84.見えない罅 ※
夢主名前設定
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寝室に入ると斎藤は夢主を抱えたまま、畳まれた布団を足で蹴り広げた。
乱暴な動作にもかかわらず三つ折りの布団がしっかりと広がるのは、足技にも長けている証拠なのか。
夢主は半分呆れて驚いた。
「ひゃ……」
ふわりと布団に下ろされた夢主は思わず声を上げた。
自分の上に覆いかぶさり両手をつく斎藤を見上げる。
久しぶりの感覚につい頬を染めるが、斎藤の目の色が少し変わっていることに気付いた。
ただ久しく見ていなかったから……そんな気のせいには思えなかった。
「一さん……何かあったんですか、いつもと違います……目の色が……」
「フッ、いつも……か。いつも家にいない甲斐性無しの旦那だがな」
「もぉっ、真面目に心配なんです」
フッと笑い斎藤が首を少し傾げておどけるが、夢主は真剣に聞き返した。
「明日、抜刀斎の所へ行く」
「じゃぁ……」
「あぁ、志々雄が動き出した。ここ暫く家に帰れなかったのは志々雄の動きを調べていたからだ。すまなかったな、先に言ってやれず」
「いぇ、一さんのお仕事の立場はわかっているつもりです」
夢主がニコリとたおやかに微笑むと、斎藤は理解され嬉しい気持ちを隠し、顔色が見えないよう唇を落とし夢主の視界を塞いだ。
二度三度と夢主の柔らかい唇を味わい気持ちを落ち着ける。
顔を離すと、夢主の顔はすっかり上気し潤んだ瞳で、必死に込み上げてくる刺激的な感覚を抑えていた。
「また暫く戻れそうにない」
「わかりました」
「危険が及ぶかもしれんぞ」
「心得ています……」
今にも嬌声を響かせそうな赤らんだ顔で夢主は気丈に振る舞い、落ち着きを装った。
そんないじらしい姿に斎藤は愛おしさを感じずにいられなかった。
夢主はきっと全てを察していると見つめた後、斎藤は再び唇を動かし始めた――
「……ひやぁあっ!!」
我に返ると、夢主はいつもの布団の中で飛び起きていた。
体の芯が熱く疼き、顔が火照り、自分でも赤くなっているのが分かる。
日頃意識することの無い心臓がこれでもかと激しく動いていた。
顔を上げると両隣を白い襖で仕切られたいつもの空間、小さいながらも新しい屯所に作られた自分の部屋だ。
朝の日差しが部屋に差し込こみ、眩しいほどに明るかった。
「ゆ……夢……何であんな夢を……」
「おい、どうした大丈夫か、随分とうなされていたな」
返事をする前に開いた襖から斎藤の顔が現れた。
そのまま中に入ってくる斎藤から逃れるように夢主は無意識に仰け反った。
「わっ、斎藤さん!!今は駄目ですっ!」
「随分と赤いな、また熱か」
夢主が拒否するのを相手にせず、斎藤はそばに寄り顔色を見た。
己の姿を見た途端、更に赤みを増す顔を見つめ、斎藤はフッと息を吐いた。
「いえっ、違いますっ」
「ほぅ……うなされていると言うより喘いでいるようだったが、まさか本当にそんな夢でも見ていたのか」
「ぇえっ、違いますよっ!」
「図星か」
ククっと喉を鳴らし笑う斎藤から顔を背けると夢主は言い訳を始めた。
「違います、め……明治の夢を見ていたんです。あまりに現実的な夢で吃驚しました……」
夢で斎藤に責めらた首筋がジンジンと痺れていた。
夢の中の感触だとは思えないほどに、体には名残があった。
「めいじ」
「あっ、新しい元号です……そこに斎藤さんがいたんです」
「ほぅ、俺に責められて喘いでいたのか」
「ちっ、ちがっ違いますっ!!」
ますます赤くなる夢主に、斎藤はまた図星かと口元を歪め笑いを漏らした。
乱暴な動作にもかかわらず三つ折りの布団がしっかりと広がるのは、足技にも長けている証拠なのか。
夢主は半分呆れて驚いた。
「ひゃ……」
ふわりと布団に下ろされた夢主は思わず声を上げた。
自分の上に覆いかぶさり両手をつく斎藤を見上げる。
久しぶりの感覚につい頬を染めるが、斎藤の目の色が少し変わっていることに気付いた。
ただ久しく見ていなかったから……そんな気のせいには思えなかった。
「一さん……何かあったんですか、いつもと違います……目の色が……」
「フッ、いつも……か。いつも家にいない甲斐性無しの旦那だがな」
「もぉっ、真面目に心配なんです」
フッと笑い斎藤が首を少し傾げておどけるが、夢主は真剣に聞き返した。
「明日、抜刀斎の所へ行く」
「じゃぁ……」
「あぁ、志々雄が動き出した。ここ暫く家に帰れなかったのは志々雄の動きを調べていたからだ。すまなかったな、先に言ってやれず」
「いぇ、一さんのお仕事の立場はわかっているつもりです」
夢主がニコリとたおやかに微笑むと、斎藤は理解され嬉しい気持ちを隠し、顔色が見えないよう唇を落とし夢主の視界を塞いだ。
二度三度と夢主の柔らかい唇を味わい気持ちを落ち着ける。
顔を離すと、夢主の顔はすっかり上気し潤んだ瞳で、必死に込み上げてくる刺激的な感覚を抑えていた。
「また暫く戻れそうにない」
「わかりました」
「危険が及ぶかもしれんぞ」
「心得ています……」
今にも嬌声を響かせそうな赤らんだ顔で夢主は気丈に振る舞い、落ち着きを装った。
そんないじらしい姿に斎藤は愛おしさを感じずにいられなかった。
夢主はきっと全てを察していると見つめた後、斎藤は再び唇を動かし始めた――
「……ひやぁあっ!!」
我に返ると、夢主はいつもの布団の中で飛び起きていた。
体の芯が熱く疼き、顔が火照り、自分でも赤くなっているのが分かる。
日頃意識することの無い心臓がこれでもかと激しく動いていた。
顔を上げると両隣を白い襖で仕切られたいつもの空間、小さいながらも新しい屯所に作られた自分の部屋だ。
朝の日差しが部屋に差し込こみ、眩しいほどに明るかった。
「ゆ……夢……何であんな夢を……」
「おい、どうした大丈夫か、随分とうなされていたな」
返事をする前に開いた襖から斎藤の顔が現れた。
そのまま中に入ってくる斎藤から逃れるように夢主は無意識に仰け反った。
「わっ、斎藤さん!!今は駄目ですっ!」
「随分と赤いな、また熱か」
夢主が拒否するのを相手にせず、斎藤はそばに寄り顔色を見た。
己の姿を見た途端、更に赤みを増す顔を見つめ、斎藤はフッと息を吐いた。
「いえっ、違いますっ」
「ほぅ……うなされていると言うより喘いでいるようだったが、まさか本当にそんな夢でも見ていたのか」
「ぇえっ、違いますよっ!」
「図星か」
ククっと喉を鳴らし笑う斎藤から顔を背けると夢主は言い訳を始めた。
「違います、め……明治の夢を見ていたんです。あまりに現実的な夢で吃驚しました……」
夢で斎藤に責めらた首筋がジンジンと痺れていた。
夢の中の感触だとは思えないほどに、体には名残があった。
「めいじ」
「あっ、新しい元号です……そこに斎藤さんがいたんです」
「ほぅ、俺に責められて喘いでいたのか」
「ちっ、ちがっ違いますっ!!」
ますます赤くなる夢主に、斎藤はまた図星かと口元を歪め笑いを漏らした。