87.向き合う恐怖
夢主名前設定
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「ねぇ、新津さんの言っていたこと分かりましたか」
「新津の」
「命を懸けて戦う、その結果……」
「命を懸けて戦いその結果失った時、残されたあいつのことを考えろと、そう言いたかったんだろ」
「そうですよね……やっぱりそうですよね」
沖田は語気を強めて斎藤に顔を向けた。
「それくらいは俺だって考えるさ。だが、それで俺の戦いを変えるわけにはいかん」
「僕だって……でも僕は絶対に死んだりしない。死なないって決めてるんだ」
「ほぉ、新選組の一番隊組長とは思えない言葉だな」
「勘違いしないで下さい!僕は絶対に退かない、保身を第一に考えたりしない。だけど、僕は必ず勝って、死んだりしないんだ」
「そいつは大した自信で」
「斎藤さんはどうなんですか、貴方が死ぬようなことがあったら……僕は気にしませんけどね、考えたくも無い……」
斎藤が帰らなかった時の夢主を想像するだけで、胸が締め付けられる。
そんな自分が沖田は嫌になるが、現実なのだから受け入れるしかなかった。
「俺は不死身だ、心配するな。それに」
「それに……なんですか」
「俺は戦いから離れられん。だから、そばにいる間だけでも応えてやるつもりでは……いる」
斎藤はらしくない自らの言葉を自嘲するように、フッと息を吐いて酒を呑み干した。
「想われて応えてやれない男など」
空になった猪口に話しかけるが、思いついたように酒を溢れるまで注ぎ、一気に呑み干した。
惚れた女に求められたら応えてやるのが男の甲斐性と言うものだろう……斎藤は口にしたい言葉を酒と共にぐっと飲み込んだ。
「何でしょう、それは僕への当て付けですか……」
「君のことなど言ってないんだがな、そういえば君はそうだったか、逃げ回っていたな」
「相手にもよるでしょう、逆だったらどうだったんです」
「俺ならそばにも寄らせんさ。中途半端にするから悪いんだ」
「そんな……」
沖田は不貞腐れながら手酌で続け様に酒を流し込んだ。
「想う人は僕は守りきって見せますから、斎藤さんは思う存分勝手に戦ってくればいいんです」
「他人事だな」
「戦いにしか生きられないんでしょう!」
「戦わねばならない時があれば俺は刀を取る。だが命を捨てたい訳ではないさ。君は惚れた女を何より守りたいんだろう」
斎藤に訊ねられた沖田は据わった目で睨み返した。
「俺と君は少しだけ視点が違うんだよ、俺は言うなれば……あいつが安心して笑っていられる世を保ちたいのさ」
「世を保つ……」
「あぁ、平和な時代が訪れれば大切な者の命を心配して帰りを待つ必要もないだろう」
「斎藤さん……」
「その為には今、俺達が命を張らねばならんのだ。この理屈があの新津に通じるとは思わんが、通じなくて構わん。俺には俺の正義がある。世を乱し弱い者達を虐げる輩がいるのならば放っては置けない」
「正義漢だな、斎藤さん」
「勝手に言ってろ」
話が止まらなくなってきた二人をたしなめるように、布団から呻き声が聞こえた。
「新津の」
「命を懸けて戦う、その結果……」
「命を懸けて戦いその結果失った時、残されたあいつのことを考えろと、そう言いたかったんだろ」
「そうですよね……やっぱりそうですよね」
沖田は語気を強めて斎藤に顔を向けた。
「それくらいは俺だって考えるさ。だが、それで俺の戦いを変えるわけにはいかん」
「僕だって……でも僕は絶対に死んだりしない。死なないって決めてるんだ」
「ほぉ、新選組の一番隊組長とは思えない言葉だな」
「勘違いしないで下さい!僕は絶対に退かない、保身を第一に考えたりしない。だけど、僕は必ず勝って、死んだりしないんだ」
「そいつは大した自信で」
「斎藤さんはどうなんですか、貴方が死ぬようなことがあったら……僕は気にしませんけどね、考えたくも無い……」
斎藤が帰らなかった時の夢主を想像するだけで、胸が締め付けられる。
そんな自分が沖田は嫌になるが、現実なのだから受け入れるしかなかった。
「俺は不死身だ、心配するな。それに」
「それに……なんですか」
「俺は戦いから離れられん。だから、そばにいる間だけでも応えてやるつもりでは……いる」
斎藤はらしくない自らの言葉を自嘲するように、フッと息を吐いて酒を呑み干した。
「想われて応えてやれない男など」
空になった猪口に話しかけるが、思いついたように酒を溢れるまで注ぎ、一気に呑み干した。
惚れた女に求められたら応えてやるのが男の甲斐性と言うものだろう……斎藤は口にしたい言葉を酒と共にぐっと飲み込んだ。
「何でしょう、それは僕への当て付けですか……」
「君のことなど言ってないんだがな、そういえば君はそうだったか、逃げ回っていたな」
「相手にもよるでしょう、逆だったらどうだったんです」
「俺ならそばにも寄らせんさ。中途半端にするから悪いんだ」
「そんな……」
沖田は不貞腐れながら手酌で続け様に酒を流し込んだ。
「想う人は僕は守りきって見せますから、斎藤さんは思う存分勝手に戦ってくればいいんです」
「他人事だな」
「戦いにしか生きられないんでしょう!」
「戦わねばならない時があれば俺は刀を取る。だが命を捨てたい訳ではないさ。君は惚れた女を何より守りたいんだろう」
斎藤に訊ねられた沖田は据わった目で睨み返した。
「俺と君は少しだけ視点が違うんだよ、俺は言うなれば……あいつが安心して笑っていられる世を保ちたいのさ」
「世を保つ……」
「あぁ、平和な時代が訪れれば大切な者の命を心配して帰りを待つ必要もないだろう」
「斎藤さん……」
「その為には今、俺達が命を張らねばならんのだ。この理屈があの新津に通じるとは思わんが、通じなくて構わん。俺には俺の正義がある。世を乱し弱い者達を虐げる輩がいるのならば放っては置けない」
「正義漢だな、斎藤さん」
「勝手に言ってろ」
話が止まらなくなってきた二人をたしなめるように、布団から呻き声が聞こえた。