87.向き合う恐怖
夢主名前設定
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「ありがとうございます」
夢主が受け取ると、斎藤もそばに寄り箱を確認した。
箱の小ささに伴って重さも軽くなっている。
「夢主ちゃん、ここで一度開けて確認したほうがいいですよ!」
「おいおい、随分な言い草だな、沖田」
「仕方ないじゃありませんか、またすぐに割れないか心配なんです!夢主ちゃんにまたお湯がかかったら大変だ」
「そこまで言うなら、とりあえず開けてみろ」
夢主は比古の隣に腰掛け、斎藤と沖田に見守られながらゆっくり紐を解いた。
蓋が開き、最初に感想を述べたのは斎藤だった。
「ほぅ……今度は猪口か。いい大きさだ」
「あぁ。お前らも酒は呑むだろう」
「僕らは呑みますけど……夢主ちゃんは」
「呑まんのか」
「呑みたいのですが、呑むとすぐに寝ちゃうんです……」
「そうだったのか。確かに酒に強い女には見えんな」
比古は納得するように夢主の優しい顔立ちを確認した。
「まぁ、俺達の酒に付き合う時にだけでも使えばいいだろう」
二人の酒に同席するのが大好きな夢主、斎藤の言葉に微笑んだ。
嬉しそうに箱の中を眺める夢主とは対照的に、沖田は不思議そうに中を覗いていた。
「でも何でお猪口だけなんですか、普通徳利とかお銚子も一緒なんじゃあ」
「あぁ、それなんだがな。一緒に作ったんだが割れた」
「えぇっ!大丈夫ですか、お猪口も割れませんか」
「そっちは大丈夫だ!俺が何度か湯や水を入れて確かめたからな。大丈夫だ」
比古と沖田が言い合う隙に斎藤は箱から猪口を取り出し確認し、納得して箱に戻した。
「大丈夫そうだ。ありがたく頂戴しよう」
「そうですか……ありがとうございます」
斎藤の一言に安心して夢主は比古に礼を述べた。
「ところでお前少し変わったな」
「えっ、そうでしょうか」
「あぁ良く分かる」
比古はすぐそばに座る夢主の僅かな変化に気付いた。
比古が自分に何を見つけたのかと、夢主は顔を見上げた。
これほど話をするのは今日が初めてだ。
「まぁよくあることか……変なことを言って悪かったな」
「あぁっ、待ってください!」
「何だ、礼ならもういいぞ。先日の酒で充分だ」
「礼って、謝罪して欲しいくらいですよ」
立ち上がり去ろうとする比古に沖田が厭味を言った。
夢主にまだ謝罪していない。火傷の件を根に持っていた。
「ほぉ、謝罪か」
ぎろりと凄み近寄る比古に対し、沖田が身構えた。
どちらも引かない気配に、夢主は箱を持ったまま慌てて間に入った。
「待ってください、沖田さんも新津さんもっ」
「冗談だ、そう構えるな」
「僕だってそんな気ありませんよ」
比古と沖田は互いを気に入っているはずなのだが、気を許してはいない不思議な関係だ。
すぐに比古は笑みを浮かべて怒気を消し、沖田も応じて構えを解いた。
「あの……もう行ってしまうんですか」
「用は済んだだろう」
「そうなんですが……少し、お話しませんか」
「話だと」
落ち着いた比古を今度は夢主が呼び止めた。
話がしたい。余計な手を使ったところで無駄なはずだと、思い切ってその旨を伝えた。
比古は暫く口を閉じて夢主を見下ろし、続けて斎藤と沖田の姿を一瞥した。
「お前とだけなら構わんぞ、夢主」
応じてもらえると思わなかった夢主は驚き、確認するように二人を見た。
比古が京の町で剣を振るう男達を嫌っていると知る二人は、仕方あるまいと頷くしかない。
「ただ、先日の一件があったばかりです。僕達の目の届く所でなければ、例え相手が新津さんでも僕は頷けません」
「同感だ」
「先日の件だと」
夢主の身に起きた出来事を知らない比古は顔をしかめた。
夢主はそれで構わないと二人に向かい返事をするが、適当な場所が思い浮かばず三人の男の顔を見回した。
話がどんなものになるか分からないので、市中の人が多い店では困るのだ。
夢主が受け取ると、斎藤もそばに寄り箱を確認した。
箱の小ささに伴って重さも軽くなっている。
「夢主ちゃん、ここで一度開けて確認したほうがいいですよ!」
「おいおい、随分な言い草だな、沖田」
「仕方ないじゃありませんか、またすぐに割れないか心配なんです!夢主ちゃんにまたお湯がかかったら大変だ」
「そこまで言うなら、とりあえず開けてみろ」
夢主は比古の隣に腰掛け、斎藤と沖田に見守られながらゆっくり紐を解いた。
蓋が開き、最初に感想を述べたのは斎藤だった。
「ほぅ……今度は猪口か。いい大きさだ」
「あぁ。お前らも酒は呑むだろう」
「僕らは呑みますけど……夢主ちゃんは」
「呑まんのか」
「呑みたいのですが、呑むとすぐに寝ちゃうんです……」
「そうだったのか。確かに酒に強い女には見えんな」
比古は納得するように夢主の優しい顔立ちを確認した。
「まぁ、俺達の酒に付き合う時にだけでも使えばいいだろう」
二人の酒に同席するのが大好きな夢主、斎藤の言葉に微笑んだ。
嬉しそうに箱の中を眺める夢主とは対照的に、沖田は不思議そうに中を覗いていた。
「でも何でお猪口だけなんですか、普通徳利とかお銚子も一緒なんじゃあ」
「あぁ、それなんだがな。一緒に作ったんだが割れた」
「えぇっ!大丈夫ですか、お猪口も割れませんか」
「そっちは大丈夫だ!俺が何度か湯や水を入れて確かめたからな。大丈夫だ」
比古と沖田が言い合う隙に斎藤は箱から猪口を取り出し確認し、納得して箱に戻した。
「大丈夫そうだ。ありがたく頂戴しよう」
「そうですか……ありがとうございます」
斎藤の一言に安心して夢主は比古に礼を述べた。
「ところでお前少し変わったな」
「えっ、そうでしょうか」
「あぁ良く分かる」
比古はすぐそばに座る夢主の僅かな変化に気付いた。
比古が自分に何を見つけたのかと、夢主は顔を見上げた。
これほど話をするのは今日が初めてだ。
「まぁよくあることか……変なことを言って悪かったな」
「あぁっ、待ってください!」
「何だ、礼ならもういいぞ。先日の酒で充分だ」
「礼って、謝罪して欲しいくらいですよ」
立ち上がり去ろうとする比古に沖田が厭味を言った。
夢主にまだ謝罪していない。火傷の件を根に持っていた。
「ほぉ、謝罪か」
ぎろりと凄み近寄る比古に対し、沖田が身構えた。
どちらも引かない気配に、夢主は箱を持ったまま慌てて間に入った。
「待ってください、沖田さんも新津さんもっ」
「冗談だ、そう構えるな」
「僕だってそんな気ありませんよ」
比古と沖田は互いを気に入っているはずなのだが、気を許してはいない不思議な関係だ。
すぐに比古は笑みを浮かべて怒気を消し、沖田も応じて構えを解いた。
「あの……もう行ってしまうんですか」
「用は済んだだろう」
「そうなんですが……少し、お話しませんか」
「話だと」
落ち着いた比古を今度は夢主が呼び止めた。
話がしたい。余計な手を使ったところで無駄なはずだと、思い切ってその旨を伝えた。
比古は暫く口を閉じて夢主を見下ろし、続けて斎藤と沖田の姿を一瞥した。
「お前とだけなら構わんぞ、夢主」
応じてもらえると思わなかった夢主は驚き、確認するように二人を見た。
比古が京の町で剣を振るう男達を嫌っていると知る二人は、仕方あるまいと頷くしかない。
「ただ、先日の一件があったばかりです。僕達の目の届く所でなければ、例え相手が新津さんでも僕は頷けません」
「同感だ」
「先日の件だと」
夢主の身に起きた出来事を知らない比古は顔をしかめた。
夢主はそれで構わないと二人に向かい返事をするが、適当な場所が思い浮かばず三人の男の顔を見回した。
話がどんなものになるか分からないので、市中の人が多い店では困るのだ。