82.左の男
夢主名前設定
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斎藤が指示して夢主が黙って従う、不思議な食事の時が過ぎていく。
それでも膳の上のものは全て綺麗に斎藤の中へと運ばれた。
「美味かったな、助かったぞ」
「良かった、お力になれて何よりです」
感謝の言葉を夢主は素直に微笑んで箸を置いた。
斎藤は右手で湯呑みを持ち、茶も飲み干した。
「食って飲んだらあれだな……手伝ってもらうしかないか」
「何でしょうか」
あれの指す事柄が分からず正直に訊ねると、斎藤はわざと押し黙って真面目な顔で夢主を見つめた。
「言いにくいが仕方が無い、厠だ。厠に来い」
「えっ……えぇぇえっ?!!か、かわ……」
「一人では無理だろう」
ニッ……斎藤の顔が歪んでいると、混乱した夢主は気付かなかった。
はたから見れば何とも滑稽なやりとりだろう。
「そんなっ!それはさすがに無理ですっ!出来ませんっ!!て、鉄之助君か、そうだ!沖田さんにっ」
「阿呆っ、俺からお断りだ!しかも一番隊の組長にそんな仕事を頼めると思うのか、あれでも一応新選組の幹部だぜ」
夢主は慌てて代わりの誰かを考えるが斎藤は受け入れない。
「でっ、でもぉっ、私には無理です、そんなっ!厠のお手伝いだなんてっ!」
真っ赤な顔で懸命に断っていると、斎藤はククッと笑いながらゆっくりと立ち上がった。
「お前が無理ならやはり小姓を頼むか……仕方あるまい。お前は部屋に戻っていろ」
「えっ……私は……」
「フッ、もういい」
一言残し斎藤は部屋の外へ出て行ってしまった。
最後まで笑いを堪えていたが夢主には少しも伝わらなかった。
「斎藤さん……本当に困ってたのかな……」
せっかく引き受けた世話役を失格になってしまった夢主は落ち込むが、せめて膳だけでも片付けようと手をかけた。
「おや、斎藤さんはいないのですか、傷は大丈夫なんですね」
「沖田さんっ」
夢主が膳を手に外へ出ようとすると、戻ってきた沖田と出くわした。
沖田は空になった膳を見て納得の声をあげた。
「おぉ斎藤さんやっぱり片手でもちゃんとご飯食べられたんですね」
「はい、私がお手伝いをして……」
「夢主ちゃんが?手伝ってあげたの?」
「はい……手を動かせず箸が持てないと……だから私がお箸を持って……」
夢主が持ち上げている膳を眺めて、沖田は感じた疑問をぶつけた。
「そうですか……でも、斎藤さんが怪我してたのって左手ですよね」
「はい。だから利き手なのでお箸が……」
「斎藤さん、刀は左ですけど、食事の箸は右で持ちますよ……あっ」
「えっ…………あぁっ……!!」
沖田の閃きにつられるように、夢主もようやく斎藤の悪さに気が付いた。
「あははははっ、夢主ちゃんまた斎藤さんに一本取られたみたいですねっ、ははははっ!!」
「もーーーーっ!!また斎藤さんたらっ!!親身になってお世話したのにーーっ」
「ふふっ、夢主ちゃんにお世話してもらえるなら僕も包帯巻いてこようかな~」
「もぉ!お世話しませんからっ!!」
怒り叫ぶ夢主に沖田までもが調子に乗ってはしゃいだ。
それでも膳の上のものは全て綺麗に斎藤の中へと運ばれた。
「美味かったな、助かったぞ」
「良かった、お力になれて何よりです」
感謝の言葉を夢主は素直に微笑んで箸を置いた。
斎藤は右手で湯呑みを持ち、茶も飲み干した。
「食って飲んだらあれだな……手伝ってもらうしかないか」
「何でしょうか」
あれの指す事柄が分からず正直に訊ねると、斎藤はわざと押し黙って真面目な顔で夢主を見つめた。
「言いにくいが仕方が無い、厠だ。厠に来い」
「えっ……えぇぇえっ?!!か、かわ……」
「一人では無理だろう」
ニッ……斎藤の顔が歪んでいると、混乱した夢主は気付かなかった。
はたから見れば何とも滑稽なやりとりだろう。
「そんなっ!それはさすがに無理ですっ!出来ませんっ!!て、鉄之助君か、そうだ!沖田さんにっ」
「阿呆っ、俺からお断りだ!しかも一番隊の組長にそんな仕事を頼めると思うのか、あれでも一応新選組の幹部だぜ」
夢主は慌てて代わりの誰かを考えるが斎藤は受け入れない。
「でっ、でもぉっ、私には無理です、そんなっ!厠のお手伝いだなんてっ!」
真っ赤な顔で懸命に断っていると、斎藤はククッと笑いながらゆっくりと立ち上がった。
「お前が無理ならやはり小姓を頼むか……仕方あるまい。お前は部屋に戻っていろ」
「えっ……私は……」
「フッ、もういい」
一言残し斎藤は部屋の外へ出て行ってしまった。
最後まで笑いを堪えていたが夢主には少しも伝わらなかった。
「斎藤さん……本当に困ってたのかな……」
せっかく引き受けた世話役を失格になってしまった夢主は落ち込むが、せめて膳だけでも片付けようと手をかけた。
「おや、斎藤さんはいないのですか、傷は大丈夫なんですね」
「沖田さんっ」
夢主が膳を手に外へ出ようとすると、戻ってきた沖田と出くわした。
沖田は空になった膳を見て納得の声をあげた。
「おぉ斎藤さんやっぱり片手でもちゃんとご飯食べられたんですね」
「はい、私がお手伝いをして……」
「夢主ちゃんが?手伝ってあげたの?」
「はい……手を動かせず箸が持てないと……だから私がお箸を持って……」
夢主が持ち上げている膳を眺めて、沖田は感じた疑問をぶつけた。
「そうですか……でも、斎藤さんが怪我してたのって左手ですよね」
「はい。だから利き手なのでお箸が……」
「斎藤さん、刀は左ですけど、食事の箸は右で持ちますよ……あっ」
「えっ…………あぁっ……!!」
沖田の閃きにつられるように、夢主もようやく斎藤の悪さに気が付いた。
「あははははっ、夢主ちゃんまた斎藤さんに一本取られたみたいですねっ、ははははっ!!」
「もーーーーっ!!また斎藤さんたらっ!!親身になってお世話したのにーーっ」
「ふふっ、夢主ちゃんにお世話してもらえるなら僕も包帯巻いてこようかな~」
「もぉ!お世話しませんからっ!!」
怒り叫ぶ夢主に沖田までもが調子に乗ってはしゃいだ。