84.見えない罅 ※
夢主名前設定
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……そういえば明治の夢に沖田さんはいなかったけど……斎藤さんの夢だからいなかったのかな……
夢主は斎藤の後姿を見て、今朝の夢を思い出した。
斎藤しか出てこなかったのはただの偶然だろうと、隣を歩く沖田に目を移す。
「あの、沖田さん……最近のお体の具合は……」
「急にどうしたんです、すこぶる元気ですよ!最近屯所に出入りしているお医者さんのお墨付きですから。ご存知ですか、松本……」
「良順先生!!知ってます、未来でも有名です。幕府のお医者さんですよね、松本先生のお墨付きなんですか、沖田さん凄いです!本当に凄いですっ」
確かに目の前の沖田は顔色もよく、咳で苦しむ姿も目にしていない。
「そうですか……そんなに喜んでいただけるとは、ありがとう。ちゃんと労咳のことも聞いたんですよ。家系なのでとっても気になるんですって。でも全くそんな気配無いから安心なさいと言っていただきました」
「沖田さん頑張ったんですね……私の知る限りでは、松本先生が屯所に足を運ぶようになった頃には……」
沖田を見つめ一度息を呑んで続けた。
「手遅れだったって……聞いたことがあります。だから沖田さん……本当に……」
「ははっ、ありがとう夢主ちゃん」
涙が零れそうな夢主を沖田はありがたみを込めて笑い、斎藤も人の為に涙を浮かべる夢主をやれやれと見守った。
沖田は本当に病を乗り越えて未来を切り開いたのかもしれない。
三人とも同じ思いを抱いた。
酒屋に着くと、沖田の顔を見た店の主人が会釈をし、言われるまでもなく預かりの品を運んできた。
沖田が頻繁に通った為、比古の作品が届いた翌日にはこうして夢主の耳にその話が届いたのだ。
「これがお預かりの品です」
酒屋の主人が取り出したのは、細長く夢主でも両手で難なく持てる大きさの木箱。
「これが新津さんの……」
「早く空けてみましょう!」
沖田が夢主と斎藤の間から顔を出し促すと、斎藤はその動きに舌打ちをした。
「全く君はどこからでも顔を出すな」
「何言ってるんですか、新津さんからお話を聞いて酒屋さんに通ったのは僕ですよ!どこから覗いたっていいじゃありませんか!」
「フン、さほど遠くも無いこの場所について来なくたっていいんだぜ」
「お忘れですかっ、単独で夢主ちゃんを連れ出しちゃいけないんですから!」
夢主がやってきて間もない頃に土方が決めた約束事を、沖田は改めて斎藤に突きつけた。
「あの取り決めはまだ有効なのか」
面倒だと顔に表し、眉間に皺を寄せ沖田を見下ろす斎藤を、沖田もむっと睨み返した。
「夢主ちゃんの為なんですから」
「分かったよ。で、開けるのか」
屯所に戻るのを待たずこの場で中を開けてしまうのかどうするかと、三人揃って木箱を見つめた。
「ここではなんですから、どこかで……」
店の主人に礼を述べ、夢主は謝礼の気持ちを込めて比古に酒を選んでも良いか、斎藤と沖田に確認した。
約束どおり陶芸の品を譲ってくれた比古への酒だ。
二人はもちろんと快諾してくれた。
「朝日山、万寿……このお酒で間違いないと思います」
比古の愛飲する酒。
自分の代わりに酒代を払ってくれる二人に嬉しそうに銘柄を伝えた。
斎藤も沖田も記憶している、比古の手にあった酒瓶の文字。同じ酒を店の主人に頼むと、そのまま店に預けた。
そのうちに比古の手に渡るだろう。
夢主が礼を伝えたいと、主人に比古への伝言も頼んだ。
三人は酒屋を出るとすぐそばの甘味処に腰を落ち着け、早速中身を確認した。
夢主は斎藤の後姿を見て、今朝の夢を思い出した。
斎藤しか出てこなかったのはただの偶然だろうと、隣を歩く沖田に目を移す。
「あの、沖田さん……最近のお体の具合は……」
「急にどうしたんです、すこぶる元気ですよ!最近屯所に出入りしているお医者さんのお墨付きですから。ご存知ですか、松本……」
「良順先生!!知ってます、未来でも有名です。幕府のお医者さんですよね、松本先生のお墨付きなんですか、沖田さん凄いです!本当に凄いですっ」
確かに目の前の沖田は顔色もよく、咳で苦しむ姿も目にしていない。
「そうですか……そんなに喜んでいただけるとは、ありがとう。ちゃんと労咳のことも聞いたんですよ。家系なのでとっても気になるんですって。でも全くそんな気配無いから安心なさいと言っていただきました」
「沖田さん頑張ったんですね……私の知る限りでは、松本先生が屯所に足を運ぶようになった頃には……」
沖田を見つめ一度息を呑んで続けた。
「手遅れだったって……聞いたことがあります。だから沖田さん……本当に……」
「ははっ、ありがとう夢主ちゃん」
涙が零れそうな夢主を沖田はありがたみを込めて笑い、斎藤も人の為に涙を浮かべる夢主をやれやれと見守った。
沖田は本当に病を乗り越えて未来を切り開いたのかもしれない。
三人とも同じ思いを抱いた。
酒屋に着くと、沖田の顔を見た店の主人が会釈をし、言われるまでもなく預かりの品を運んできた。
沖田が頻繁に通った為、比古の作品が届いた翌日にはこうして夢主の耳にその話が届いたのだ。
「これがお預かりの品です」
酒屋の主人が取り出したのは、細長く夢主でも両手で難なく持てる大きさの木箱。
「これが新津さんの……」
「早く空けてみましょう!」
沖田が夢主と斎藤の間から顔を出し促すと、斎藤はその動きに舌打ちをした。
「全く君はどこからでも顔を出すな」
「何言ってるんですか、新津さんからお話を聞いて酒屋さんに通ったのは僕ですよ!どこから覗いたっていいじゃありませんか!」
「フン、さほど遠くも無いこの場所について来なくたっていいんだぜ」
「お忘れですかっ、単独で夢主ちゃんを連れ出しちゃいけないんですから!」
夢主がやってきて間もない頃に土方が決めた約束事を、沖田は改めて斎藤に突きつけた。
「あの取り決めはまだ有効なのか」
面倒だと顔に表し、眉間に皺を寄せ沖田を見下ろす斎藤を、沖田もむっと睨み返した。
「夢主ちゃんの為なんですから」
「分かったよ。で、開けるのか」
屯所に戻るのを待たずこの場で中を開けてしまうのかどうするかと、三人揃って木箱を見つめた。
「ここではなんですから、どこかで……」
店の主人に礼を述べ、夢主は謝礼の気持ちを込めて比古に酒を選んでも良いか、斎藤と沖田に確認した。
約束どおり陶芸の品を譲ってくれた比古への酒だ。
二人はもちろんと快諾してくれた。
「朝日山、万寿……このお酒で間違いないと思います」
比古の愛飲する酒。
自分の代わりに酒代を払ってくれる二人に嬉しそうに銘柄を伝えた。
斎藤も沖田も記憶している、比古の手にあった酒瓶の文字。同じ酒を店の主人に頼むと、そのまま店に預けた。
そのうちに比古の手に渡るだろう。
夢主が礼を伝えたいと、主人に比古への伝言も頼んだ。
三人は酒屋を出るとすぐそばの甘味処に腰を落ち着け、早速中身を確認した。