82.左の男
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「それで不自由だろうからとな、土方さんに傷が治るまで俺に小姓をつけたらどうかと言われたんだが」
「えっ……斎藤さんに小姓さんですか」
「そうだ。鉄之助は土方さんや近藤さんの面倒であれでも忙しいからな、他の誰かだ。そうなれば当然俺の部屋に控えるわけで、若いとは言え充分に成長している男だ。どうする」
「どうするって……どうすれば……」
若い男がすぐそばに……
悪気が無くても良からぬ事態に発展してしまうかもしれない。
また怖い思いを繰り返すかもしれないと思うと、不安が広がる。
「お前が小姓の代わりを引き受けてみるか。俺の怪我が良くなるまでな」
「えっ!私が……ですかっ」
確かに元々斎藤の身の回りの世話をする機会も多い。
こうして膳を運んだり洗濯物を引き受けたり、雑用ならば充分こなせる。
「は、はい、私でよければ……頑張りますっ」
「そうか。頼んだぞ」
これと言って特別な仕事はなく、ただそばに控えて必要な時に手助けすれば良いのだから、今までと何も変わらない。
夢主は勇んで引き受けた。
「では早速、頼もうか」
「はいっ……?」
斎藤の言葉に今から食事なのではと疑問の声をあげ、顔を覗いた。
何か用事でもあるのだろうか。
「ほら、食わせろ」
斎藤はにやりと目を細めて促した。
「えっ」
夢主は驚いて斎藤の手を見るが、斎藤は全く動かそうとしない。
「全く……出来ませんか……」
「あぁ、傷が開くと困るからな」
ニッと笑う顔に夢主は首を傾げた。
言葉が本当かどうか分からないが、頼まれれば断るわけにもいかない。
「わかりました……早く良くなるといいですね……」
素直に箸を手にすると、夢主は斎藤の顔を見た。
何から食べたいか、指示を待つ。
「飯だ」
堂々と答える斎藤の片眉がぴくりと持ち上がるが、飯椀に目を落とす夢主には見えなかった。
「はぃ……」
照れくさいと思いつつ夢主はそっと斎藤の口元にご飯を運んだ。
「お箸も持てないなんて……ご自愛くださいよ」
「フッ、もちろんだ」
あまりの余裕に嘘ではないかと訝しむが、確かにしっかりと包帯の巻かれた利き手は、箸をつかむのは難しそうだ。
飯……汁……漬物……
斎藤が指示するまま適量を取り口元に運ぶ。恋人同士の甘いやり取りとは違い、義務的に食事を運ぶ夢主だが、照れくささは拭えない。
斎藤は全く気にかけない様子で淡々と食事を受け入れていた。
「えっ……斎藤さんに小姓さんですか」
「そうだ。鉄之助は土方さんや近藤さんの面倒であれでも忙しいからな、他の誰かだ。そうなれば当然俺の部屋に控えるわけで、若いとは言え充分に成長している男だ。どうする」
「どうするって……どうすれば……」
若い男がすぐそばに……
悪気が無くても良からぬ事態に発展してしまうかもしれない。
また怖い思いを繰り返すかもしれないと思うと、不安が広がる。
「お前が小姓の代わりを引き受けてみるか。俺の怪我が良くなるまでな」
「えっ!私が……ですかっ」
確かに元々斎藤の身の回りの世話をする機会も多い。
こうして膳を運んだり洗濯物を引き受けたり、雑用ならば充分こなせる。
「は、はい、私でよければ……頑張りますっ」
「そうか。頼んだぞ」
これと言って特別な仕事はなく、ただそばに控えて必要な時に手助けすれば良いのだから、今までと何も変わらない。
夢主は勇んで引き受けた。
「では早速、頼もうか」
「はいっ……?」
斎藤の言葉に今から食事なのではと疑問の声をあげ、顔を覗いた。
何か用事でもあるのだろうか。
「ほら、食わせろ」
斎藤はにやりと目を細めて促した。
「えっ」
夢主は驚いて斎藤の手を見るが、斎藤は全く動かそうとしない。
「全く……出来ませんか……」
「あぁ、傷が開くと困るからな」
ニッと笑う顔に夢主は首を傾げた。
言葉が本当かどうか分からないが、頼まれれば断るわけにもいかない。
「わかりました……早く良くなるといいですね……」
素直に箸を手にすると、夢主は斎藤の顔を見た。
何から食べたいか、指示を待つ。
「飯だ」
堂々と答える斎藤の片眉がぴくりと持ち上がるが、飯椀に目を落とす夢主には見えなかった。
「はぃ……」
照れくさいと思いつつ夢主はそっと斎藤の口元にご飯を運んだ。
「お箸も持てないなんて……ご自愛くださいよ」
「フッ、もちろんだ」
あまりの余裕に嘘ではないかと訝しむが、確かにしっかりと包帯の巻かれた利き手は、箸をつかむのは難しそうだ。
飯……汁……漬物……
斎藤が指示するまま適量を取り口元に運ぶ。恋人同士の甘いやり取りとは違い、義務的に食事を運ぶ夢主だが、照れくささは拭えない。
斎藤は全く気にかけない様子で淡々と食事を受け入れていた。