9.お留守番
夢主名前設定
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暫く静かな時間が過ぎるのかと思えば、部屋の周囲は一気に騒がしくなった。
男達が忙しく動き回っている。
「なんだろう……」
何を忙しそうにしているのか、耳を澄ましていると斎藤が戻ってきた。
土方も一緒だ。夢主が瞬間的に顔を強張らせ、察した斎藤が間に入った。
「案ずるな」
「ちっ、ったくよぉ、てめぇはビクビクし過ぎなんだよ!」
土方は溜息を吐いて言い捨てた。
そろそろ居候として屯所の副長を信頼してくれてもいいだろうと思ったのだ。
「だって!し、仕方ないじゃないですか!」
あんな事されたんだもん!と言い掛けるが、余計面倒な事態になる。夢主は堪えた。
忘れられる訳が無い、……斎藤のことは忘れていたが。
自分にブツブツ言い聞かせて土方を見上げた。
「あの……凄く騒がしそうですけど、何かあるのでしょうか……」
「これから御所に出向く」
その一言で夢主はぴんと来た。
「何か心当たりがあるようだな」
土方はニッと笑って、何か閃いた顔を覗き込んだ。
「まぁいい。俺達のやる事に変わりはねぇ。お前はこのまま斎藤の部屋で待機してろ。その……」
言葉を濁すと土方は斎藤の部屋の中を見回した。
そして裁縫道具を見つけて続けた。
「縫い物、仕上げといてくれよ」
意外な一言に思わず背筋が伸びた。
夢主は反射的に進捗具合を報告した。
「は、はい。あと一晩もあれば仕上がると思います」
「そうか」
土方は最後に少しだけ表情を和らげて返事をした。
「斎藤、お前も支度して早く来いよ!」
そう言い残し、土方は部屋を出た。
斎藤は土方を見送ると、同じく裁縫道具をちらりと見た。何も言わないが夢主はくすりと微笑んだ。
「斎藤さんの袴も、しっかり致しますね」
「あぁ」
斎藤は気にしちゃいないと言いたげに、目を合わさず衝立の向こうに回って身支度を始めた。
無言ですばやく着替えて必要な荷物を集めているようだ。
「斎藤さん……このまま二、三日みんな戻らないのでしょうか……」
夢主は不安だった。このままここにいろと言われたが、身の回りの事はどうすれば良いのか。
自由に勝手元に出入りして構わないのか。それにもっと気掛かりな事がある。
「安心しろ、家の者には土方さんが上手く言ってある。何かあれば頼んで構わん。ただし屯所から外には出るなよ。何が起こるか分からんからな。逃げたいなら逃げればいい。だがそうなったらこの先、俺は一切力を貸せんぞ」
「……はい。あの……沖田さんは……」
その言葉で斎藤は振り返った。
この状況で自分の事より沖田を心配していたのか。
「皆一緒に行く。大丈夫だ、今は全く病の兆候は無い」
支度を終えた斎藤は夢主の傍に寄り、安心しろと頷いて見せた。
「良かった……でも今日は斎藤さんも沖田さんも非番とおっしゃってたので少し残念です。色々お話したかったので……」
「戻ってから時間を作るさ」
「はぃ……。それで、沖田さんに言付けを!お願いします」
御所では多くの人間と関わる。
夢主は二、三の言伝を斎藤に託した。
「斎藤さん、お気を付けて……ご武運を……」
大小を腰に下げた出陣姿の斎藤は入口で少しだけ見返り、部屋を後にした。
「斎藤さん……」
夢主は閉められた障子をしばらく眺めていた。
男達が忙しく動き回っている。
「なんだろう……」
何を忙しそうにしているのか、耳を澄ましていると斎藤が戻ってきた。
土方も一緒だ。夢主が瞬間的に顔を強張らせ、察した斎藤が間に入った。
「案ずるな」
「ちっ、ったくよぉ、てめぇはビクビクし過ぎなんだよ!」
土方は溜息を吐いて言い捨てた。
そろそろ居候として屯所の副長を信頼してくれてもいいだろうと思ったのだ。
「だって!し、仕方ないじゃないですか!」
あんな事されたんだもん!と言い掛けるが、余計面倒な事態になる。夢主は堪えた。
忘れられる訳が無い、……斎藤のことは忘れていたが。
自分にブツブツ言い聞かせて土方を見上げた。
「あの……凄く騒がしそうですけど、何かあるのでしょうか……」
「これから御所に出向く」
その一言で夢主はぴんと来た。
「何か心当たりがあるようだな」
土方はニッと笑って、何か閃いた顔を覗き込んだ。
「まぁいい。俺達のやる事に変わりはねぇ。お前はこのまま斎藤の部屋で待機してろ。その……」
言葉を濁すと土方は斎藤の部屋の中を見回した。
そして裁縫道具を見つけて続けた。
「縫い物、仕上げといてくれよ」
意外な一言に思わず背筋が伸びた。
夢主は反射的に進捗具合を報告した。
「は、はい。あと一晩もあれば仕上がると思います」
「そうか」
土方は最後に少しだけ表情を和らげて返事をした。
「斎藤、お前も支度して早く来いよ!」
そう言い残し、土方は部屋を出た。
斎藤は土方を見送ると、同じく裁縫道具をちらりと見た。何も言わないが夢主はくすりと微笑んだ。
「斎藤さんの袴も、しっかり致しますね」
「あぁ」
斎藤は気にしちゃいないと言いたげに、目を合わさず衝立の向こうに回って身支度を始めた。
無言ですばやく着替えて必要な荷物を集めているようだ。
「斎藤さん……このまま二、三日みんな戻らないのでしょうか……」
夢主は不安だった。このままここにいろと言われたが、身の回りの事はどうすれば良いのか。
自由に勝手元に出入りして構わないのか。それにもっと気掛かりな事がある。
「安心しろ、家の者には土方さんが上手く言ってある。何かあれば頼んで構わん。ただし屯所から外には出るなよ。何が起こるか分からんからな。逃げたいなら逃げればいい。だがそうなったらこの先、俺は一切力を貸せんぞ」
「……はい。あの……沖田さんは……」
その言葉で斎藤は振り返った。
この状況で自分の事より沖田を心配していたのか。
「皆一緒に行く。大丈夫だ、今は全く病の兆候は無い」
支度を終えた斎藤は夢主の傍に寄り、安心しろと頷いて見せた。
「良かった……でも今日は斎藤さんも沖田さんも非番とおっしゃってたので少し残念です。色々お話したかったので……」
「戻ってから時間を作るさ」
「はぃ……。それで、沖田さんに言付けを!お願いします」
御所では多くの人間と関わる。
夢主は二、三の言伝を斎藤に託した。
「斎藤さん、お気を付けて……ご武運を……」
大小を腰に下げた出陣姿の斎藤は入口で少しだけ見返り、部屋を後にした。
「斎藤さん……」
夢主は閉められた障子をしばらく眺めていた。