81.江戸土産
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西本願寺の屯所に戻った斎藤は、江戸から来た新入隊士達と共に広間に入った。
新選組という組織について、これまでの功績から隊務や規律まで、土方や伊東から堅苦しい話を聞かされている。当然、京に残っていた幹部達も集まっていた。
「早く終わりませんかねぇ」
「黙って聞いていろ」
隣で体を寄せてぼそりと呟く沖田を斎藤がたしなめた。
帰屯するや広間に入ったので、まだ夢主の顔を見ていない斎藤こそ早く終われと土方に視線を送っている。
「以上だ。新入隊士は正式な配属が決まるまで一番隊、二番隊で面倒を見てもらう」
「えぇーーっ!!……と、よ、よろしくお願いします!一番隊組長の沖田総司です!ははははっ」
土方の話の最後に飛び出した指示に叫んでしまった沖田は、慌てて立ち上がり挨拶をして誤魔化した。
新入隊士なんて面倒臭い!と本音を飲み込んで土方を睨むが、目が合わないよう逸らされてしまった。
「いい仕事が増えたな、沖田君」
「もーー土方さんってば、あとで捉まえて話聞いてきます!」
「担当が変わりはしないだろうがな、まぁせぃぜい頑張れよ」
土方が広間を出て行く姿を追いかけ、沖田は颯爽と立ち去った。
「やれやれ、俺に回らなくて良かったぜ」
斎藤はニッと笑うと、隊士部屋に向かい部屋を去っていく新入隊士達を眺め、其々の動作の癖を眺めていた。
その頃、夢主は皆が帰屯したことを知り、斎藤が部屋に戻るのを心待ちにしていた。
部屋で済ませる仕事も無く、手持ち無沙汰に正座をして待っている。
「なんか……そわそわしちゃう」
部屋の入り口を見ては、視線を自分の手元に戻すことを何度も繰り返していた。
自分でも分からないほど何度も確認した入り口に、ふと人影が現れ障子に近付いた時、夢主の顔は反射的に綻んでいた。
「よぉ、戻ったぞ」
「はっ……はい、斎藤さん!お帰りなさい」
立ち上がって荷物を受け取ろうとする夢主を斎藤は鼻で笑うと、葛篭の近くに手にしていた荷物を置いた。
「片付けてもらうほどの荷物じゃないさ」
「すいません、つぃ……」
どこか落ち着かない自分を恥じらう夢主、その姿に顔を緩めた斎藤は袴の紐に手を掛けた。
「あっ、部屋戻りますっ」
「構わん、袴を外すだけだ」
「そっ……そうですか……」
斎藤に背を向け「いいぞ」と声を掛けられるまで、夢主は俯いたまま赤い顔で立っていた。
振り返り、腰を下ろした斎藤の向かいに正座した。
「変わりは無いか」
「はい、何事も無く……」
応える夢主の頭の中は真っ白になっていた。
斎藤の居ないひと月の間に起きた出来事を思い出す余裕は無かった。
久しぶりに見つめられる鋭い瞳に、胸の鼓動がおさまらない。
旅の疲れを背負った斎藤は胡坐を掻き、楽な姿勢を取っている。
広く張った肩に、薄いようで逞しい胸板……傷を纏った長い腕、そこから伸びる男らしい節を備えて尚すらりと美しい指……
夢主は無意識の内にゆっくりと目が合ったその瞳から順に、足元まで久しぶりの姿を確かめるように眺めた。
新選組という組織について、これまでの功績から隊務や規律まで、土方や伊東から堅苦しい話を聞かされている。当然、京に残っていた幹部達も集まっていた。
「早く終わりませんかねぇ」
「黙って聞いていろ」
隣で体を寄せてぼそりと呟く沖田を斎藤がたしなめた。
帰屯するや広間に入ったので、まだ夢主の顔を見ていない斎藤こそ早く終われと土方に視線を送っている。
「以上だ。新入隊士は正式な配属が決まるまで一番隊、二番隊で面倒を見てもらう」
「えぇーーっ!!……と、よ、よろしくお願いします!一番隊組長の沖田総司です!ははははっ」
土方の話の最後に飛び出した指示に叫んでしまった沖田は、慌てて立ち上がり挨拶をして誤魔化した。
新入隊士なんて面倒臭い!と本音を飲み込んで土方を睨むが、目が合わないよう逸らされてしまった。
「いい仕事が増えたな、沖田君」
「もーー土方さんってば、あとで捉まえて話聞いてきます!」
「担当が変わりはしないだろうがな、まぁせぃぜい頑張れよ」
土方が広間を出て行く姿を追いかけ、沖田は颯爽と立ち去った。
「やれやれ、俺に回らなくて良かったぜ」
斎藤はニッと笑うと、隊士部屋に向かい部屋を去っていく新入隊士達を眺め、其々の動作の癖を眺めていた。
その頃、夢主は皆が帰屯したことを知り、斎藤が部屋に戻るのを心待ちにしていた。
部屋で済ませる仕事も無く、手持ち無沙汰に正座をして待っている。
「なんか……そわそわしちゃう」
部屋の入り口を見ては、視線を自分の手元に戻すことを何度も繰り返していた。
自分でも分からないほど何度も確認した入り口に、ふと人影が現れ障子に近付いた時、夢主の顔は反射的に綻んでいた。
「よぉ、戻ったぞ」
「はっ……はい、斎藤さん!お帰りなさい」
立ち上がって荷物を受け取ろうとする夢主を斎藤は鼻で笑うと、葛篭の近くに手にしていた荷物を置いた。
「片付けてもらうほどの荷物じゃないさ」
「すいません、つぃ……」
どこか落ち着かない自分を恥じらう夢主、その姿に顔を緩めた斎藤は袴の紐に手を掛けた。
「あっ、部屋戻りますっ」
「構わん、袴を外すだけだ」
「そっ……そうですか……」
斎藤に背を向け「いいぞ」と声を掛けられるまで、夢主は俯いたまま赤い顔で立っていた。
振り返り、腰を下ろした斎藤の向かいに正座した。
「変わりは無いか」
「はい、何事も無く……」
応える夢主の頭の中は真っ白になっていた。
斎藤の居ないひと月の間に起きた出来事を思い出す余裕は無かった。
久しぶりに見つめられる鋭い瞳に、胸の鼓動がおさまらない。
旅の疲れを背負った斎藤は胡坐を掻き、楽な姿勢を取っている。
広く張った肩に、薄いようで逞しい胸板……傷を纏った長い腕、そこから伸びる男らしい節を備えて尚すらりと美しい指……
夢主は無意識の内にゆっくりと目が合ったその瞳から順に、足元まで久しぶりの姿を確かめるように眺めた。