80.静かな部屋
夢主名前設定
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「斎藤さんも土方さんも言う必要はないって、僕もそうなのかなって思ったんですけど……気になることがあれば何でも聞いてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
歴史が好きらしい夢主の興味と知識欲が満たされるならと、沖田は申し出た。
「あぁ!斎藤さんが戻る前に僕、緋村さんを倒したかったなぁ」
「緋村……沖田さんもお会いしたのですか」
「あははっ、会ったと言うか~まぁ遭遇して剣を交えました。夢主ちゃんにお話していませんでしたね。凄い人です、緋村さん」
「はぃ……」
嬉しそうに語る沖田に夢主は俯いてしまった。
「ごめんなさい、夢主ちゃんにはあまり楽しい話じゃないみたいですね。緋村さんのこと、お好きなんですか」
「えっ……」
「人々を助けることになる人……そう言ってましたね。優しい人になるんですね、緋村さん」
「……はい……」
「でも今は僕達の」
「わかっています、沖田さん。私は大丈夫です」
僕達の敵と言い切ろうとした沖田を遮って夢主は強い口調で伝えた。
緋村剣心を好きか……
夢主は心の中で頷いた。あんなに優しい人を嫌いになどなれないと。
「早く戻ってきて欲しいですか、斎藤さん」
「いえ……そんなことは……」
「素直じゃないなぁ、夢主ちゃん」
「ごめんなさい」
見え見えの嘘は気遣いとしても不要ですよ、そんな眼差しに、夢主は申し訳なさそうに微笑んだ。
沖田からは淋しげな笑顔が返ってくる。
「壬生菜でも頂いて帰りましょうか、沖田さん」
「えっ!」
「ふふっ、冗談です」
沖田の苦手な壬生菜を今日の夕餉にと言う夢主の冗談を二人で笑い、巡察隊との合流を待った。
江戸では帰りの旅支度を済ませた面々が満足そうに歩き出していた。
「本格的な暑さになる前に戻れそうで良かったぜ」
「はい。新入隊士も思った以上に集まりましたね」
行きとは逆に一番前を歩く斎藤、そばに土方と藤堂も並んで歩いている。
「あぁ、藤堂のことは疑って悪かったな」
「本当だよ!真面目に手紙まで出してたのによぉ!ちゃんと人も集めてただろ、俺頑張ったよ!」
「あぁ、すまん。今回は本当に悪かった。五十人以上……お前の働きのおかげだ」
「へへっ!……まぁ伊東さんが土方さんと合わないかも知れないってのは、思ってたんだけど……上手くやってくれるかなって……」
鬼の副長に謝罪され仕事っぷりを褒められて得意げに鼻をならす藤堂だが、伊東を紹介した件に関しては声を潜めて土方の様子を窺った。
土方と伊東の不仲は江戸の藤堂にも伝わっていた。
今回、二人の関係を目の前で見せ付けられ、水と油であると思い知った。
「気にするな。伊東は力になってくれている、気に食わないのは本音だがな!」
「山南さんのことは……」
「皆が辛かったんだ」
伊東が裏で糸を引いていたと知らない藤堂に、斎藤は土方を責めないよう一言口を挟んだ。
「わかってる、仕方なかったんだよな……俺も辛い」
「帰ったら、会いに行ってやれ」
墓参りを促すと藤堂は切なそうに頷いた。
試衛館の仲間で最期に顔を合わせ声を掛けられなかったのは自分だけ……
藤堂の心には小さなわだかまりが生まれていた。
その表情の変化を気に留める斎藤と土方だが、ふと顔を見合わせ土方は思ついたように訊ねた。
「斎藤、土産は買ったのか」
歩き始めてすぐに、つと問われた斎藤は気付かれないほど一瞬ニッと口角を上げ、土方を置き去るように歩みを速めた。
「はい。ありがとうございます」
歴史が好きらしい夢主の興味と知識欲が満たされるならと、沖田は申し出た。
「あぁ!斎藤さんが戻る前に僕、緋村さんを倒したかったなぁ」
「緋村……沖田さんもお会いしたのですか」
「あははっ、会ったと言うか~まぁ遭遇して剣を交えました。夢主ちゃんにお話していませんでしたね。凄い人です、緋村さん」
「はぃ……」
嬉しそうに語る沖田に夢主は俯いてしまった。
「ごめんなさい、夢主ちゃんにはあまり楽しい話じゃないみたいですね。緋村さんのこと、お好きなんですか」
「えっ……」
「人々を助けることになる人……そう言ってましたね。優しい人になるんですね、緋村さん」
「……はい……」
「でも今は僕達の」
「わかっています、沖田さん。私は大丈夫です」
僕達の敵と言い切ろうとした沖田を遮って夢主は強い口調で伝えた。
緋村剣心を好きか……
夢主は心の中で頷いた。あんなに優しい人を嫌いになどなれないと。
「早く戻ってきて欲しいですか、斎藤さん」
「いえ……そんなことは……」
「素直じゃないなぁ、夢主ちゃん」
「ごめんなさい」
見え見えの嘘は気遣いとしても不要ですよ、そんな眼差しに、夢主は申し訳なさそうに微笑んだ。
沖田からは淋しげな笑顔が返ってくる。
「壬生菜でも頂いて帰りましょうか、沖田さん」
「えっ!」
「ふふっ、冗談です」
沖田の苦手な壬生菜を今日の夕餉にと言う夢主の冗談を二人で笑い、巡察隊との合流を待った。
江戸では帰りの旅支度を済ませた面々が満足そうに歩き出していた。
「本格的な暑さになる前に戻れそうで良かったぜ」
「はい。新入隊士も思った以上に集まりましたね」
行きとは逆に一番前を歩く斎藤、そばに土方と藤堂も並んで歩いている。
「あぁ、藤堂のことは疑って悪かったな」
「本当だよ!真面目に手紙まで出してたのによぉ!ちゃんと人も集めてただろ、俺頑張ったよ!」
「あぁ、すまん。今回は本当に悪かった。五十人以上……お前の働きのおかげだ」
「へへっ!……まぁ伊東さんが土方さんと合わないかも知れないってのは、思ってたんだけど……上手くやってくれるかなって……」
鬼の副長に謝罪され仕事っぷりを褒められて得意げに鼻をならす藤堂だが、伊東を紹介した件に関しては声を潜めて土方の様子を窺った。
土方と伊東の不仲は江戸の藤堂にも伝わっていた。
今回、二人の関係を目の前で見せ付けられ、水と油であると思い知った。
「気にするな。伊東は力になってくれている、気に食わないのは本音だがな!」
「山南さんのことは……」
「皆が辛かったんだ」
伊東が裏で糸を引いていたと知らない藤堂に、斎藤は土方を責めないよう一言口を挟んだ。
「わかってる、仕方なかったんだよな……俺も辛い」
「帰ったら、会いに行ってやれ」
墓参りを促すと藤堂は切なそうに頷いた。
試衛館の仲間で最期に顔を合わせ声を掛けられなかったのは自分だけ……
藤堂の心には小さなわだかまりが生まれていた。
その表情の変化を気に留める斎藤と土方だが、ふと顔を見合わせ土方は思ついたように訊ねた。
「斎藤、土産は買ったのか」
歩き始めてすぐに、つと問われた斎藤は気付かれないほど一瞬ニッと口角を上げ、土方を置き去るように歩みを速めた。