77.俺の初めてをくれてやる
夢主名前設定
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「あ……余計なこと言っちゃいましたね、すみません、あはははっ」
「フン、そんなに置きたければ置けばいい」
「分かったよ、お前らしょうもねぇことで言い争うなよ、一番隊と三番隊の組長が聞いて呆れるぜ。どっちにも用意してやるよ」
おろおろと三人の顔を順に見回す夢主、土方の案にすかさず同意して頷いた。
「私からも、それでお願いします。着替えの時以外は……開けておいて欲しいです」
「そうか。まぁ狭いからな、それでいい」
斎藤が納得し沖田も頷くと、ようやく場が落ち着いたことに安心し、土方は山のように残る移転関連の仕事を片付けに戻って行った。
「繋げて使えば広い部屋ですね」
新しい自室に入り沖田が確認するように襖を開け放ち、斎藤の部屋まで続けて眺めた。
「あぁそうだな。沖田君、その酒は日が暮れるまで隠しておけ」
「ははっ、原田さん達に見つかったら取られちゃいますね」
部屋が繋がったことで斎藤の目に入った沖田の部屋に置かれた酒。
沖田は酒瓶を荷物の陰に置き、部屋の入り口の障子戸を閉めて斎藤に改めて向き直った。
「斎藤さん、夢主ちゃんから一つ報告がありますよ」
「あっ」
沖田の一言で、部屋の騒ぎですっかり忘れていた比古との遭遇を思い出した。
斎藤も部屋の障子を閉め、二人の部屋の間の空間、夢主の部屋に腰を下ろす。初めての空間に三人が揃った。
「布団を敷いたら夢主ちゃんの部屋はいっぱいいっぱいですね」
「はぃ、でもお気遣い頂いて嬉しいです、ふふっ」
「良かったな。それで報告か、何だ」
「探してた人が見つかったんです!」
喜びで声の大きくなった夢主に気付かせるよう、斎藤と沖田は揃って口の前で指を立てた。
「あ……すみません……」
「休息所が少し遠くなったのは難だな」
気兼ねなく密談の出来る休息所が遠のいたことを斎藤は口にした。
「僅かにでしょう」
「夢主の足には、その僅かがでかいだろう」
「そうですね……私、もっと早く歩けますから、ついて行きますから気にしないでください」
必死に訴える夢主に、お前を責めるつもりはないと、斎藤はフッと小さく笑んだ。
気遣ったつもりが、返って困らせてしまった。
「すまん、気にするな。探していた男、あの偉丈夫だろう、どうなった」
「はぃ、それがその方、新津さんが陶芸を始める話になりまして、作品が出来たら譲って頂けることになったんです!だからまた同じ酒屋さんに顔を出そうと思います」
「そうか、たいした進展だな」
「はいっ、もし作品を頂いたら何かお礼を……好きなお酒でもお返し出来たらと思うので、その時は力を貸していただけますか」
外に連れ出してもらうにしても、酒を買うにしても二人の協力が欠かせない。
「もちろんだ、確かな繋がりが欲しいのだろう、そこまで協力してやるよ」
「えぇ、夢主ちゃんに興味示さなかったのが僕は好感が持てましたね!初めてではありませんか、夢主ちゃんを一目見て見初めないなんて」
「そいつは興味深いな。男色か、一途な相手でもいるのか」
斎藤も珍しいなと驚きを顔に表した。夢主の不思議な魅力、愛らしく優しい微笑みから漏れる儚げな印象、そして目を離せなくなる得も言えぬ艶やかさ。
男なら一目見て惹きつけられてしまう、夢主の恐ろしさだ。
「新津さんは色事に興味が無いって言ってましたよね~もうおじさんみたいでしたし、本当に女の人に飽きちゃったんじゃないでしょうか」
「ほぉぅ、妙な男だな。まぁだが安心出来そうだ。いざという時に俺達以外に頼れる場所があるのは心強いだろう」
「はぃ……新津さんは心から信頼できるお人だと思います」
「そうか、良かったな。よく頑張った」
そこまで言われると少し妬けるな……
ニッと口角を持ち上げた理由を胸にしまい、斎藤は成果を素直に喜ぶ夢主を労った。
俺がここを離れる時に、夢主はその男の元へ向かうのか……
夢主にとって有益な行動なのだろうが、斎藤はその時を思うと体の奥でちりちりと騒ぐものを感じた。
「フン、何を感じている」
斎藤は自らの嫉妬心に勘付くが、冷静に己をたしなめた。
……ここまで自分を信頼してくれる夢主を、夢主の選ぶ場所を、俺も信じてやらねばならんのだ……
静かにそう言い聞かせた。
「フン、そんなに置きたければ置けばいい」
「分かったよ、お前らしょうもねぇことで言い争うなよ、一番隊と三番隊の組長が聞いて呆れるぜ。どっちにも用意してやるよ」
おろおろと三人の顔を順に見回す夢主、土方の案にすかさず同意して頷いた。
「私からも、それでお願いします。着替えの時以外は……開けておいて欲しいです」
「そうか。まぁ狭いからな、それでいい」
斎藤が納得し沖田も頷くと、ようやく場が落ち着いたことに安心し、土方は山のように残る移転関連の仕事を片付けに戻って行った。
「繋げて使えば広い部屋ですね」
新しい自室に入り沖田が確認するように襖を開け放ち、斎藤の部屋まで続けて眺めた。
「あぁそうだな。沖田君、その酒は日が暮れるまで隠しておけ」
「ははっ、原田さん達に見つかったら取られちゃいますね」
部屋が繋がったことで斎藤の目に入った沖田の部屋に置かれた酒。
沖田は酒瓶を荷物の陰に置き、部屋の入り口の障子戸を閉めて斎藤に改めて向き直った。
「斎藤さん、夢主ちゃんから一つ報告がありますよ」
「あっ」
沖田の一言で、部屋の騒ぎですっかり忘れていた比古との遭遇を思い出した。
斎藤も部屋の障子を閉め、二人の部屋の間の空間、夢主の部屋に腰を下ろす。初めての空間に三人が揃った。
「布団を敷いたら夢主ちゃんの部屋はいっぱいいっぱいですね」
「はぃ、でもお気遣い頂いて嬉しいです、ふふっ」
「良かったな。それで報告か、何だ」
「探してた人が見つかったんです!」
喜びで声の大きくなった夢主に気付かせるよう、斎藤と沖田は揃って口の前で指を立てた。
「あ……すみません……」
「休息所が少し遠くなったのは難だな」
気兼ねなく密談の出来る休息所が遠のいたことを斎藤は口にした。
「僅かにでしょう」
「夢主の足には、その僅かがでかいだろう」
「そうですね……私、もっと早く歩けますから、ついて行きますから気にしないでください」
必死に訴える夢主に、お前を責めるつもりはないと、斎藤はフッと小さく笑んだ。
気遣ったつもりが、返って困らせてしまった。
「すまん、気にするな。探していた男、あの偉丈夫だろう、どうなった」
「はぃ、それがその方、新津さんが陶芸を始める話になりまして、作品が出来たら譲って頂けることになったんです!だからまた同じ酒屋さんに顔を出そうと思います」
「そうか、たいした進展だな」
「はいっ、もし作品を頂いたら何かお礼を……好きなお酒でもお返し出来たらと思うので、その時は力を貸していただけますか」
外に連れ出してもらうにしても、酒を買うにしても二人の協力が欠かせない。
「もちろんだ、確かな繋がりが欲しいのだろう、そこまで協力してやるよ」
「えぇ、夢主ちゃんに興味示さなかったのが僕は好感が持てましたね!初めてではありませんか、夢主ちゃんを一目見て見初めないなんて」
「そいつは興味深いな。男色か、一途な相手でもいるのか」
斎藤も珍しいなと驚きを顔に表した。夢主の不思議な魅力、愛らしく優しい微笑みから漏れる儚げな印象、そして目を離せなくなる得も言えぬ艶やかさ。
男なら一目見て惹きつけられてしまう、夢主の恐ろしさだ。
「新津さんは色事に興味が無いって言ってましたよね~もうおじさんみたいでしたし、本当に女の人に飽きちゃったんじゃないでしょうか」
「ほぉぅ、妙な男だな。まぁだが安心出来そうだ。いざという時に俺達以外に頼れる場所があるのは心強いだろう」
「はぃ……新津さんは心から信頼できるお人だと思います」
「そうか、良かったな。よく頑張った」
そこまで言われると少し妬けるな……
ニッと口角を持ち上げた理由を胸にしまい、斎藤は成果を素直に喜ぶ夢主を労った。
俺がここを離れる時に、夢主はその男の元へ向かうのか……
夢主にとって有益な行動なのだろうが、斎藤はその時を思うと体の奥でちりちりと騒ぐものを感じた。
「フン、何を感じている」
斎藤は自らの嫉妬心に勘付くが、冷静に己をたしなめた。
……ここまで自分を信頼してくれる夢主を、夢主の選ぶ場所を、俺も信じてやらねばならんのだ……
静かにそう言い聞かせた。