81.江戸土産
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「そういえば緋村さんの件は斎藤さん、良かったですね!僕は残念ですけど、一度も出会わなかったんですから仕方ありません」
斎藤の居ぬ間に決着を付けたかった沖田は残念がったが、あれから結局沖田と緋村は剣を交えず、今日に至っていた。
斎藤は素晴らしい報告だとばかりに頷いた。
「フッ、いい話だ。江戸で気になったと言えば抜刀斎のことだからな」
ふっと横目でもう一つ江戸で気に掛けていた夢主の姿を捉えるが、口にはせず話を続けた。
「君では物足りんと現れ無かったんじゃないか」
「失礼なっ、偶然ですよ!変わりに永倉さんが遭遇したそうですよ、もちろん取り逃がしたそうですけど」
「取り逃がしたのはさておき、殺られなかったのは永倉さんもやるな」
「えぇ、さすがですね。剣の腕は僕も一目置きます。取り逃がしてくれて良かったですけど、あははっ」
会話に入れなくなった夢主は、二人の顔に交互に視線を注いだ。
……二人共まだそんなに戦ったこと無いはずなのに、すっかり剣心の腕に惚れ込んでるみたい……
新選組を脱走した刃衛により長州の飯塚に手渡されたその時、助けてくれた緋村を思い出して二人から目を逸らした。
真っ直ぐひたむきに己の定めた決まりに従い剣を振るい、苦しみを抑えている様子だった。
一度見せた苦難の表情と悲鳴にも似た叫び声は、夢主の心にしっかり残っていた。
……どれほど傷ついて……剣心……
あれから最愛の女の死とその真実を抱え、緋村はどんな思いで刀を手に志士達を守っているのか。
夢主は考え巡らすがとてもその痛みの全てを察することは出来なかった。酷く傷つき苦しんでいる彼の本当の辛さは。
「しかし、なかなか決着は付きそうもありませんね、不貞浪士を捕縛するのが僕らの役目、緋村さんはどうやら僕らの抹殺ではなく、浪士を守り逃走をさせることのようですからね」
「あぁ、浪士を逃がせば役目は終わりと言ったところだな。まぁ無理に深追いして己が死ねば、浪士達の今後の死に繋がる……そう踏んで最後まで粘らんのだろう」
「えぇ、でも向かえば向かってくる、逃がさなければ……逃がさないようやり合えば決着の付けようがあるかもしれません」
「そうだな、どちらも相当な手負いになるだろうが」
夢中に話す男二人だが、顔色が悪くなっていく夢主が見えた。
「すみません、つい熱中してしまいました。大丈夫ですよ、僕らは命を捨てたりはしませんから」
「はぃ……」
蒼白な夢主を気遣うと、震えるような小さな声が返ってきた。
「大丈夫です、私……覚悟していますし、信じています」
二人に負担をかけまいと気丈に話すが、力ない声は返って夢主の不安を伝えた。
「俺は不死身なんだろう、沖田君はさておきな」
「むっ、斎藤さんそれはないでしょう!!病には僕勝っていますし、剣でだって誰にも負けませんよ!!」
冗談を言いながら、斎藤は夢主を見つめフッと不意に笑顔を見せた。
自分を信じていれば大丈夫だと伝えたのだ。
「斎藤さん……そうですね、斎藤さんは不死身です……沖田さんもきっと!」
「えぇ、当然です!僕は誰より何より剣に愛されている男なんですから!」
周りからよく言われる言葉を使って沖田がおどけて見せると、夢主の不安は薄れ、顔に血の色が戻ってきた。
「お願いします」
どうか命を捨てないで下さいと懇願の意を込めた夢主の一言。
斎藤と沖田は真剣な眼差しで大きく頷いた。
何かを守る力は、何かを捨てて得る力よりも大きい……
ふと頭に響いた誰かの力強い声に、夢主は目の前の頼もしい二人の面差しを見て、自らの存在が少しでも力に変わってくれることを願った。
そして支える者もなく一人苦しんでいるであろう緋村に、どうか心の安らぎをと秘かに願った。
斎藤の居ぬ間に決着を付けたかった沖田は残念がったが、あれから結局沖田と緋村は剣を交えず、今日に至っていた。
斎藤は素晴らしい報告だとばかりに頷いた。
「フッ、いい話だ。江戸で気になったと言えば抜刀斎のことだからな」
ふっと横目でもう一つ江戸で気に掛けていた夢主の姿を捉えるが、口にはせず話を続けた。
「君では物足りんと現れ無かったんじゃないか」
「失礼なっ、偶然ですよ!変わりに永倉さんが遭遇したそうですよ、もちろん取り逃がしたそうですけど」
「取り逃がしたのはさておき、殺られなかったのは永倉さんもやるな」
「えぇ、さすがですね。剣の腕は僕も一目置きます。取り逃がしてくれて良かったですけど、あははっ」
会話に入れなくなった夢主は、二人の顔に交互に視線を注いだ。
……二人共まだそんなに戦ったこと無いはずなのに、すっかり剣心の腕に惚れ込んでるみたい……
新選組を脱走した刃衛により長州の飯塚に手渡されたその時、助けてくれた緋村を思い出して二人から目を逸らした。
真っ直ぐひたむきに己の定めた決まりに従い剣を振るい、苦しみを抑えている様子だった。
一度見せた苦難の表情と悲鳴にも似た叫び声は、夢主の心にしっかり残っていた。
……どれほど傷ついて……剣心……
あれから最愛の女の死とその真実を抱え、緋村はどんな思いで刀を手に志士達を守っているのか。
夢主は考え巡らすがとてもその痛みの全てを察することは出来なかった。酷く傷つき苦しんでいる彼の本当の辛さは。
「しかし、なかなか決着は付きそうもありませんね、不貞浪士を捕縛するのが僕らの役目、緋村さんはどうやら僕らの抹殺ではなく、浪士を守り逃走をさせることのようですからね」
「あぁ、浪士を逃がせば役目は終わりと言ったところだな。まぁ無理に深追いして己が死ねば、浪士達の今後の死に繋がる……そう踏んで最後まで粘らんのだろう」
「えぇ、でも向かえば向かってくる、逃がさなければ……逃がさないようやり合えば決着の付けようがあるかもしれません」
「そうだな、どちらも相当な手負いになるだろうが」
夢中に話す男二人だが、顔色が悪くなっていく夢主が見えた。
「すみません、つい熱中してしまいました。大丈夫ですよ、僕らは命を捨てたりはしませんから」
「はぃ……」
蒼白な夢主を気遣うと、震えるような小さな声が返ってきた。
「大丈夫です、私……覚悟していますし、信じています」
二人に負担をかけまいと気丈に話すが、力ない声は返って夢主の不安を伝えた。
「俺は不死身なんだろう、沖田君はさておきな」
「むっ、斎藤さんそれはないでしょう!!病には僕勝っていますし、剣でだって誰にも負けませんよ!!」
冗談を言いながら、斎藤は夢主を見つめフッと不意に笑顔を見せた。
自分を信じていれば大丈夫だと伝えたのだ。
「斎藤さん……そうですね、斎藤さんは不死身です……沖田さんもきっと!」
「えぇ、当然です!僕は誰より何より剣に愛されている男なんですから!」
周りからよく言われる言葉を使って沖田がおどけて見せると、夢主の不安は薄れ、顔に血の色が戻ってきた。
「お願いします」
どうか命を捨てないで下さいと懇願の意を込めた夢主の一言。
斎藤と沖田は真剣な眼差しで大きく頷いた。
何かを守る力は、何かを捨てて得る力よりも大きい……
ふと頭に響いた誰かの力強い声に、夢主は目の前の頼もしい二人の面差しを見て、自らの存在が少しでも力に変わってくれることを願った。
そして支える者もなく一人苦しんでいるであろう緋村に、どうか心の安らぎをと秘かに願った。