89.熱燗の熱
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「はぁ~い、まずはお冷持って来ました!あとで鉄之助君が熱燗持ってきてくれますよ~」
「ちょうどいいな、一度冷やせ」
沖田が運んでくれたいつもの酒を冷えた状態で猪口に注ぐが、夢主はふくれっ面を見せて受け取らなかった。
「さむいんれす・・・あついのがいいれしょう!」
「あぁ……気が戻ったと思ったら夢主ちゃんご機嫌斜めなんだ……」
沖田が苦笑いで酌を諦めて自分の酒を汲んでいると、斎藤が夢主から突き返された猪口の酒をそのまま呑み干した。
「あぁっ!」
「何だ」
「いぇっ……何でもありません……」
呑まないものを放っておいても仕方なかろうとばかりに、夢主の酒を呑み干した斎藤を恨めしそうに睨んで、沖田は自らの器を空にした。
再び静かになった夢主を余所に手酌で酒を進める二人。
冷酒の徳利を空ける頃、計ったように鉄之助が現れた。
「お待たせいたしました」
中に入った鉄之助は、にこにこと緩んだ笑顔で固まっている夢主に驚くが、斎藤に「気にするな」と言われ目を逸らすしかなかった。
「あの……お酒を用意していたら土方先生が怪訝な顔をされていましたので、程々になさった方がいいかもしれませんよ……こんな早くからと呟いていた気がします。はっきりとは聞こえなかったのですが……」
二人が土方の雷を貰わないようにと気遣う鉄之助に、沖田は笑顔で酒を向けた。
「鉄之助君も呑むかい」
「いいえっ、私はさほども呑めませんので、呑んでしまえば仕事が出来なくなってしまいます」
「そうですか、それは仕方ありませんね。お酒、どうもありがとう」
手を振って慌てて拒否した鉄之助は、沖田の許しにほぅっと安心し頭を下げて部屋をあとにした。
「土方さんに見付かっちゃったみたいですね~」
「あぁ、だが非番の過ごし方まで指示される謂れはないからな、気にせんでいいだろう」
斎藤はフンと笑うと早速熱い酒に手を伸ばし、猪口に注ぐと広がる香りに目を細めてから一気に呑み干した。
「いいな、普段はなかなか呑もうと思わんが、呑んでしまえば美味いもんだ」
「そうですね~温まるっていいですね」
二人の口から甘い酒の香が漂った。
燗につけられた徳利から部屋にも熱が伝わるように、三人を包む空気も温まって感じられる。
その変化に気付いたのか、夢主は目を開いてそっと盆に手を伸ばした。
光沢のある猪口を掴み損ね、コトンと小さな音を立てるが、両手を伸ばしそっと持ち上げる。
「おい、そんなに酔っているのか」
「これが最後の一杯かもしれませんね」
そう言いながらも沖田は熱い徳利を手に、夢主に酒を注いでやった。
嬉しそうに酒を受けて微笑む夢主に男二人苦笑を浮かべるしかない。
「おいしぃ……なんでこんなに……ちがうのかな……」
体中がほくほくと温まり、夢主の体は手にした猪口の桜色に負けないほど赤く色付いている。
「とっても……あたたかぃれす……あついくらぃ……」
「おい、すぐに冷えるぞ」
羽織っていた半纏をするすると脱ぎ捨てた夢主を斎藤がたしなめるが、首を振って聞かずに後ろに羽織を追いやった。
「ちょうろいぃれす……」
「わっ、危ないっ!」
夢主が徳利に手を伸ばし、倒しそうになったのを沖田が何とか支えた。
「はぁ……僕が注いで上げますから、はい……しっかり持ってて下さいよ」
「あぁーーっ……」
「何でしょう……」
猪口に酒を注ぐと夢主が怒るように声を張った。
溢して夢主の手を濡らしたわけでもない。沖田は首を傾げた。
「ちょうどいいな、一度冷やせ」
沖田が運んでくれたいつもの酒を冷えた状態で猪口に注ぐが、夢主はふくれっ面を見せて受け取らなかった。
「さむいんれす・・・あついのがいいれしょう!」
「あぁ……気が戻ったと思ったら夢主ちゃんご機嫌斜めなんだ……」
沖田が苦笑いで酌を諦めて自分の酒を汲んでいると、斎藤が夢主から突き返された猪口の酒をそのまま呑み干した。
「あぁっ!」
「何だ」
「いぇっ……何でもありません……」
呑まないものを放っておいても仕方なかろうとばかりに、夢主の酒を呑み干した斎藤を恨めしそうに睨んで、沖田は自らの器を空にした。
再び静かになった夢主を余所に手酌で酒を進める二人。
冷酒の徳利を空ける頃、計ったように鉄之助が現れた。
「お待たせいたしました」
中に入った鉄之助は、にこにこと緩んだ笑顔で固まっている夢主に驚くが、斎藤に「気にするな」と言われ目を逸らすしかなかった。
「あの……お酒を用意していたら土方先生が怪訝な顔をされていましたので、程々になさった方がいいかもしれませんよ……こんな早くからと呟いていた気がします。はっきりとは聞こえなかったのですが……」
二人が土方の雷を貰わないようにと気遣う鉄之助に、沖田は笑顔で酒を向けた。
「鉄之助君も呑むかい」
「いいえっ、私はさほども呑めませんので、呑んでしまえば仕事が出来なくなってしまいます」
「そうですか、それは仕方ありませんね。お酒、どうもありがとう」
手を振って慌てて拒否した鉄之助は、沖田の許しにほぅっと安心し頭を下げて部屋をあとにした。
「土方さんに見付かっちゃったみたいですね~」
「あぁ、だが非番の過ごし方まで指示される謂れはないからな、気にせんでいいだろう」
斎藤はフンと笑うと早速熱い酒に手を伸ばし、猪口に注ぐと広がる香りに目を細めてから一気に呑み干した。
「いいな、普段はなかなか呑もうと思わんが、呑んでしまえば美味いもんだ」
「そうですね~温まるっていいですね」
二人の口から甘い酒の香が漂った。
燗につけられた徳利から部屋にも熱が伝わるように、三人を包む空気も温まって感じられる。
その変化に気付いたのか、夢主は目を開いてそっと盆に手を伸ばした。
光沢のある猪口を掴み損ね、コトンと小さな音を立てるが、両手を伸ばしそっと持ち上げる。
「おい、そんなに酔っているのか」
「これが最後の一杯かもしれませんね」
そう言いながらも沖田は熱い徳利を手に、夢主に酒を注いでやった。
嬉しそうに酒を受けて微笑む夢主に男二人苦笑を浮かべるしかない。
「おいしぃ……なんでこんなに……ちがうのかな……」
体中がほくほくと温まり、夢主の体は手にした猪口の桜色に負けないほど赤く色付いている。
「とっても……あたたかぃれす……あついくらぃ……」
「おい、すぐに冷えるぞ」
羽織っていた半纏をするすると脱ぎ捨てた夢主を斎藤がたしなめるが、首を振って聞かずに後ろに羽織を追いやった。
「ちょうろいぃれす……」
「わっ、危ないっ!」
夢主が徳利に手を伸ばし、倒しそうになったのを沖田が何とか支えた。
「はぁ……僕が注いで上げますから、はい……しっかり持ってて下さいよ」
「あぁーーっ……」
「何でしょう……」
猪口に酒を注ぐと夢主が怒るように声を張った。
溢して夢主の手を濡らしたわけでもない。沖田は首を傾げた。