84.見えない罅 ※
夢主名前設定
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斎藤が新時代の新たな脅威に立ち向かう為、かつての強敵である緋村の元を訪れる。
神谷道場前夜……何故突然そんな夢を見たのか、どれだけ熟思しても理由は見つからない。
しかし斎藤と夫婦になっていた……
夢であっても幸せな一時を過ごしたことに夢主の頬が緩んだ。
「お前を愛でていなかったというのなら、俺は何をしていたんだ」
斎藤は揶揄うつもりで訊いたのだが、夢主は斎藤を見上げると真剣に言葉を選び、話し始めた。
「斎藤さんは……新しい時代の中でも今と変わらないお仕事を……町を守って人々を守るお仕事をなさっていました。とっても素敵でした……」
夢の中の警官姿の斎藤を思い出し、素敵と呟いて目元を細める夢主に、斎藤は気恥ずかしさを感じたのか咳払いをして一度目を逸らした。
「フン、場所が変わろうが時代が変わろうが俺の中の正義は変わらんさ」
「はぃ……」
「所で今日は例の陶芸家の作品を受け取りに行く日だろ、昨日酒屋に届いたと沖田君が確認してきたのを覚えているか」
「あっ!はい、覚えています!」
「行けそうか」
「もちろんですっ」
顔が赤く体が熱かったのは夢のせい、夢主は元気よく答えた。
「そうか、日中の仕事が終わったら連れて行ってやる」
「わかりました、ありがとうございます」
立ち上がり自分の部屋に戻る斎藤の後姿を眺め、夢主は夢の中の制服姿の斎藤を重ねた。
……斎藤さん、制服とっても似合ってたな……でも和服姿も凄く素敵……
「はじめ……さん」
夢の中の自分の言葉を無意識に口にしてしまい、慌てて口を閉じた。
耳に届いたのか斎藤がゆっくり振り返って夢主を見下ろした。
「いつまでも寝ぼけてないでさっさと着替えろよ」
「は、はぃっ」
突然下の名を呼ばれ体の奥がビクリと反応した斎藤だが、平静を装い襖を閉じた。
斎藤の反応が無く、夢主はほっと肩の力を抜いた。
「聞こえなかったのかな……良かった……」
呼びかけた夢主の鼓動も速く激しく騒いでいた。閉じた襖が再び開かないことを確認して安堵の息を吐く。
もしかしたら比古の器の話を聞いて夢に明治という時代が出てきたのかもしれない。夢主は少しだけ納得して自分に言い聞かせた。
斎藤の傷はすっかり回復し、市中見回りの隊務に出られる体に戻っていた。
斎藤も沖田も一通り昼の仕事を終え、空いた時間に二人揃って夢主を屯所から連れ出した。
「怪我をして一週間、部屋に控えて分かったがこの屯所は喧しいな」
「ふふっ、確かに日中は沢山の方がいらして、いろんな物を売っているみたいですね」
土方が指示し作らせた塀により、寺と屯所部分に境があるとはいえ、その賑やかな様子は夢主達にもよく届いていた。
「あぁ。普段は部屋を出ていることが多いからさほど気にならんかったが、これでは外部の人間が入り放題だな」
「お寺ですし、人の出入りは仕方ないのでしょうね~僕はたいして気になりませんけど。たまに明らかに怪しい人間がいるのも確かですね」
人が増え壬生の頃より動きを制限されている夢主は、斎藤と沖田のぼやきに笑って頷いた。
夢主も勝手元にたまに顔を出すが、他は茶を入れるくらい、あまり屯所内を出歩かない。
隊から支給される仕出し弁当で済ませる隊士が多く、勝手元もさほど人手を必要としていなかった。
斎藤の部屋の前の広場で外の空気を楽しみ、時折幹部の皆と境内を散歩するのが楽しみになっていた。
「前は空いている道場にこっそり入ることも出来たんですけど、今はさすがに出来なくて……せっかく沖田さんに教えてもらったのに忘れちゃいそうです」
壬生から移築された道場はいつでも誰かが鍛錬に励んでいた。
隊士の数も増えたのだから当然だ。
「ははっ、仕方がありませんね」
「まぁ、道場はいつも誰かしらいるからな。仕方あるまい。窮屈か」
「はぃ……少しっ」
正直に答える夢主に斎藤も沖田も苦笑いだ。
神谷道場前夜……何故突然そんな夢を見たのか、どれだけ熟思しても理由は見つからない。
しかし斎藤と夫婦になっていた……
夢であっても幸せな一時を過ごしたことに夢主の頬が緩んだ。
「お前を愛でていなかったというのなら、俺は何をしていたんだ」
斎藤は揶揄うつもりで訊いたのだが、夢主は斎藤を見上げると真剣に言葉を選び、話し始めた。
「斎藤さんは……新しい時代の中でも今と変わらないお仕事を……町を守って人々を守るお仕事をなさっていました。とっても素敵でした……」
夢の中の警官姿の斎藤を思い出し、素敵と呟いて目元を細める夢主に、斎藤は気恥ずかしさを感じたのか咳払いをして一度目を逸らした。
「フン、場所が変わろうが時代が変わろうが俺の中の正義は変わらんさ」
「はぃ……」
「所で今日は例の陶芸家の作品を受け取りに行く日だろ、昨日酒屋に届いたと沖田君が確認してきたのを覚えているか」
「あっ!はい、覚えています!」
「行けそうか」
「もちろんですっ」
顔が赤く体が熱かったのは夢のせい、夢主は元気よく答えた。
「そうか、日中の仕事が終わったら連れて行ってやる」
「わかりました、ありがとうございます」
立ち上がり自分の部屋に戻る斎藤の後姿を眺め、夢主は夢の中の制服姿の斎藤を重ねた。
……斎藤さん、制服とっても似合ってたな……でも和服姿も凄く素敵……
「はじめ……さん」
夢の中の自分の言葉を無意識に口にしてしまい、慌てて口を閉じた。
耳に届いたのか斎藤がゆっくり振り返って夢主を見下ろした。
「いつまでも寝ぼけてないでさっさと着替えろよ」
「は、はぃっ」
突然下の名を呼ばれ体の奥がビクリと反応した斎藤だが、平静を装い襖を閉じた。
斎藤の反応が無く、夢主はほっと肩の力を抜いた。
「聞こえなかったのかな……良かった……」
呼びかけた夢主の鼓動も速く激しく騒いでいた。閉じた襖が再び開かないことを確認して安堵の息を吐く。
もしかしたら比古の器の話を聞いて夢に明治という時代が出てきたのかもしれない。夢主は少しだけ納得して自分に言い聞かせた。
斎藤の傷はすっかり回復し、市中見回りの隊務に出られる体に戻っていた。
斎藤も沖田も一通り昼の仕事を終え、空いた時間に二人揃って夢主を屯所から連れ出した。
「怪我をして一週間、部屋に控えて分かったがこの屯所は喧しいな」
「ふふっ、確かに日中は沢山の方がいらして、いろんな物を売っているみたいですね」
土方が指示し作らせた塀により、寺と屯所部分に境があるとはいえ、その賑やかな様子は夢主達にもよく届いていた。
「あぁ。普段は部屋を出ていることが多いからさほど気にならんかったが、これでは外部の人間が入り放題だな」
「お寺ですし、人の出入りは仕方ないのでしょうね~僕はたいして気になりませんけど。たまに明らかに怪しい人間がいるのも確かですね」
人が増え壬生の頃より動きを制限されている夢主は、斎藤と沖田のぼやきに笑って頷いた。
夢主も勝手元にたまに顔を出すが、他は茶を入れるくらい、あまり屯所内を出歩かない。
隊から支給される仕出し弁当で済ませる隊士が多く、勝手元もさほど人手を必要としていなかった。
斎藤の部屋の前の広場で外の空気を楽しみ、時折幹部の皆と境内を散歩するのが楽しみになっていた。
「前は空いている道場にこっそり入ることも出来たんですけど、今はさすがに出来なくて……せっかく沖田さんに教えてもらったのに忘れちゃいそうです」
壬生から移築された道場はいつでも誰かが鍛錬に励んでいた。
隊士の数も増えたのだから当然だ。
「ははっ、仕方がありませんね」
「まぁ、道場はいつも誰かしらいるからな。仕方あるまい。窮屈か」
「はぃ……少しっ」
正直に答える夢主に斎藤も沖田も苦笑いだ。