89.熱燗の熱
夢主名前設定
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「全く……昼間っから呑もうが勝手だがな、もう少し気をつけろってんだ!」
「まさかあんな……僕も思わないですよ」
「あいつが勝手に暴走した」
照れの残る赤い顔で反論する沖田と無表情を装い歯向かう斎藤に、土方は怒りを含んだ気を当て付けて威圧した。
「いいか、あいつの暴走は、お前らの責任だ。それが嫌ならもういい、俺が引き受ける。その代わり二度とお前らには預けねぇからな」
「それはっ!」
反射的に縋る表情に変わり、土方の袖を掴む沖田に対し、斎藤は息を詰めて静かに瞳で訴えた。
「俺は本気だぜ、他の女と手を切れというのなら喜んで切ってやる。落ち着いた暮らしがしたいと言うのならいつか俺の故郷に連れて行ってやっても構わねぇ。俺にはそれだけの責任も、覚悟もある。お前らよ、特別な知識だけじゃねぇあいつの女としての価値を分かってんのか」
「夢主ちゃんの……大切さなら僕だって充分に分かっています。あんなに優しい娘は……」
「お前らに預けている俺の気持ちも……少しは考えてくれねぇか」
沈んだ声で話す土方の瞳はどこか淋しそうだ。
慈しみのような優しさで、命削る日々を送る男達を安らぎで満たし、温かく包む存在。
そばにいるだけで心が安らぐ掛け替えの……代わりなど無い、唯一の存在。
斎藤は夢主が自分と周りの者達に与える影響を考え、気落ちする沖田を横目に、その通りだと考えを肯定した。
目の前で怖い顔を見せる土方と視線をぶつける。
「僕達で……ちゃんと守ってみせます」
「だったらしっかり面倒を見ろ!あんな状態にさせんじゃねぇ」
「土方さん」
「あぁもう謝らなくていいからよ!酒が抜けるまで体でも動かして来い、ちょうど稽古の最中だ。間違っても酔って平隊士を再起不能にしちまうなよ!」
「分かりました」
土方の心遣いに斎藤は素直に感謝し、立ち去る姿に小さく頭を下げた。
振り返って自室を見るが夢主が出てくる気配は無い。
酔って眠るだろうと、そのまま沖田と共に威勢のいい声が響く道場に向かった。
部屋に残された夢主は反省するうち、少しだけ酔いが醒めていた。
「あぁ……わるいこと、しちゃったな……でも……」
目の前にはまだ温かそうに湯気を上げる徳利がある。
「せっかく手間かけて、あたためてくれたのに……もったいないよね……」
部屋の外を見るが人影は無く声も聞こえない。斎藤達は恐らく土方と共に何処かにいるのだ。
戻らないのなら冷えてしまう酒が可哀相だと、夢主は自分に言い訳をして徳利を持ち上げた。
「のんじゃおぅ……だれもいないし、いいよね……あっ!」
夢主はいいことを思い付いたと徳利を戻して自分の部屋に戻り、ふらつきながら布団を広げた。
「これで、よってもすぐにねちゃえる……ねてたら手はださないって、斎藤さんもいってたもんね……」
自分の考えに満足して嬉しそうに再度徳利を手にすると、並々と猪口を満たした。
「わぁ、いいかおり……ふゆはあつかんって、ほんとうだなぁ……ぁ……」
喉を通る熱にうっとり呟くと、徳利が空になるまで、溢しながら呑みきってしまった。
「うぅん……まわるぅ……おふ……とん……」
気持ち良さそうな顔で、ずるずると布団に戻り、心地よい眠りに就いた。
夢主が眠りに落ちて間もなく、西の空が銀朱色に染まり始めた。
やがて部屋に戻った斎藤は、相変わらずの格好をした夢主に大きな溜息を吐き、布団の上に転がる体を抱え上げた。
その隙に共に戻った沖田が掛け布団を除ける。
夢主の体が下ろされると、冷えてしまった体の上に厚い布団を掛けてやった。
「まさかあんな……僕も思わないですよ」
「あいつが勝手に暴走した」
照れの残る赤い顔で反論する沖田と無表情を装い歯向かう斎藤に、土方は怒りを含んだ気を当て付けて威圧した。
「いいか、あいつの暴走は、お前らの責任だ。それが嫌ならもういい、俺が引き受ける。その代わり二度とお前らには預けねぇからな」
「それはっ!」
反射的に縋る表情に変わり、土方の袖を掴む沖田に対し、斎藤は息を詰めて静かに瞳で訴えた。
「俺は本気だぜ、他の女と手を切れというのなら喜んで切ってやる。落ち着いた暮らしがしたいと言うのならいつか俺の故郷に連れて行ってやっても構わねぇ。俺にはそれだけの責任も、覚悟もある。お前らよ、特別な知識だけじゃねぇあいつの女としての価値を分かってんのか」
「夢主ちゃんの……大切さなら僕だって充分に分かっています。あんなに優しい娘は……」
「お前らに預けている俺の気持ちも……少しは考えてくれねぇか」
沈んだ声で話す土方の瞳はどこか淋しそうだ。
慈しみのような優しさで、命削る日々を送る男達を安らぎで満たし、温かく包む存在。
そばにいるだけで心が安らぐ掛け替えの……代わりなど無い、唯一の存在。
斎藤は夢主が自分と周りの者達に与える影響を考え、気落ちする沖田を横目に、その通りだと考えを肯定した。
目の前で怖い顔を見せる土方と視線をぶつける。
「僕達で……ちゃんと守ってみせます」
「だったらしっかり面倒を見ろ!あんな状態にさせんじゃねぇ」
「土方さん」
「あぁもう謝らなくていいからよ!酒が抜けるまで体でも動かして来い、ちょうど稽古の最中だ。間違っても酔って平隊士を再起不能にしちまうなよ!」
「分かりました」
土方の心遣いに斎藤は素直に感謝し、立ち去る姿に小さく頭を下げた。
振り返って自室を見るが夢主が出てくる気配は無い。
酔って眠るだろうと、そのまま沖田と共に威勢のいい声が響く道場に向かった。
部屋に残された夢主は反省するうち、少しだけ酔いが醒めていた。
「あぁ……わるいこと、しちゃったな……でも……」
目の前にはまだ温かそうに湯気を上げる徳利がある。
「せっかく手間かけて、あたためてくれたのに……もったいないよね……」
部屋の外を見るが人影は無く声も聞こえない。斎藤達は恐らく土方と共に何処かにいるのだ。
戻らないのなら冷えてしまう酒が可哀相だと、夢主は自分に言い訳をして徳利を持ち上げた。
「のんじゃおぅ……だれもいないし、いいよね……あっ!」
夢主はいいことを思い付いたと徳利を戻して自分の部屋に戻り、ふらつきながら布団を広げた。
「これで、よってもすぐにねちゃえる……ねてたら手はださないって、斎藤さんもいってたもんね……」
自分の考えに満足して嬉しそうに再度徳利を手にすると、並々と猪口を満たした。
「わぁ、いいかおり……ふゆはあつかんって、ほんとうだなぁ……ぁ……」
喉を通る熱にうっとり呟くと、徳利が空になるまで、溢しながら呑みきってしまった。
「うぅん……まわるぅ……おふ……とん……」
気持ち良さそうな顔で、ずるずると布団に戻り、心地よい眠りに就いた。
夢主が眠りに落ちて間もなく、西の空が銀朱色に染まり始めた。
やがて部屋に戻った斎藤は、相変わらずの格好をした夢主に大きな溜息を吐き、布団の上に転がる体を抱え上げた。
その隙に共に戻った沖田が掛け布団を除ける。
夢主の体が下ろされると、冷えてしまった体の上に厚い布団を掛けてやった。