84.見えない罅 ※
夢主名前設定
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……鮮やかな西の空に、闇が迫り始めている。
夢主は夕陽が赤く染める土の道を歩く自分に気付き、足を止めた。
「私、何してるんだろう……早く帰らなくちゃ……」
空の向こうではカラス達が鳴きながら山へ戻って行く。
ここはどこなのか……考えもせず歩く夢主は、店が並んだ賑やかな通りから外れて進んで行った。
辺りは随分と静まり返っている。
異様に感じるほどの静けさに夢主は肌を粟立たせ、歩みを速めて家路を急いだ。
その時、ふと男に声を掛けられて振り向いた。黒い西洋服姿の男。
その姿に何故だか落ち着く自分がいた。
「黄昏時の女性の一人歩きは危ないですよ、お嬢さん、本官がお送りしましょう」
「ふふっ……ありがとうございます。でももう危ないという年頃でもありませんから……」
……年……
自分で口にした言葉を不思議に思いながらも顔を上げると、男が続ける言葉に素直に耳を傾けた。
「警察官として、こんな時間に女性を一人で歩かせるわけには参りません。それに女性の魅力に歳など関係ありませんよ、貴女はとてもお美しい……」
……警察官……あぁ、警察の人……
懐かしい感覚に違和感を抱くこともなく、二人は並んで歩き始めた。
「そんな、お上手……でも私これでも人妻なんです。人妻なんて相手にもされませんから」
……人妻……そっか、私、人妻なんだ……
不意に口にした言葉にも疑いを抱かず会話を続けた。
「とんでもない、そんなもの夜盗には関係のないことです。それにしても残念です、既に旦那様がいらっしゃったとは」
「えぇ、素敵な旦那様が」
「貴女に素敵と言ってもらえるなんて羨ましい旦那様だ。……その手の物は旦那様の為の夕餉の食材ですか」
夢主は水が張られた小さな桶を抱えていた。
「えっ、えぇ……美味しそうなお豆腐でしょう、でも旦那様に食べていただけるかどうか……旦那様はなかなか帰ってきてくれないんです」
「そうでしたか、それは可哀相に……本官が慰めになれば良いのですが」
「ふふっ、旦那様に怒られてしまいます……」
「フッ、愛しい妻に顔を忘れられるとは、可哀相な旦那様だ」
気付けば周りの景色は変わり、家に辿り着いていた。
夢主は訝しみもせず土間を通り過ぎようとしたが突然、後から抱きつかれ、豆腐の入った桶を落としそうになった。
「あっ……お豆腐っ」
「ほら、貸せ……」
警官の男は夢主の手から豆腐を取り上げると土間の上がり框に置き、心配事の無くなった夢主の首筋にじっくりと唇を落とした。
気の逸れた夢主が気付かぬうちに、男は片手で刀の入った腰の皮帯を外した。
「っぁ……」
「旦那様の顔を忘れちまったのか、我が妻よ」
「そんな……一さん、今日はもう……」
男の声に一さんと呼びかけた自分に驚くが、考える時間は与えられなかった。
声の主は斎藤一、何故洋装の黒い警官姿の斎藤が目の前にいるのか……斎藤が自分を妻と呼ぶのか……同じく考える時間は与えられず、代わりに刺激が与えられ続けた。
「職務は終わりだ、これからはお前との時間だ、姿を見かけて一緒に帰ろうと追いかけたんだぜ」
「そうだったのですか……っ、っあ……ありがとうございます……本当は、暗くなってきて怖かったんです……」
「もっと早く家に戻れ、いいか」
「っ……はぃ……ぁん、わかり……まっ……ん」
家の入り口で夫に弄ばれる夢主は、どうにか体をひねり斎藤の顔を見つめた。
「こんな所じゃ……それに、晩ご飯……」
「飯なんざいつでも構わん、寂しかったんだろう、いつも帰れなくてすまないな」
「そんな……気にしてなんかっ……やっ」
体の向きを変えても斎藤の愛撫は止まらず、熱く濡れた唇は首筋から鎖骨にずれ、気付かぬうちに着物の衿を開かれていた。
「ぁっ、本当にこんな所じゃ……おねがっ……、一さっ……」
夢主の胸が曝け出されるかというところで、斎藤はようやく手を止め、ニヤリと目を細めて顔を近づけた。
「いいだろう、床に運んでやる」
「えっ、でもご飯っ」
軽々と抱えられて小さく反論をするが、斎藤は目を合わせニッとするだけで、夢主を布団へと運んだ。
夢主は夕陽が赤く染める土の道を歩く自分に気付き、足を止めた。
「私、何してるんだろう……早く帰らなくちゃ……」
空の向こうではカラス達が鳴きながら山へ戻って行く。
ここはどこなのか……考えもせず歩く夢主は、店が並んだ賑やかな通りから外れて進んで行った。
辺りは随分と静まり返っている。
異様に感じるほどの静けさに夢主は肌を粟立たせ、歩みを速めて家路を急いだ。
その時、ふと男に声を掛けられて振り向いた。黒い西洋服姿の男。
その姿に何故だか落ち着く自分がいた。
「黄昏時の女性の一人歩きは危ないですよ、お嬢さん、本官がお送りしましょう」
「ふふっ……ありがとうございます。でももう危ないという年頃でもありませんから……」
……年……
自分で口にした言葉を不思議に思いながらも顔を上げると、男が続ける言葉に素直に耳を傾けた。
「警察官として、こんな時間に女性を一人で歩かせるわけには参りません。それに女性の魅力に歳など関係ありませんよ、貴女はとてもお美しい……」
……警察官……あぁ、警察の人……
懐かしい感覚に違和感を抱くこともなく、二人は並んで歩き始めた。
「そんな、お上手……でも私これでも人妻なんです。人妻なんて相手にもされませんから」
……人妻……そっか、私、人妻なんだ……
不意に口にした言葉にも疑いを抱かず会話を続けた。
「とんでもない、そんなもの夜盗には関係のないことです。それにしても残念です、既に旦那様がいらっしゃったとは」
「えぇ、素敵な旦那様が」
「貴女に素敵と言ってもらえるなんて羨ましい旦那様だ。……その手の物は旦那様の為の夕餉の食材ですか」
夢主は水が張られた小さな桶を抱えていた。
「えっ、えぇ……美味しそうなお豆腐でしょう、でも旦那様に食べていただけるかどうか……旦那様はなかなか帰ってきてくれないんです」
「そうでしたか、それは可哀相に……本官が慰めになれば良いのですが」
「ふふっ、旦那様に怒られてしまいます……」
「フッ、愛しい妻に顔を忘れられるとは、可哀相な旦那様だ」
気付けば周りの景色は変わり、家に辿り着いていた。
夢主は訝しみもせず土間を通り過ぎようとしたが突然、後から抱きつかれ、豆腐の入った桶を落としそうになった。
「あっ……お豆腐っ」
「ほら、貸せ……」
警官の男は夢主の手から豆腐を取り上げると土間の上がり框に置き、心配事の無くなった夢主の首筋にじっくりと唇を落とした。
気の逸れた夢主が気付かぬうちに、男は片手で刀の入った腰の皮帯を外した。
「っぁ……」
「旦那様の顔を忘れちまったのか、我が妻よ」
「そんな……一さん、今日はもう……」
男の声に一さんと呼びかけた自分に驚くが、考える時間は与えられなかった。
声の主は斎藤一、何故洋装の黒い警官姿の斎藤が目の前にいるのか……斎藤が自分を妻と呼ぶのか……同じく考える時間は与えられず、代わりに刺激が与えられ続けた。
「職務は終わりだ、これからはお前との時間だ、姿を見かけて一緒に帰ろうと追いかけたんだぜ」
「そうだったのですか……っ、っあ……ありがとうございます……本当は、暗くなってきて怖かったんです……」
「もっと早く家に戻れ、いいか」
「っ……はぃ……ぁん、わかり……まっ……ん」
家の入り口で夫に弄ばれる夢主は、どうにか体をひねり斎藤の顔を見つめた。
「こんな所じゃ……それに、晩ご飯……」
「飯なんざいつでも構わん、寂しかったんだろう、いつも帰れなくてすまないな」
「そんな……気にしてなんかっ……やっ」
体の向きを変えても斎藤の愛撫は止まらず、熱く濡れた唇は首筋から鎖骨にずれ、気付かぬうちに着物の衿を開かれていた。
「ぁっ、本当にこんな所じゃ……おねがっ……、一さっ……」
夢主の胸が曝け出されるかというところで、斎藤はようやく手を止め、ニヤリと目を細めて顔を近づけた。
「いいだろう、床に運んでやる」
「えっ、でもご飯っ」
軽々と抱えられて小さく反論をするが、斎藤は目を合わせニッとするだけで、夢主を布団へと運んだ。