80.静かな部屋
夢主名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一方、京の屯所に残された夢主は、斎藤が江戸に発って広くなった部屋をぼんやりと眺めていた。
昼間は仕切りとなる襖を開け放ち、斎藤の部屋と繋げている。
衝立は折角の広い空間が狭くなるから他の物を考えてやると、土方はまだ襖以外の仕切りを用意していなかった。
斎藤が居ない日々は淋しくもあり、とても退屈な日々なのだと実感していた。
自分を揶揄い、おちょくる声がない毎日は平穏で刺激の無い日常。
……何回目かなぁ長い間いないのって、いつも……いなかったなぁ……
政変に伴い何度も屯所を開け、巡察や情報収取でも部屋を開け、屯所にいても稽古や呼び出しに応じては部屋を開けていた。
反対側に顔を向けると沖田の部屋との境は閉じている。
稽古を終えて着替えの最中だ。
「着替えたので開けますよ~」
「はぁい……」
明るくも愛想の無い返事に、沖田が不思議そうに覗いた。
「元気ないですねぇ、そんなに淋しいですか」
「いえっ、そんな……ただ斎藤さんがいなくて沖田さんが居るって不思議だなぁって思っちゃいまして……暫く屯所を離れる時って、いつもお二人揃ってだったから」
「そういえば、そうですね」
「だから、淋しいってわけじゃありません……沖田さんだけいるなんて変なのって思ったんです」
「あははっ、そうですか~っ?んー……僕が江戸に行ったほうが良かったかな」
「そっ、そんなっ、そんな意味じゃありません!そういう意地悪は言っちゃいけませんよ!」
自分の言葉にも責任はあると理解しながら、恨めしそうに睨む夢主に沖田も思わず苦笑いをした。
考えなしに本音をぽろぽろ漏らした夢主も反省して睨むのをやめた。
「あはははっ、じゃぁお詫びに一つ、良い報せですよ。稽古の時に聞いたのですが、土方さんから手紙が届いたそうです。江戸での活動の報告と藤堂さんのこと、それに」
「それにっ……」
「帰る時期のこと」
「えっ!本当ですか、もう戻られるのですか」
「うん、藤堂さんが思った以上にしっかり江戸でお仕事してくれてたみたいで、新入隊士をたくさん連れて戻るそうです」
「そうなんですね!良かった……藤堂さんも一緒に……」
土方が藤堂の行動を随分と気に掛けていたが、何事もなく無事に揃って戻れる。
誰も欠けないことが嬉しかった。
「もう少しでみんなの声が聞けると思うと嬉しいです!」
「えぇ。夢主ちゃんも部屋に籠もってないでお散歩でもしたらいいのに」
白い夢主の顔を見ると心配になる。全く日に当たっていない肌の白さだ。
斎藤が部屋を空けてから、必要以外、出歩かないよう心掛けている。すっかり閉じこもりがちになっていた。
「出歩くなって斎藤さんが……それにお寺のみなさんは快く思ってないとか、だから怖いなってのもあるんです」
「そうですか……」
「確かに体が鈍って困っちゃうんですけど、ここは広すぎて出歩くの気がひけちゃいます。壬生の屯所は広さが私には丁度良かったかもしれません」
懐かしい場所を思い出して淋しげに微笑むと、沖田もつられて切なそうに微笑んだ。
「そっかぁ……」
昼間は仕切りとなる襖を開け放ち、斎藤の部屋と繋げている。
衝立は折角の広い空間が狭くなるから他の物を考えてやると、土方はまだ襖以外の仕切りを用意していなかった。
斎藤が居ない日々は淋しくもあり、とても退屈な日々なのだと実感していた。
自分を揶揄い、おちょくる声がない毎日は平穏で刺激の無い日常。
……何回目かなぁ長い間いないのって、いつも……いなかったなぁ……
政変に伴い何度も屯所を開け、巡察や情報収取でも部屋を開け、屯所にいても稽古や呼び出しに応じては部屋を開けていた。
反対側に顔を向けると沖田の部屋との境は閉じている。
稽古を終えて着替えの最中だ。
「着替えたので開けますよ~」
「はぁい……」
明るくも愛想の無い返事に、沖田が不思議そうに覗いた。
「元気ないですねぇ、そんなに淋しいですか」
「いえっ、そんな……ただ斎藤さんがいなくて沖田さんが居るって不思議だなぁって思っちゃいまして……暫く屯所を離れる時って、いつもお二人揃ってだったから」
「そういえば、そうですね」
「だから、淋しいってわけじゃありません……沖田さんだけいるなんて変なのって思ったんです」
「あははっ、そうですか~っ?んー……僕が江戸に行ったほうが良かったかな」
「そっ、そんなっ、そんな意味じゃありません!そういう意地悪は言っちゃいけませんよ!」
自分の言葉にも責任はあると理解しながら、恨めしそうに睨む夢主に沖田も思わず苦笑いをした。
考えなしに本音をぽろぽろ漏らした夢主も反省して睨むのをやめた。
「あはははっ、じゃぁお詫びに一つ、良い報せですよ。稽古の時に聞いたのですが、土方さんから手紙が届いたそうです。江戸での活動の報告と藤堂さんのこと、それに」
「それにっ……」
「帰る時期のこと」
「えっ!本当ですか、もう戻られるのですか」
「うん、藤堂さんが思った以上にしっかり江戸でお仕事してくれてたみたいで、新入隊士をたくさん連れて戻るそうです」
「そうなんですね!良かった……藤堂さんも一緒に……」
土方が藤堂の行動を随分と気に掛けていたが、何事もなく無事に揃って戻れる。
誰も欠けないことが嬉しかった。
「もう少しでみんなの声が聞けると思うと嬉しいです!」
「えぇ。夢主ちゃんも部屋に籠もってないでお散歩でもしたらいいのに」
白い夢主の顔を見ると心配になる。全く日に当たっていない肌の白さだ。
斎藤が部屋を空けてから、必要以外、出歩かないよう心掛けている。すっかり閉じこもりがちになっていた。
「出歩くなって斎藤さんが……それにお寺のみなさんは快く思ってないとか、だから怖いなってのもあるんです」
「そうですか……」
「確かに体が鈍って困っちゃうんですけど、ここは広すぎて出歩くの気がひけちゃいます。壬生の屯所は広さが私には丁度良かったかもしれません」
懐かしい場所を思い出して淋しげに微笑むと、沖田もつられて切なそうに微笑んだ。
「そっかぁ……」