79.剣戟、そして江戸へ
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巡察から戻った斎藤と沖田は、土方の部屋で報告をした。
書き物をして起きていた土方は眠そうな顔も見せず、二人から緋村の新たな情報を興味深く聞いている。
「手強い男だな緋村抜刀斎」
「えぇ」
「総司と斎藤と互角ってことか。信じられねぇ」
「フッ、最後まで戦い抜けばこちらが獲っていましたよ」
「ははっ僕が、ね。今日も逃げて行きましたね。噂通りです」
「浪士二名斬殺、一名捕縛、二名逃走……こちらは死亡三名、腕に傷の重傷一名、軽傷二名」
軽口をたたく二人に、土方は受けた報告内容を繰り返した。
二人揃って笑いを抑えると土方の不機嫌な顔を見返した。
「まずまずでしょう。死亡は何れも抜刀斎によるものです」
「そうか」
斎藤の言葉も間違ってはいないと頷き、平隊士では緋村に手も足も出ない認識を得た土方は、唸るように腕を組んだ。
……隊士の数が足りない、伊東派に睨みを利かせるためにも急務だ……
「ところで斎藤、お前に頼みがある。俺と江戸に行ってくれ」
「江戸に、ですか。俺が土方さんと」
突然の指示に斎藤も驚き聞き返した。
「あぁ、藤堂を迎えに行くぞ」
「それだけの為にですか」
「それだけってこたぁねぇだろう。もちろん新しい隊士の募集も兼ねてだ。試験官、入隊希望者を打ちのめす仕事を任せたい」
「お二人が行くなら僕も久しぶりに江戸に行きたいですよー!」
「俺は構いませんが、伊東や夢主はどうするんですか」
「総司、お前は駄目だ。残ってここを守れ。抜刀斎に対抗できる誰かを残さなければならん。伊東は一緒に連れて行く……それで問題は消える。夢主に手を出せなくなる」
「成る程」
頷く斎藤の隣で沖田が落ち込んでいる。
「そう言われると……返す言葉がないじゃありませんか」
「お前が居なけりゃこちらの守りが薄くなる」
「そうですね」
「あぁ、こちらは総司に任せる。斎藤は江戸にも詳しいだろう」
頼りにされて嬉しいが、置いていかれる沖田はむくれた。
久しぶりに江戸に戻れる二人が羨ましい。
「まぁそれなりに」
「総司、今夜はご苦労だったな。もう戻っていいぜ」
「えっ、僕だけですか」
むっと不機嫌に見ていた沖田は、お役ご免の一言に驚き背筋を伸ばした。
「斎藤と少し江戸の話をしたい」
「僕だけ除け者ですか~まぁ聞いても仕方ありませんし別にいいですけど」
「拗ねるなよ、夢主にお前を疲れさせるなって言われてるんだよ。体の小さいお前を他の連中と一緒にするなってよ。夜の巡察は大変だろうからゆっくり眠れ」
「えっ夢主ちゃんがっ?僕を心配してそんなことを」
むくれていた沖田だが、夢主の名を聞いた途端機嫌を直した。
体格ではなく病を気にかけていると、本当の理由はしっかり伝わっていた。
「お節介なんだか、優しいな……それでは夢主ちゃんに従い床に着くとしましょう!おやすみなさい」
「あぁ」
にこにこと挨拶をして去って行く沖田を斎藤と土方は見送った。
「やれやれ、総司はいつまでも子供みたいに拗ねやがる」
「フッ、まぁ彼らしい」
「まぁな!時に、江戸の話なんだがな」
ふっと視線を強めて土方は続けた。
「会津侯、容保様の推薦なのさ」
土方の一言に、斎藤の目尻が動いた。
「近藤さんが会津侯に再び江戸で隊士を集めると話したら、ぜひ斎藤を連れて行けと仰ったそうだ」
「そうですか」
「会津侯は随分とお前を気に入っているな」
「それは恐縮です」
特別な心当たりは無いと素知らぬ顔で話す斎藤を暫し見つめ、土方はふぅと息を吐いた。
「まぁいい。俺はお前を信用しているからな」
「ありがとうございます。俺も土方さんを信頼していますよ。貴方の志を尊敬している。好きだと言ったほうが良いでしょうか」
「照れくせぇな」
心から信頼する男に真っ直ぐ見つめられ褒められた土方は、柄にもなくほんのり染まった顔を隠して立ち上がった。
「もういいぞ斎藤、遅くまですまなかったな」
「いえ。失礼します」
顔を背けた土方をクッと喉の奥で笑い、斎藤は部屋を後にした。
書き物をして起きていた土方は眠そうな顔も見せず、二人から緋村の新たな情報を興味深く聞いている。
「手強い男だな緋村抜刀斎」
「えぇ」
「総司と斎藤と互角ってことか。信じられねぇ」
「フッ、最後まで戦い抜けばこちらが獲っていましたよ」
「ははっ僕が、ね。今日も逃げて行きましたね。噂通りです」
「浪士二名斬殺、一名捕縛、二名逃走……こちらは死亡三名、腕に傷の重傷一名、軽傷二名」
軽口をたたく二人に、土方は受けた報告内容を繰り返した。
二人揃って笑いを抑えると土方の不機嫌な顔を見返した。
「まずまずでしょう。死亡は何れも抜刀斎によるものです」
「そうか」
斎藤の言葉も間違ってはいないと頷き、平隊士では緋村に手も足も出ない認識を得た土方は、唸るように腕を組んだ。
……隊士の数が足りない、伊東派に睨みを利かせるためにも急務だ……
「ところで斎藤、お前に頼みがある。俺と江戸に行ってくれ」
「江戸に、ですか。俺が土方さんと」
突然の指示に斎藤も驚き聞き返した。
「あぁ、藤堂を迎えに行くぞ」
「それだけの為にですか」
「それだけってこたぁねぇだろう。もちろん新しい隊士の募集も兼ねてだ。試験官、入隊希望者を打ちのめす仕事を任せたい」
「お二人が行くなら僕も久しぶりに江戸に行きたいですよー!」
「俺は構いませんが、伊東や夢主はどうするんですか」
「総司、お前は駄目だ。残ってここを守れ。抜刀斎に対抗できる誰かを残さなければならん。伊東は一緒に連れて行く……それで問題は消える。夢主に手を出せなくなる」
「成る程」
頷く斎藤の隣で沖田が落ち込んでいる。
「そう言われると……返す言葉がないじゃありませんか」
「お前が居なけりゃこちらの守りが薄くなる」
「そうですね」
「あぁ、こちらは総司に任せる。斎藤は江戸にも詳しいだろう」
頼りにされて嬉しいが、置いていかれる沖田はむくれた。
久しぶりに江戸に戻れる二人が羨ましい。
「まぁそれなりに」
「総司、今夜はご苦労だったな。もう戻っていいぜ」
「えっ、僕だけですか」
むっと不機嫌に見ていた沖田は、お役ご免の一言に驚き背筋を伸ばした。
「斎藤と少し江戸の話をしたい」
「僕だけ除け者ですか~まぁ聞いても仕方ありませんし別にいいですけど」
「拗ねるなよ、夢主にお前を疲れさせるなって言われてるんだよ。体の小さいお前を他の連中と一緒にするなってよ。夜の巡察は大変だろうからゆっくり眠れ」
「えっ夢主ちゃんがっ?僕を心配してそんなことを」
むくれていた沖田だが、夢主の名を聞いた途端機嫌を直した。
体格ではなく病を気にかけていると、本当の理由はしっかり伝わっていた。
「お節介なんだか、優しいな……それでは夢主ちゃんに従い床に着くとしましょう!おやすみなさい」
「あぁ」
にこにこと挨拶をして去って行く沖田を斎藤と土方は見送った。
「やれやれ、総司はいつまでも子供みたいに拗ねやがる」
「フッ、まぁ彼らしい」
「まぁな!時に、江戸の話なんだがな」
ふっと視線を強めて土方は続けた。
「会津侯、容保様の推薦なのさ」
土方の一言に、斎藤の目尻が動いた。
「近藤さんが会津侯に再び江戸で隊士を集めると話したら、ぜひ斎藤を連れて行けと仰ったそうだ」
「そうですか」
「会津侯は随分とお前を気に入っているな」
「それは恐縮です」
特別な心当たりは無いと素知らぬ顔で話す斎藤を暫し見つめ、土方はふぅと息を吐いた。
「まぁいい。俺はお前を信用しているからな」
「ありがとうございます。俺も土方さんを信頼していますよ。貴方の志を尊敬している。好きだと言ったほうが良いでしょうか」
「照れくせぇな」
心から信頼する男に真っ直ぐ見つめられ褒められた土方は、柄にもなくほんのり染まった顔を隠して立ち上がった。
「もういいぞ斎藤、遅くまですまなかったな」
「いえ。失礼します」
顔を背けた土方をクッと喉の奥で笑い、斎藤は部屋を後にした。