91.心構え
夢主名前設定
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新年早々の外泊騒ぎの咎で謹慎を言い渡された斎藤は、部屋で大人しく文机に向かっていた。
付き添うように座る夢主だが、一言チクリと言いたくて堪らなかった。
「斎藤さん、謹慎受けるの何回目ですか……」
「さぁな、記憶にあるのは二回か」
「三回はありますよ……謹慎受けてばっかりです」
「そうか三回か、記憶にないな。そんなに受けていたか」
「受けていますよ。もっとあったかもしれない……」
「フン」
悪びれもせず鼻をならすこんな斎藤だが、近藤や土方に重宝され可愛がられている。
多少の悪さには目を瞑ってもらっていた。
「何か特別な席だったんですか」
「いや、ただの馬鹿騒ぎさ」
「そうですか……あの、斎藤さんはもうすぐ……」
宴では伊東と繋がりを深め、ますますの信頼を得たに違いない。
もうすぐ斎藤はこの屯所を出て行ってしまう。
土方や沖田と離れて単身、伊東のそばで極秘任務に当たる。訊ねた所で当の本人にもまだ分からないだろう。
「どうした」
「いぃえ……伊東さんは何をお考えなのでしょうか……」
「さぁな。それよりお前は何を考えている。怒っているのかと思ったが塞いでいるようだな」
「私は……少し不安に思っただけです。新年早々こんなことを考えるのは嫌ですが、今年は……」
夢主は言葉を失い首を振った。
この年に起こる出来事を思い起こすと、あまりにも哀しい記憶が多過ぎた。
「そう思い詰めるな」
小さく頷いて斎藤を見上げた。
相変わらずの細く鋭い目は、知らない者が見ればとても恐ろしい印象を与える。
夢主に話し掛けて頭を動かした斎藤、鋭い瞳の前を垂れた前髪が何度か行き来した。
「斎藤さんは不死身なんです……」
「あぁ知ってるさ」
改めて言われるまでも無いと、得意気な笑みに夢主は頬を緩めた。
「お前の行くあて、あの男のことを少し聞かせてもらおうか」
「新津さんですか……」
「あぁ。お前は詳しいのだろうが、俺は妙に剣椀の卓越していそうな新米の陶芸家ということしか知らん。果たして本当にあの男の元でいいのか」
ゆっくり首を縦に動かす夢主に、斎藤は溜息に近い息を吐いた。
「そうか。少しも話す気は無しか」
「ごめんなさい……あの方とのお約束なんです……」
「分かったさ。だがあの男一人でお前を守りきれるのか」
自分の身を案じてくれていると気付いた夢主は、照れ臭さと嬉しさが顔に浮かぶ。
「例えばどれ程に強い、俺達より強いか」
「僕はそう思いますよ、斎藤さんだって気付いているんでしょう」
「沖田さんっ」
「僕もその話、混ぜて欲しいな」
障子を開きながら話しに加わってきた沖田、新津の強さは只ならぬものだと理解している一人だ。
「僕、何度かあの人に向かって刀を抜こうと試みたんです。でもね、出来ませんでした。不思議ですね……初めてだったし、きっとこれからも無いと思うんです。新津さんは確かに強いですよ、きっと僕達が束になっても敵わない。違いますか」
「さぁ……そこまでは……」
分からないと言葉を濁すが、一流の剣客の勘はこれ程に凄いものなのかと感心していた。
「俺だってあの男は並じゃないとは思うがな。強ければ必ず勝つわけでもないんだぜ」
「ははっ、斎藤さんらしいな、土方さんもそんなことを言ってたなぁ。二人共恐ろしく強いわけです」
剣の技術なら確かに自分に分があると沖田自身確信しているが、実戦になれば二人に打ち勝つ自信は無い。
五分と五分、それが恐らくは現実だろう。
付き添うように座る夢主だが、一言チクリと言いたくて堪らなかった。
「斎藤さん、謹慎受けるの何回目ですか……」
「さぁな、記憶にあるのは二回か」
「三回はありますよ……謹慎受けてばっかりです」
「そうか三回か、記憶にないな。そんなに受けていたか」
「受けていますよ。もっとあったかもしれない……」
「フン」
悪びれもせず鼻をならすこんな斎藤だが、近藤や土方に重宝され可愛がられている。
多少の悪さには目を瞑ってもらっていた。
「何か特別な席だったんですか」
「いや、ただの馬鹿騒ぎさ」
「そうですか……あの、斎藤さんはもうすぐ……」
宴では伊東と繋がりを深め、ますますの信頼を得たに違いない。
もうすぐ斎藤はこの屯所を出て行ってしまう。
土方や沖田と離れて単身、伊東のそばで極秘任務に当たる。訊ねた所で当の本人にもまだ分からないだろう。
「どうした」
「いぃえ……伊東さんは何をお考えなのでしょうか……」
「さぁな。それよりお前は何を考えている。怒っているのかと思ったが塞いでいるようだな」
「私は……少し不安に思っただけです。新年早々こんなことを考えるのは嫌ですが、今年は……」
夢主は言葉を失い首を振った。
この年に起こる出来事を思い起こすと、あまりにも哀しい記憶が多過ぎた。
「そう思い詰めるな」
小さく頷いて斎藤を見上げた。
相変わらずの細く鋭い目は、知らない者が見ればとても恐ろしい印象を与える。
夢主に話し掛けて頭を動かした斎藤、鋭い瞳の前を垂れた前髪が何度か行き来した。
「斎藤さんは不死身なんです……」
「あぁ知ってるさ」
改めて言われるまでも無いと、得意気な笑みに夢主は頬を緩めた。
「お前の行くあて、あの男のことを少し聞かせてもらおうか」
「新津さんですか……」
「あぁ。お前は詳しいのだろうが、俺は妙に剣椀の卓越していそうな新米の陶芸家ということしか知らん。果たして本当にあの男の元でいいのか」
ゆっくり首を縦に動かす夢主に、斎藤は溜息に近い息を吐いた。
「そうか。少しも話す気は無しか」
「ごめんなさい……あの方とのお約束なんです……」
「分かったさ。だがあの男一人でお前を守りきれるのか」
自分の身を案じてくれていると気付いた夢主は、照れ臭さと嬉しさが顔に浮かぶ。
「例えばどれ程に強い、俺達より強いか」
「僕はそう思いますよ、斎藤さんだって気付いているんでしょう」
「沖田さんっ」
「僕もその話、混ぜて欲しいな」
障子を開きながら話しに加わってきた沖田、新津の強さは只ならぬものだと理解している一人だ。
「僕、何度かあの人に向かって刀を抜こうと試みたんです。でもね、出来ませんでした。不思議ですね……初めてだったし、きっとこれからも無いと思うんです。新津さんは確かに強いですよ、きっと僕達が束になっても敵わない。違いますか」
「さぁ……そこまでは……」
分からないと言葉を濁すが、一流の剣客の勘はこれ程に凄いものなのかと感心していた。
「俺だってあの男は並じゃないとは思うがな。強ければ必ず勝つわけでもないんだぜ」
「ははっ、斎藤さんらしいな、土方さんもそんなことを言ってたなぁ。二人共恐ろしく強いわけです」
剣の技術なら確かに自分に分があると沖田自身確信しているが、実戦になれば二人に打ち勝つ自信は無い。
五分と五分、それが恐らくは現実だろう。