81.江戸土産
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「フッ、そんなに確認することは無かろう」
「えっ!すみません、ついっ」
「ほらよ、約束の土産だ」
真っ赤に染めた顔を上げた夢主に、斎藤は懐から出した品を手渡した。
「わぁ……ありがとうございます!本当に買ってきて下さったんですね……綺麗」
夢主は受け取った品を嬉しそうに広げて、自然と満面の笑みを湛えていた。
「これは……」
「風呂敷だ、色気が無くて悪かったな」
「いえ、そんなっ!とっても綺麗です。紫と白の滑らかな……色合いが」
夢主の言葉に斎藤は得意げな笑みを浮かべていた。
「その紫は紅桔梗と言い、白は月明かりの月白と言うそうだぞ」
「げっ……ぱく……月明かりの白、とっても素敵な色ですね!月の光の色……」
「お前は月が好きだな」
「私が月を好きなのは……」
言いながら、斎藤のなかなか日に焼けない白い肌を見つめた。
夢主が月を好きなのは美しいだけではなく、見ると斎藤を思い浮かべるからだ。
そして斎藤の美しく艶めいた瞳を黄金色に染める月明かりが好きだった。
月明かりに妖しく光る斎藤の瞳が好きだった。
「月は綺麗ですから……この風呂敷も、グラデーションが綺麗」
「ぐラデーション……」
風呂敷を撫でて溢した言葉に斎藤が眉をひそめた。
「色の……滲み?色が段々と変わっているこの風呂敷は綺麗なグラデーションです」
「ほぅ……外国の言葉か」
「はぃ、多分アメリカ、メリケンさんの言葉です」
「そうか。メリケン語が分かるのか」
斎藤は初耳だなと興味深そうに声を潜めた。
夢主は英語の知識を隠すことなく斎藤に伝えた。
「分かるといっても日常会話くらいで……前にお話しした学校で教わった程度なので、お偉いさん方の交渉の通訳とかは無理ですよ!出来る力はありません」
斎藤の興味深さに気付くと夢主は慌てて説明を加えた。
「そうか、まぁだが会話が出来るのは凄いぞ。今までよく出さなかったな。このまま誰にも知られるなよ、危ない知識だ」
「はい、気を付けます。今までもみなさんの使っている言葉でお話ししようと気を付けてはいたので……外国の言葉は使わないようにと」
「お前にしては賢明だな、フンッ」
「もぉっ」
鼻で笑われムスッとしてみせるが、手元の風呂敷に目を落として笑顔を取り戻した。
「どこへ行くにも必ず荷物を纏めるだろう、その時に使え」
「はぃ……」
斎藤のもとを離れてどこかへ向かう時に……切ない時が必ず訪れる。
その時に少しでも斎藤の温もりが傍にある、そう思えば哀しみも減るだろうか。
「おーーいっ、斎藤君、夢主!入るぞ~」
「藤堂君か」
二人の間の静かな空気を割って響いた元気な声に、何をしに来たと斎藤が部屋の入り口をギロリと睨んだ。
障子が開き現れたのは藤堂だ。
「久しぶりだな、元気だったか!」
「はい、藤堂さんも長い間本当にお疲れ様でした!淋しくありませんでしたか」
「ははっ、懐かしい友人にも会えたし江戸は楽しかったよ!でな、これお前に土産なんだ」
「えっ……私に……」
「あぁ」
斎藤の横に胡坐を掻いた藤堂がぐいっと差し出した物を受け取ると、柔らかな甘い香りが部屋に広がった。
「これは」
途端に不機嫌な斎藤の眉間に深い皺ができる。
「匂い袋だよ!いい香りだろ、夢主にぴったりだ!」
「わぁ……ありがとうございます!とっても甘い香り……いい香りです」
顔に近づけ香りを感じるとふふっと微笑んだ。
つられて藤堂もはにかんで照れていた。
「おい、ちょっと来い」
「わっ何だよ斎藤!」
「いいから来い!夢主、それはしまっておけ!いいな!」
乱暴に腕を掴まれ藤堂が悪態をつくが、斎藤は構わず腕を引き、藤堂を立たせて外に連れ出した。
藤堂からの土産を片付けろといわれた夢主は、きょとんと目を丸くして二人を見送った。
「えっ!すみません、ついっ」
「ほらよ、約束の土産だ」
真っ赤に染めた顔を上げた夢主に、斎藤は懐から出した品を手渡した。
「わぁ……ありがとうございます!本当に買ってきて下さったんですね……綺麗」
夢主は受け取った品を嬉しそうに広げて、自然と満面の笑みを湛えていた。
「これは……」
「風呂敷だ、色気が無くて悪かったな」
「いえ、そんなっ!とっても綺麗です。紫と白の滑らかな……色合いが」
夢主の言葉に斎藤は得意げな笑みを浮かべていた。
「その紫は紅桔梗と言い、白は月明かりの月白と言うそうだぞ」
「げっ……ぱく……月明かりの白、とっても素敵な色ですね!月の光の色……」
「お前は月が好きだな」
「私が月を好きなのは……」
言いながら、斎藤のなかなか日に焼けない白い肌を見つめた。
夢主が月を好きなのは美しいだけではなく、見ると斎藤を思い浮かべるからだ。
そして斎藤の美しく艶めいた瞳を黄金色に染める月明かりが好きだった。
月明かりに妖しく光る斎藤の瞳が好きだった。
「月は綺麗ですから……この風呂敷も、グラデーションが綺麗」
「ぐラデーション……」
風呂敷を撫でて溢した言葉に斎藤が眉をひそめた。
「色の……滲み?色が段々と変わっているこの風呂敷は綺麗なグラデーションです」
「ほぅ……外国の言葉か」
「はぃ、多分アメリカ、メリケンさんの言葉です」
「そうか。メリケン語が分かるのか」
斎藤は初耳だなと興味深そうに声を潜めた。
夢主は英語の知識を隠すことなく斎藤に伝えた。
「分かるといっても日常会話くらいで……前にお話しした学校で教わった程度なので、お偉いさん方の交渉の通訳とかは無理ですよ!出来る力はありません」
斎藤の興味深さに気付くと夢主は慌てて説明を加えた。
「そうか、まぁだが会話が出来るのは凄いぞ。今までよく出さなかったな。このまま誰にも知られるなよ、危ない知識だ」
「はい、気を付けます。今までもみなさんの使っている言葉でお話ししようと気を付けてはいたので……外国の言葉は使わないようにと」
「お前にしては賢明だな、フンッ」
「もぉっ」
鼻で笑われムスッとしてみせるが、手元の風呂敷に目を落として笑顔を取り戻した。
「どこへ行くにも必ず荷物を纏めるだろう、その時に使え」
「はぃ……」
斎藤のもとを離れてどこかへ向かう時に……切ない時が必ず訪れる。
その時に少しでも斎藤の温もりが傍にある、そう思えば哀しみも減るだろうか。
「おーーいっ、斎藤君、夢主!入るぞ~」
「藤堂君か」
二人の間の静かな空気を割って響いた元気な声に、何をしに来たと斎藤が部屋の入り口をギロリと睨んだ。
障子が開き現れたのは藤堂だ。
「久しぶりだな、元気だったか!」
「はい、藤堂さんも長い間本当にお疲れ様でした!淋しくありませんでしたか」
「ははっ、懐かしい友人にも会えたし江戸は楽しかったよ!でな、これお前に土産なんだ」
「えっ……私に……」
「あぁ」
斎藤の横に胡坐を掻いた藤堂がぐいっと差し出した物を受け取ると、柔らかな甘い香りが部屋に広がった。
「これは」
途端に不機嫌な斎藤の眉間に深い皺ができる。
「匂い袋だよ!いい香りだろ、夢主にぴったりだ!」
「わぁ……ありがとうございます!とっても甘い香り……いい香りです」
顔に近づけ香りを感じるとふふっと微笑んだ。
つられて藤堂もはにかんで照れていた。
「おい、ちょっと来い」
「わっ何だよ斎藤!」
「いいから来い!夢主、それはしまっておけ!いいな!」
乱暴に腕を掴まれ藤堂が悪態をつくが、斎藤は構わず腕を引き、藤堂を立たせて外に連れ出した。
藤堂からの土産を片付けろといわれた夢主は、きょとんと目を丸くして二人を見送った。