間違って伊東さん達がいいじゃないと誘いでもしてみろ。一緒に過ごす羽目になるんだぞ」
「それは困ります……」
「あぁそうだろう。それにあそこに残られても不自然だ。まるで戻るのを知っていて待っているようではな。飛び出すのが一番だ」
「はぃ……それはわかります」
「だったら大人しく俺の嘘に付き合え。いいか」
「わかりました……」
斎藤の嘘、自分に向けられる斎藤の冷たい声、冷たい言葉、冷たい瞳……自分は上手く対応できるだろうか。
頭で理解しても心が戸惑ってしまうのではないかと、不安を拭いきれない。
「沖田さんはどうされるのですか……」
恐らく本来の歴史ならば沖田は既に病に伏して表舞台から姿を消している頃。
夢主の記憶では、伊東や藤堂と新選組との事件に沖田が関わったという記録は残っていない。
「僕は今まで通りですよ。屯所に残ります。ただ……」
沖田は小さく息を吐くと、先程のお返しとばかりに斎藤を一瞥してから話を始めた。
「僕の……あったかも知れない近い死を土方さんに告げたと、夢主ちゃんには話しましたよね。ついでだから斎藤さんも聞いておいてください、僕は労咳を装います」
「えっ……労咳を」
「えぇ。土方さんの策です。とは言っても僕は嘘や真似事が苦手ですからね、たまに部屋に籠もらせてもらったり、近藤さんの護衛と偽って隊務から少し離れるよう計らってもらうんです。なるべく本来の歴史から逸れないような行動を……」
「歴史通りか。滑稽でもあるな」
「なんとでも言ってください。僕は夢主ちゃんの話を信じていますし、温かい未来と言うものも信じてみたいんです。だから僕が大きく関わってはいけない事からは遠ざかるつもりです」
「好きにすれば良い、俺には関係ない」
「そうでもありませんよ、まぁいいですが」
「沖田さんは私の知ってる記憶に沿って動くのですね……斎藤さんはお役目を……私は」
「夢主ちゃんも頑張ってね、新津さんは大丈夫だと思いますよ。あの人は筋道を違える人では無いでしょう。安心して夢主ちゃんを預けられます」
これから自分達とは離れた暮らしを送る夢主を沖田はにこりと微笑んで励ました。
「今日もお前を送ったら俺はそのまま伊東さんのもとへ向かう」
分かりました……
口を閉ざしたまま頷き、もう話が終わり、屯所へ戻ると思い込んだ夢主は立ち上がろうと腰を浮かした。
だが斎藤がふと顔を上げ、沖田もにこやかな顔立ちのまま同じ場所を見上げた。
「おい、いい加減出て来い山崎」
「えっ、山崎さん……」
斎藤と沖田につられて顔を上げると、何か影が降りてくるのが分かった。
動きが止まってはっきり見えたのは、片膝を付き気まずそうに三人の視線に捉えられる山崎であった。