80.静かな部屋
夢主名前設定
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「何を話していたんですか」
「はぁ……原田さんの子作りのお話を……」
「えぇっ?!」
何も意識せず、原田の言葉を思い出しながらぼんやり呟かれた言葉に、沖田は目を見開いて大きな声を出した。
顔が強張り、頬がほんのり染まっている。
「えぇっ、一体何を、原田さんってば」
何て話をしてくれたんだと立ち去った原田を怒るが、夢主は何やら考え事に耽っている。
……本当に好きな人と一緒になれって言いたかったんだよね、きっと……いいなぁ奥さん、抱きしめてもらえて……沖田さんは一緒で斎藤さんはまた違うだろうって、どういうことだろう……
「夢主ちゃんっ?」
「あっ」
顔を間近に寄せて覗き込む沖田に気付き、我に返ると吃驚して仰け反った。
まさか、情事の後の違いが気になって想像していたなどと告げられない。
「すっすみません、考え事を……」
「そうですか。僕達は、お茶を飲んだら壬生寺で巡察隊を待ちましょうか」
「は、はい」
沖田は何を考えていたのか顔色を探るが、夢主は再び赤らんだ顔で苦笑いをして立ち上がり、逃げるように歩き出した。
総司はきっと抱きしめて離さない。
原田の言葉が目の前の沖田の笑みに重なると、例えようもない恥ずかしさが湧いてきた。
「あっ、駄目ですよ夢主ちゃん、一人で行っちゃ!新選組の隊士がいつでもいた頃とは違うんですからっ」
そんな恥じらいを知らぬ沖田は、慌てて呼び止めた。
おずおずと振り返る夢主に、きょとんとして首を傾げる。
「ね、一緒に行きましょう。それにお盆を返しておきましょう、大事なお盆ですから」
「あっ……」
夢主は忘れて置き去りそうになった盆が目に入り、手に取った。
よく借りていた前川家の物。黒漆の懐かしい盆を手に微笑んだ。
「私がお持ちします。……お世話になったお盆ですから」
今まで様々な感情をそばで見守ってくれた盆に感謝するように胸の前で大事に抱くと、最後に一度、懐かしい部屋を見た。
……さようなら、また来ます……
大事な時を過ごした部屋に別れを告げ、夢主は大切に抱えた盆を勝手元へと運んだ。
前川家から出ると壬生寺はすぐそこだ。
八木家を横目に歩き、二人は壬生寺の山門をくぐった。
「もうすぐ帰ってきちゃうのかぁ~斎藤さん。いなくて伸び伸び出来たなぁーっ」
「そんなこと言って、沖田さんも本当は淋しかったんじゃありませんか」
「まさかぁ、あははっ」
話しながら歩く久しぶりの壬生の境内を二人はぐるりと辺りを見回した。
「沖田さんも久しぶりなんですか」
「えぇ、僕は巡察であまりこちらには来ないですね」
「そうなんですか……」
「そういえば夢主ちゃんには僕達の隊務のこと、あまりお話ししませんね」
言われてみれば……と夢主は小さく首を縦に動かした。
「はぁ……原田さんの子作りのお話を……」
「えぇっ?!」
何も意識せず、原田の言葉を思い出しながらぼんやり呟かれた言葉に、沖田は目を見開いて大きな声を出した。
顔が強張り、頬がほんのり染まっている。
「えぇっ、一体何を、原田さんってば」
何て話をしてくれたんだと立ち去った原田を怒るが、夢主は何やら考え事に耽っている。
……本当に好きな人と一緒になれって言いたかったんだよね、きっと……いいなぁ奥さん、抱きしめてもらえて……沖田さんは一緒で斎藤さんはまた違うだろうって、どういうことだろう……
「夢主ちゃんっ?」
「あっ」
顔を間近に寄せて覗き込む沖田に気付き、我に返ると吃驚して仰け反った。
まさか、情事の後の違いが気になって想像していたなどと告げられない。
「すっすみません、考え事を……」
「そうですか。僕達は、お茶を飲んだら壬生寺で巡察隊を待ちましょうか」
「は、はい」
沖田は何を考えていたのか顔色を探るが、夢主は再び赤らんだ顔で苦笑いをして立ち上がり、逃げるように歩き出した。
総司はきっと抱きしめて離さない。
原田の言葉が目の前の沖田の笑みに重なると、例えようもない恥ずかしさが湧いてきた。
「あっ、駄目ですよ夢主ちゃん、一人で行っちゃ!新選組の隊士がいつでもいた頃とは違うんですからっ」
そんな恥じらいを知らぬ沖田は、慌てて呼び止めた。
おずおずと振り返る夢主に、きょとんとして首を傾げる。
「ね、一緒に行きましょう。それにお盆を返しておきましょう、大事なお盆ですから」
「あっ……」
夢主は忘れて置き去りそうになった盆が目に入り、手に取った。
よく借りていた前川家の物。黒漆の懐かしい盆を手に微笑んだ。
「私がお持ちします。……お世話になったお盆ですから」
今まで様々な感情をそばで見守ってくれた盆に感謝するように胸の前で大事に抱くと、最後に一度、懐かしい部屋を見た。
……さようなら、また来ます……
大事な時を過ごした部屋に別れを告げ、夢主は大切に抱えた盆を勝手元へと運んだ。
前川家から出ると壬生寺はすぐそこだ。
八木家を横目に歩き、二人は壬生寺の山門をくぐった。
「もうすぐ帰ってきちゃうのかぁ~斎藤さん。いなくて伸び伸び出来たなぁーっ」
「そんなこと言って、沖田さんも本当は淋しかったんじゃありませんか」
「まさかぁ、あははっ」
話しながら歩く久しぶりの壬生の境内を二人はぐるりと辺りを見回した。
「沖田さんも久しぶりなんですか」
「えぇ、僕は巡察であまりこちらには来ないですね」
「そうなんですか……」
「そういえば夢主ちゃんには僕達の隊務のこと、あまりお話ししませんね」
言われてみれば……と夢主は小さく首を縦に動かした。