91.心構え
夢主名前設定
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たった一日で謹慎が解けるはずも無いが、斎藤は翌日には夢主と沖田を伴って堂々と屯所を抜け出そうとしていた。
昼を過ぎて太陽が一番高く昇ると、寒い季節にしてはぽかぽかと暖かい陽気を感じる。
屯所の門に向かうと、先に門に集まっている者達がいた。
「よぉ、もう出歩けるのか!」
夢主の姿を見つけ、屯所の外に出ようとしていた藤堂が走って来た。
門のそばには斎藤と同様、謹慎を受けているはずの伊東やその取り巻き達が立っている。
「とっ……藤堂さん!」
夢主は目の前まで走って来た藤堂に思わず裏返った声を出してしまった。
……この年の哀しい出来事の中に、この人もいる……
だが当の本人は機嫌良さそうに夢主に微笑み、隣の斎藤にも話し掛けた。
「何だよ、そんなに驚く事ないだろう?それにしてもいいのか、斎藤君は謹慎中だろ。昨日の今日だぜ、さすがに怒られるぞ」
「いや、謹慎ならもう解けている」
「本当かっ?土方さん随分と太っ腹だなぁ」
「フン、伊東さん達だって出歩いているじゃないか」
「まぁ、そうだけどさ」
落ち着いて話し込んでしまいそうな様子に、門で待つ男の一人が堪らず藤堂を呼んだ。
「おい、藤堂行くぞ!」
顎で早く来いと促している。
そんな先を急かす男の後ろから、反するように伊東がこちらへ向かって来た。
何か思いついたのか、手にしていた扇を懐にしまい、静かな笑顔で斎藤と夢主の顔を交互に眺めながら近付いてくる。
「折角ですから、一緒にいかがかしら。斎藤さん、一昨日は実に楽しかったじゃありませんか。よろしければ夢主さんもご一緒に。もちろん、沖田さんも来て下さって構いませんのよ」
「ははっ、僕は遠慮いたします。もちろん夢主ちゃんもですよ。斎藤さんは……」
「後で伺います」
斎藤の返事に夢主と沖田は目を丸くした。
そんな二人に伊東は目を細めて意地悪げに微笑み、背を向けた。
「そう、それは楽しみね。では藤堂君、行くわよ」
「おうっ、……じゃぁな夢主、俺もちょっと出てくるな。斎藤君、後でな。夢主も良かったら来いよ」
「あっ……お気をつけて……」
背を向けた藤堂に反射的に手を伸ばすが、藤堂には届かず、その手を霞めて走り去った。
引き留めるようと伸ばした手に斎藤と沖田は疑問を抱くが、二人は目を合わせ、その場は黙ってやり過ごした。
「斎藤さん、後で向かうんですか」
「あぁ、俺は伊東さんのそばに」
そばにいなければならない……
そこまでは言葉に出来ないが、斎藤の本意を悟って夢主は黙って頷いた。
「取り込まれても知りませんよ」
沖田は伊東達が姿を消したのを確認し、斎藤に皮肉を残して歩き出した。
「フン、行くぞ夢主」
全てを知っているくせに面倒くさいことを言う奴だと、沖田の背中を睨みながら斎藤も歩き出した。
そんな二人を追いながら、夢主はこの二人の関係がどうなって行くのだろうと、気掛かりでならなかった。
昼を過ぎて太陽が一番高く昇ると、寒い季節にしてはぽかぽかと暖かい陽気を感じる。
屯所の門に向かうと、先に門に集まっている者達がいた。
「よぉ、もう出歩けるのか!」
夢主の姿を見つけ、屯所の外に出ようとしていた藤堂が走って来た。
門のそばには斎藤と同様、謹慎を受けているはずの伊東やその取り巻き達が立っている。
「とっ……藤堂さん!」
夢主は目の前まで走って来た藤堂に思わず裏返った声を出してしまった。
……この年の哀しい出来事の中に、この人もいる……
だが当の本人は機嫌良さそうに夢主に微笑み、隣の斎藤にも話し掛けた。
「何だよ、そんなに驚く事ないだろう?それにしてもいいのか、斎藤君は謹慎中だろ。昨日の今日だぜ、さすがに怒られるぞ」
「いや、謹慎ならもう解けている」
「本当かっ?土方さん随分と太っ腹だなぁ」
「フン、伊東さん達だって出歩いているじゃないか」
「まぁ、そうだけどさ」
落ち着いて話し込んでしまいそうな様子に、門で待つ男の一人が堪らず藤堂を呼んだ。
「おい、藤堂行くぞ!」
顎で早く来いと促している。
そんな先を急かす男の後ろから、反するように伊東がこちらへ向かって来た。
何か思いついたのか、手にしていた扇を懐にしまい、静かな笑顔で斎藤と夢主の顔を交互に眺めながら近付いてくる。
「折角ですから、一緒にいかがかしら。斎藤さん、一昨日は実に楽しかったじゃありませんか。よろしければ夢主さんもご一緒に。もちろん、沖田さんも来て下さって構いませんのよ」
「ははっ、僕は遠慮いたします。もちろん夢主ちゃんもですよ。斎藤さんは……」
「後で伺います」
斎藤の返事に夢主と沖田は目を丸くした。
そんな二人に伊東は目を細めて意地悪げに微笑み、背を向けた。
「そう、それは楽しみね。では藤堂君、行くわよ」
「おうっ、……じゃぁな夢主、俺もちょっと出てくるな。斎藤君、後でな。夢主も良かったら来いよ」
「あっ……お気をつけて……」
背を向けた藤堂に反射的に手を伸ばすが、藤堂には届かず、その手を霞めて走り去った。
引き留めるようと伸ばした手に斎藤と沖田は疑問を抱くが、二人は目を合わせ、その場は黙ってやり過ごした。
「斎藤さん、後で向かうんですか」
「あぁ、俺は伊東さんのそばに」
そばにいなければならない……
そこまでは言葉に出来ないが、斎藤の本意を悟って夢主は黙って頷いた。
「取り込まれても知りませんよ」
沖田は伊東達が姿を消したのを確認し、斎藤に皮肉を残して歩き出した。
「フン、行くぞ夢主」
全てを知っているくせに面倒くさいことを言う奴だと、沖田の背中を睨みながら斎藤も歩き出した。
そんな二人を追いながら、夢主はこの二人の関係がどうなって行くのだろうと、気掛かりでならなかった。