90.密偵、酒宴
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沖田は早速土方の部屋へ向かった。
中の気配を確認すると障子を開きながら声を掛けた。
「土方さん、入りますよ~!ご相談です」
「ったく、開けながら言う奴がいるか!相談ってどうせアレだろう、とにかく閉めて座れ」
ケッと不満の色を浮かべた土方が顎で障子を指すので、沖田は笑いながら手を動かし、向き直って楽な体勢で腰を落とした。
「アレは、アレなんですけどね。ねぇ土方さん、僕に何か隠し事をしていませんか」
「あぁ?何だよ、知らねぇな」
斎藤のことか……
土方は当然一番に頭に浮かんだが、沖田に話すつもりは無い。
斎藤本人にも告げた通り、勘付くならば仕方が無いがこちらから話すつもりは無い事案だ。
「へぇ……そうですか。秘密なんですねぇ~……いいですよ、僕も一つ秘密を持っていますから」
「秘密だと……何だよそりゃ。おめぇの秘密なんざ、たかがしれてるだろうよ」
「まぁ、どうでもいいと言えばいいかもしれませんが、きっと土方さんにも関わりのある話だと……思いたいんですけどね。僕のことなんです」
「あぁ?何だよ。例の道場の話か」
切り出すには時期が早かろう……
顔に浮かべた不満の色を更に濃くするが、沖田はいつもの表情のまま首を振った。
「道場はもう少し先にと思っていますよ、さすがに。でも僕だけ秘密を話すなんて気が進まないな~」
「何だ、話すのか話さねぇのか!話す気がないんならとっとと出て行け」
「酷いなあぁ。あのですね……申し訳ないんですが、僕死ぬんです」
「……あぁっ??」
言い終えて軽やかに笑う沖田に土方は苛立ちを感じ、苦々しい顔を向けた。
「てめぇ言っていい冗談とそうじゃねぇもんがあるだろうよ。お前にしては性質の悪い冗談だな。まぁ総司の冗談がくだらねぇのはいつものことだが……」
「いやだなぁ、冗談じゃありませんよ。僕は労咳で死ぬんです」
「何言ってやがる艶のいい顔しやがって。咳もなけりゃピンピンしてるじゃねぇか!悪い冗談はもう終いにしろ」
「嘘じゃないんですけど……」
沖田が話を信じてもらえない幼子の様に俯き真面目な声で呟くので、土方も思わず身を乗り出した。
「じゃあ何だ……総司、お前は今……肺を病んでいるのか……」
「いぃえっ、あははははっ、僕元気でしょう?」
心底心配し青い顔にまでなった土方は、大きな舌打ちをして床を叩いた。
「おい、いい加減にしろよ!」
「まぁまぁ、そんな声を出したら誰かが来てしまいます。でも嬉しいなぁ……今、土方さん本気で僕のことを心配してくれましたね」
「当たり前ぇだろ……」
「斎藤さんのことを教えてくれない土方さんがいけないんですよ。教えてくれたら僕だってもう少し素直に話したんです」
首を傾げ土方の顔を見るが、見られた本人はバツが悪そうに顔を逸らしてしまった。
「まぁいいですよ。僕が死ぬって言うのは、そういう歴史だったということです。本当に僕は……労咳で死んだそうですよ」
「あいつが言ったのか」
静かに頷いて沖田は話を続けた。
「夢主ちゃんに助けていただいたんです。分かりますか、夢主ちゃんは僕をとても気に掛けてくれていましたよね。それは病を気にしていたんです。僕の求婚を断った後ろめたさとか、そんなんじゃなくて……本当に優しい気持ちだけで僕を……守ってくれたんです」
「総司……」
「いい娘ですよね、本当に……」
「あぁ…………あいつは……。それで、どうなんだ。本当に体の調子は悪くないのか」
「安心してください、松本先生にも診ていただいたんです。先生は信頼できるお方でしょう」
「そうか!松本先生が……それなら、安心だな」
土方はほぅっと息を吐くように、力を込めて張っていた体を緩めた。
「それで、僕の立場なんですけどね」
安心して油断した顔で土方は沖田を見つめ返した。
中の気配を確認すると障子を開きながら声を掛けた。
「土方さん、入りますよ~!ご相談です」
「ったく、開けながら言う奴がいるか!相談ってどうせアレだろう、とにかく閉めて座れ」
ケッと不満の色を浮かべた土方が顎で障子を指すので、沖田は笑いながら手を動かし、向き直って楽な体勢で腰を落とした。
「アレは、アレなんですけどね。ねぇ土方さん、僕に何か隠し事をしていませんか」
「あぁ?何だよ、知らねぇな」
斎藤のことか……
土方は当然一番に頭に浮かんだが、沖田に話すつもりは無い。
斎藤本人にも告げた通り、勘付くならば仕方が無いがこちらから話すつもりは無い事案だ。
「へぇ……そうですか。秘密なんですねぇ~……いいですよ、僕も一つ秘密を持っていますから」
「秘密だと……何だよそりゃ。おめぇの秘密なんざ、たかがしれてるだろうよ」
「まぁ、どうでもいいと言えばいいかもしれませんが、きっと土方さんにも関わりのある話だと……思いたいんですけどね。僕のことなんです」
「あぁ?何だよ。例の道場の話か」
切り出すには時期が早かろう……
顔に浮かべた不満の色を更に濃くするが、沖田はいつもの表情のまま首を振った。
「道場はもう少し先にと思っていますよ、さすがに。でも僕だけ秘密を話すなんて気が進まないな~」
「何だ、話すのか話さねぇのか!話す気がないんならとっとと出て行け」
「酷いなあぁ。あのですね……申し訳ないんですが、僕死ぬんです」
「……あぁっ??」
言い終えて軽やかに笑う沖田に土方は苛立ちを感じ、苦々しい顔を向けた。
「てめぇ言っていい冗談とそうじゃねぇもんがあるだろうよ。お前にしては性質の悪い冗談だな。まぁ総司の冗談がくだらねぇのはいつものことだが……」
「いやだなぁ、冗談じゃありませんよ。僕は労咳で死ぬんです」
「何言ってやがる艶のいい顔しやがって。咳もなけりゃピンピンしてるじゃねぇか!悪い冗談はもう終いにしろ」
「嘘じゃないんですけど……」
沖田が話を信じてもらえない幼子の様に俯き真面目な声で呟くので、土方も思わず身を乗り出した。
「じゃあ何だ……総司、お前は今……肺を病んでいるのか……」
「いぃえっ、あははははっ、僕元気でしょう?」
心底心配し青い顔にまでなった土方は、大きな舌打ちをして床を叩いた。
「おい、いい加減にしろよ!」
「まぁまぁ、そんな声を出したら誰かが来てしまいます。でも嬉しいなぁ……今、土方さん本気で僕のことを心配してくれましたね」
「当たり前ぇだろ……」
「斎藤さんのことを教えてくれない土方さんがいけないんですよ。教えてくれたら僕だってもう少し素直に話したんです」
首を傾げ土方の顔を見るが、見られた本人はバツが悪そうに顔を逸らしてしまった。
「まぁいいですよ。僕が死ぬって言うのは、そういう歴史だったということです。本当に僕は……労咳で死んだそうですよ」
「あいつが言ったのか」
静かに頷いて沖田は話を続けた。
「夢主ちゃんに助けていただいたんです。分かりますか、夢主ちゃんは僕をとても気に掛けてくれていましたよね。それは病を気にしていたんです。僕の求婚を断った後ろめたさとか、そんなんじゃなくて……本当に優しい気持ちだけで僕を……守ってくれたんです」
「総司……」
「いい娘ですよね、本当に……」
「あぁ…………あいつは……。それで、どうなんだ。本当に体の調子は悪くないのか」
「安心してください、松本先生にも診ていただいたんです。先生は信頼できるお方でしょう」
「そうか!松本先生が……それなら、安心だな」
土方はほぅっと息を吐くように、力を込めて張っていた体を緩めた。
「それで、僕の立場なんですけどね」
安心して油断した顔で土方は沖田を見つめ返した。